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ここ3ヶ月のアート巡りについて

1週間に1度はアートに触れることを目標にしているが、最近どうだったのか、振り返ってみた。本来はタイムリーに振り返りたいところだが、下書きにいれたまま1ヶ月放置してしまったので、ここ3ヶ月といっても今回は2022年12月~2023年2月分。前回(9月~11月)の記録は以下の記事の通り。


今回はいきなり結果から

2022年12月~2023年2月の3ヶ月に訪れたアートスペースをリストアップしたところ6カ所11回だった。この3ヶ月間は13週あったので、週一回のペースは守れなかったことになる。うーん、残念。

本来なら1つ1つの企画展について、間を置かずにレビュー出来れば良いのだが、3月の頭に開催された駅伝大会に向けた走り込み等、他にエネルギーを注いだことが沢山あって手付かずだった。結果、アート巡りは消化不良で、観に行った先をリストにしてみだけでは、どうも振り返った気持ちになれない。そこで、今回は、それぞれ簡単な感想を書いてみることにした。

2022年12月:4か所、4回、3つの企画展

1.三菱一号館美術館「ヴァロットン-黒と白」展

正直、あまり興味をそそる展示ではなかったのだが、年末まで年間パスポートが有効だったので、12月にも再び観に行った。
知らなかったのだが、三菱一号館美術館は建物の大規模改修の為に、2023年4月10日から1年半に渡って閉館されるそう。年間パスポートは、2022年の1月以降、新規発行も継続も出来なくなっていたが、この長期改修計画が理由だったのだろう。
以前、サントリー美術館も、施設改修の為に長期間閉館していたことがあり、閉館している期間を挟んで有効期間延長した年間パスポートを発行していたが、コロナ禍で再三に渡って有効期限が延期されたことがある。円安やインフレなど、先のことは読みづらくなって来ているので、どのような会員制度にするのか、再開のタイミングで状況を見ながら決めるつもりなのだろう。
ところで、最近、美術館の入館料相場が急騰している。だいたいコロナ禍前の4割増しくらいになっており、随分とアートの敷居が高くなってしまったように感じる。入館料を見ると、自分に合うか分からない状態では気楽に立ち寄る気になれず、結果食わず嫌いのままになる企画展が今後は増えそうだ。アートに対する価値観が変わる時期に来ているような気がしてならない。

2.銀座ATELIER「MUJI for Public Space 展

銀在ATELIERは、銀座MUJI(無印良品)の6階、MUJI HOTEL GINZAのフロント周辺にあるアートスペース。あまり他人に教えたくないが、無料でも楽しめてしまうという、銀座で待ち合わせ時の時間調整にもぴったりな、私のお気に入りスペースだ。
ようやく企画展示も復活してきたので、もっと頻繁に通いたい。とはいえ無料で利用するのは申し訳ないので、1階のベーカリーを利用し、お気に入りの本なども手に取って確かめながらここで買うことにしたいと思っている。

3.ワタリウム美術館 加藤泉 アーティストトーク

ちょうどコロナ禍が始まった2020年4月に閉館してしまった、かつて品川にあった原美術館。そこで開催されていた「加藤泉展」を観て、初めてこの方の独特の美的センスの世界を知った。けっこう、衝撃的だった。

12月は、ワタリウム美術館で加藤泉さんを囲んでのアーティストトーク企画があり、作家ご本人のお話を聞ける絶交の機会と思って行ってみた。

ちょうどクリスマス前だったこともあり、美術館側の気遣いでケーキまで振る舞われ特別な思い出になった。

加藤さんに直接質問をする機会も頂けたので、マイアミでのビエンナーレへの出展での作品の売れ行きなどについて伺ってみた。出品するものは既に顧客が付いているケースが殆どのよう。また、作品をよく見せる為、キュレーター側が展示スペースの壁の色に対する驚嘆するくらいのこだわり度合いとか、作家の意向とは別に美術品取引きで巨額の富を生み出す凄まじい世界のことも聞かせて頂いた。また、絵画作品と立体作品(オブジェ、インスタレーション)に対する作者側になっての想いの違いや考え方、集中力を高まる為の作品を作る普段のルーティン、出来上がった自分の作品への愛着の有無とか、その場でしか聞けない話も沢山あった。自分が知らない世界に触れるのは、やはり大きな刺激になる。最近、狭い世界に閉じ籠もってばかりなので、こういう機会を増やしていきたい。

4.国立公文書館:「鉄道開業150年 広がる、広げる-公文書で描く鉄道と人々のあゆみ-

12月上旬に開催された「秋の皇居乾通り一般公開」からの帰り道に立ち寄った。公文書館がアート関連スペースかと言われると微妙だが、同時期に東京ステーションギャラリーで開催していた「鉄道と美術の150年」展と強く関連していたので、カウントすることにした。
展示で目を引いたのは、鉄道事業の許認可に関する公文書。実際に鉄道を敷設したものの赤字が続き、巨額の累積損失を出して廃止になった路線が続出したことから、鉄道敷設の許認可に当たって事業の採算性が重視されるようになっていたことなどが分かり興味深かった。許認可は得たものの、後から当初計画通りの採算が見込めないと分かり、取下げになった路線もあったようだ。現在のJR中央線については、当初は甲武鉄道という私鉄の路線だったが、1906年の鉄道国有法により、国鉄(現JR東日本)路線の一部になった経緯など、鉄道ファンなら夢中になって語りそうな内容ばかり。公文書を目で追いながら、私の中でも普段は遠慮勝ちにしている鉄ちゃんの血が少しだけ騒いだような気がした。

2023年1月:3か所、4回、4つの企画展

5.東京ステーションギャラリー「鉄道と美術の150年

年明け早々、ロケットスタートのように2件梯子した。2022年は、鉄道が開業して150年の節目ということで、あちこちで関連イベントが開催されていたようだ。前月、国立公文書館で見た鉄道関連の展示と絡み合い、興味深く観ることできた。1872年(明治5年)という年は、旧暦が正式に廃止され、太陽暦による西暦が正式採用された、時代の節目となる年であったこと。重陽の節句にあたる旧暦九月九日に予定されていた鉄道の開業式展が大雨で順延となり、延期された日の西暦が10月14日だったので、後に「鉄道開業の日」となったいきさつなど、あれこれ知識欲を満たす、素晴らしい展示だった。最近、和暦ベースでの食事の記録に挑戦していたこともあって、この辺りの経緯は、興味深く感じられる。
時間の都合で2階の展示は、ゆっくり見られなかったが、以下のようなウォークスルー動画も公開されており、自宅で寛ぎながら見返すことも可能だ。
https://www.museum.or.jp/report/109118

あとからVRで復習できるというのは、ある意味、凄い時代だが、時間がいくらあっても足りない気がする。動画閲覧は想像以上に時間を使うので、絶対に見きれないほどのコンテンツが溢れる今、動画の要約とか、タイパ(タイムパフォーマンス)が求められる理由がよく分かる。文字なら、斜め読みとかも出来るが、動画は倍速で見るにしても限度がある。

6.東京都写真美術館「星野道夫~悠久の時を旅する~」

こちらについては、個別の記事にしてあるので、省略。

7.東京都写真美術館「野口里佳 不思議な力」

一度に行けば効率的だったのだが、1週間後に同じ美術館を再び訪問。とはいえ、やはり欲張らずに1日1つにするのが、体力的にも、消化不良を起こさない為にも大事ではある。

8.ワタリウム美術館「加藤泉 寄生するプラモデル」展

年末のアーティストトークの時は、展示を全部見切れていなかったので、1月に、展示だけをゆっくり見に行った。一度に全部見てしまわないのは、また来る理由を作る上でも大事だったりする。近くで用事があり、帰り道に立ち寄れたという事情もあるが、全部見切った気持ちでいたら、同じ展示を再度観に行く気にはなれなかっただろう。
展示を見ていてなるほどと思ったのは、現代アートというのは、一見バカらしいことをどこまでも真面目に追及して、どう面白さを出すかが勝負どころ、ということである。元々、自然の石に色を塗った芸術作品を、プラモデルとしてパッケージ化するとか、普通の発想じゃ出来ないことだろう。意外性とか、組み合わせの妙とか、真面目にくだらないことをやることによって既存の思考の枠組みから逃れるというか、いろいろ言い方はあるだろうが、作品を見ていると、見えない鎖でがんじがらめになっている自分を解放するきっかけを作ってくれるのは間違いない。そういう類の作品こそが、現代アートにおける「良い作品」の基準であるのかもしれない。

2023年2月:3か所、3回、2つの企画展

9.ワタリウム美術館「トルコ大地震チャリティー寄席」

トルコで大地震があった数日後には緊急告知があり、寄付をしに行ってきた。一度聞いたことのある演目だったが、最後に、やっぱり涙が出てしてしまった。感動って、人を通じてしか伝えられないものだと信じたい。

10.東京ステーションギャラリー「佐伯祐三 自画像としての風景」展

駅伝に向けた走り込みの最中だったが、身体を休めるオフ日に合わせて、何とか時間を作り、観に行った。結核の特効薬であるストレプトマイシンが発見される以前の時代に、当時の国民病であった結核を患い、最後はフランスの療養先で早逝した天才画家、佐伯祐三。不治の病に心身ともに侵され、最後は精神的にも追い詰められていったらしい。そうだからこそ、生ある間に残そうと描いた作品が光り輝いて見えるのかも知れないが、何とも切ない。コロナ禍の時期だけに、自分は近年随分苦しんだ気もしたが、この歳まで大きな病気もせず生きて来れている有難みを噛み締めた。

11.サントリー美術館「木米」展

サントリー美術館が月曜日ではなく火曜日が定休日になっている珍しい美術館。本来の休館日に、年間パスポート会員向けのスライドレクチャーがあり、運よく当選したので、忙しかったが仕事の合間に時間を作って行ってきた。
行ってみて分かったのは、来る人は(当たり前と言えば当たり前なのだが)ご年配の方々ばかり。とにかくみなさん髪の毛が白く、ザ・シルバーという感じ。自分のいずれはこうなるわけだが、開館前から列をなして待っており、老後生活とはこういう感じなのか思うと、少し寂しい感じがした。
スライドレクチャーは、女性学芸員による研究成果発表会のようなもので、参加してみて雰囲気が良く分かった。自分としては、聞く側よりは話す側になりたいタイプなのだと、改めて認識できたし、いずれは学芸員の資格を生かした仕事をしてみたいと思っていたので、学芸員が仕事内容の一旦に触れることが出来て良かった。

おまけ

ところで、アート巡りについてネット検索していると、以下のような凄い記事を見つけてしまった。趣味も行く着くところまでいくと、こうなるのですな。