見出し画像

移民たる覚悟

オーストラリアでのワーホリ生活も早いものでもう折り返しを過ぎた。

「タスマニアでのチェリーピッキングのシーズンが終わったらオーストラリア国内を移動するかも知れないから…」と、出発の際には取らないでいた帰国時のオーストラリア国内移動の航空券をついに先日購入し、勤務先の寿司屋にも7月の最終出勤希望日を伝えた。

もっと渡り鳥の如くファームを転々とする暮らしになるかと思っていたのに、蓋を開けてみれば、がっつりタスマニア島で半年生活することになりそうである。

さすがにオーストラリアに半年も住んでおいてオペラハウスの写真も撮らないのはなんだか悔しい…という意見が夫婦で一致したので、トランジットでシドニーには数泊することにしたものの、後からオーストラリアでの暮らしを思い返した時に真っ先に目に浮かぶのは、エアーズロックでもグレートバリアリーフでもなく、ホバートから見える山々と中途半端な太さの巻き寿司になる見込みである。
本当に、新生活というものは実際に飛び込んでみないと分からないことばかりだなと改めて思う。

またゼロからのスタートになる9月からのドイツでの生活について「行く前にあまり悩み過ぎても仕方ないな!」とある程度割り切れるようになったのも、今回の行き当たりばったりワーホリライフを経ているからこそだと思うと、今年の上半期が自分たちの人生において金銭面以上に得るものの多い期間になっているような気がして嬉しい。

ところで、今の勤務先にはアジア圏を中心として多国籍なスタッフが集まっているというのは以前の日記でも触れた通りだが、彼らに「オーストラリアにいるのは半年だけで、その後は日本に1ヶ月帰って、またドイツに行く」という計画を話すと十中八九かなりビックリされる。

それもそのはず、私たちの周りでワーホリなど帰国を前提としたビザで滞在しているのは日本人ぐらいで、それ以外の人々はほぼ全員が大学や職業訓練学校に通いながら働き、最終的にはオーストラリア永住権の取得を目指しているのである。

どうやらタスマニア州はオーストラリアの他の州に比べて永住権の取得がしやすいらしく、そのためにホバートに来たのだという話をここに来てから複数人から聞いた。

先週末に、夫の職場の同僚から誘ってもらい、ネパールの新年(2081年になったらしい)を祝うイベントに参加してきたのだが、赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い年齢層の家族連れが沢山いて驚いた。
ネパールでは海外に出る人がかなり多いらしく、こういったイベントを主催するようなソサエティが各国に存在するのだそう。余談だが、ネパールから日本に移住する人も当然いて、私のネパール人の同僚も日本に5年住んでからオーストラリアに来ており、彼女の実家は今和光市にあるらしい。

あまり比べるものでもないが、ホバートで出会った彼らの覚悟というか、「絶対にここに永住するぞ!」という気迫にはハッとさせられるものがある。

たとえば、今ハウスシェアをしているフィリピン出身の夫婦は、3人の子供を国に残してオーストラリアに来ており、妻は大学でITを学んでいる。ちょうど我々が引っ越したタイミングが学校の休暇の時期だったということもあり、その時は学費を稼ぐために週90時間の鬼畜労働に手を染めていた。
まず、それだけ働いて人の形を保てているのがすごすぎる。世の中には自分たちが足元にも及ばないほどの体力お化けがいるのだと衝撃を受けるとともに、今後は週45時間程度のヌルい労働で出稼ぎヅラをするのはやめようと思った。

自分たちがドイツの大学を卒業してからドイツやEU圏内での永住を目指すかどうかはまたその時の判断になるだろうが、ここでオーストラリア永住を目指す人たちの覚悟や気概に触れたことは、間違いなく今後の選択を支えてくれる財産になっていると感じる。

生まれ育った国で暮らし続けるというのももちろん一つの大事な選択だが、実際に海外に出てみてそうでない道を選ぶ人も少なくないのだと知れたことで、なんとなく心強いような、そして先行き不透明な自分たちの未来が少し楽しみになったような、そんな気がするワーホリ4ヶ月目である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?