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8:海外モデルの生活vsぽっちゃり

ダイエットを成功させるには、痩せる習慣を一生続ければいい。
そこでぽっちゃりが憧れがちなのが、海外モデルの生活です。

だって、ボディメイクのプロである海外モデルの生活を習慣化してしまえば、あの引き締まった美しい体が手に入るのですから。

こうしてぽっちゃりは、このときばかりはソファーに寝転ばずおやつも食べずに、背筋を伸ばして腹筋に力を入れながら、海外モデルの生活をYouTubeでしっかり観察します。
ドーナツ片手に軍人のトレーニングを観るときとは、やる気の漲り方が違うのです。

けれど、動画を観始めて30秒。
海外モデルの毎朝飲む、えげつない水の量に早くもぽっちゃりたちは戦意の半分を喪失してしまいます。

え、あの量の水を毎朝!?
朝だけで500mlくらい飲んでるよね、水なんておいしくないのに!

ショックを受けるぽっちゃりたちを置いてけぼりに、次は海外モデルの朝食が始まります。

成城石井でしか売っていないような食材まみれの、野菜だらけで卵とアボカドとサーモンだけがぽっちゃりにとっての救いみたいな、とても満足できそうにないほど少ない食事が。

ぽっちゃりに残された戦意は、この時点で2割を切っています。
だって絶対に食べた気がしないし、食材を揃えるだけでもお金がすごくかかりそうなんですもの。

それに、いつものスーパーでは見つからない食材が山ほど。
サラダにかかっている、やたらと種類の多い謎の種なんて名前すら聞いたことがありません。

既に満身創痍のぽっちゃりたちは、それでも海外モデルの生活に食らいつきます。
けれど、海外モデルの生活の厳しさは、ここまではまだ序の口。

朝食が終わったら、次は厳しい筋トレが待っているのです。
海外モデルの細く引き締まった美しい体は、筋トレなくしては出来上がらないのですから。

ぽっちゃりはここで、海外モデルの真のストイックさを目の当たりにします。
そして尊敬とともに、巨大な敗北感を抱いて「わたしにはムリだ」とソファーに寝転ぶのです。

このあまりにもハードな筋トレで、ほとんどのぽっちゃりは脱落。
完全なる諦めモードに突入してしまいます。

けれど画面の向こうの海外モデルを目の前にして、ソファーに寝そべりはしても、今すぐドーナツを食べることだけは許されません。

わたしもここで脱落しながら、多くのぽっちゃりと同じように、ドーナツを貪ることだけはできませんでした。

せめてもの矜持が、そうさせるのです。

ここから先、ぽっちゃりにとって得られるものは何一つありません。
むしろ、観れば観るほど自分の至らなさが浮き彫りになり、メンタルが弱っていくだけ。

なのに決して観ることをやめられず、ぽっちゃりたちは自分の不摂生を恥じながら、まるで自分に罰を与えるかのように海外モデルの生活を追い続けてしまうのです。

どこまで観ても、3食すべてヘルシーなのは分かりきっているのに。
おやつさえも野菜だけ、もしくは僅かなチョコレートだけという、ダイエット中のぽっちゃりよりも少ないカロリーでやりくりしている現実に敗北感を覚えるだけなのに。

そうして動画を見終わったぽっちゃりは、しばらく放心状態でソファーに横たわっているのです。

美しい体は、それ相応の努力によって作られているという当たり前にもほどがある現実に打ちのめされながら。

それから1時間後、ぽっちゃりはいつものようにソファーでごろごろしながらドーナツを貪るという『いつもの習慣』に戻っていきます。

海外モデルの生活は、自分にはまったく縁のないもの。
そう決めつけて、ぽっちゃりは動画からは何も学ばず、痩せるチャンスを棒に振ってしまうのです。

いきなり海外モデルの習慣を100パーセント真似しようとせず、1パーセントずつ、じわじわと取り入れて徐々に習慣化していくことができれば、1年後には美しい体が手に入っていたでしょうに。

わたしを含め、多くのぽっちゃりはそれに気づかない残念な生き物なのです。
だからずっと、いつまでも太っているのです。

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