弟
弟は、実家の家事手伝いだ。
もう48歳になるから、18年ほど実家に引きこもっていて、そのうち家事手伝いというポジションを得たのだろう。
弟は、大の人嫌いだ。
家族としか話さない。
友達もひとりもいない。
けれど、家族にはとても愛されている。
年老いた両親の病院への送り迎えなども、弟の仕事だ。
弟は、わたしが精神障害者だということで、わたしと話すことをやめた。
もう5年ほど完全に無視されている。
兄ふたりとの関係は、もうずっと以前から悪かったから、わたしは兄弟の誰とも話すことはない。
家族に愛されている弟に、嫉妬する。
弟は引きこもり生活をどれほど続けても、精神病院に捨てられることはなかった。
それどころか、弟は、実家で一番の権力者だ。
家族の誰もが、弟の言うことに従う。
弟と、昔のように仲良く笑い合い、おしゃべりしている夢を見る。
一度や二度ではない。
わりとしょっちゅう、そんな幸せな夢を見る。
夢の世界は、願望だろうか。
わたしは今でも、弟を愛しているのだろうか。
わからない。
ただ、夢の中で弟とはしゃいでいるとき、わたしはとても幸せだ。
目が覚めてしまったことを悔やむほど、幸せだ。
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