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メディアが報じない日本経済の課題


メディアの円安報道

 現在、世界中で円安が進行しており、メディアでも連日、円安のニュースが報道されています。また、世界のGDPランキングで日本の順位が下がる可能性や、日本がどんどん価値の低い国になるという批判も多く見受けられます。重要な局面であることは間違いありませんが、大騒ぎしすぎであり、無意味な議論も含まれていると感じています。本当に重要な論点は、そこではないということが多いです。

インフレとデフレの意味

 この記事では、現在起こっているインフレと円安、今起こっていることの重要なポイントについて解説します。チャンネルのコメント欄にも、インフレについて誤解をしていると思われるコメントが散見されます。インフレとデフレという言葉の意味についての誤解です。

インフレインフレーションinflation)の略で、継続的に物価が上昇し続ける状態のことです。物価はお金と物のいわば交換レートですから、物価が上昇していくということは貨幣価値が低下していくということと同義です。
デフレはインフレとは反対に継続的に物価が低下し続ける状態のことです。逆に貨幣価値は上昇していきます。

金融庁HP

経済成長と物価のあるべき関係

 インフレは、経済が緩やかに成長し、経済の好循環の中で起こることがありますが、必ずしもそうした状況だけで起こるわけではありません。一般的に、「悪いインフレ」や「コストプッシュインフレ」といった言葉が使われますが、これは景気が悪いのに物価が上がるような状況を指します。
 一方、デフレについても、経済成長率が低迷する中で起こる場合もありますが、必ずしもそうではない場合もあります。
 私たちにとって、物価が安定することは重要ですが、経済が成長しようが後退しようが関係なく、物価さえ上がれば良いというわけではありません。経済が成長し、その結果として物価が緩やかに上がっていく、これが目指すべき姿です。

メディアの報道

 しかし、いつの間にか、本来最も重要な「経済が成長していく」ということではなく、表面上の物価上昇率にばかり注目するメディアが増えてきました。そして、そういう情報ばかりが流れる中で、国民の中でも何が大事なのかがあいまいになってきてしまった感があります。
 これは、デフレというカタカナの言葉をメディアや政治家が多用したことが一つの要因だと考えています。デフレというのは物価が下がることです。多くのメディアが、デフレと言われる時は、物価が下がることだけではなく、景気の悪化と後退という意味を含んでいるかのように使っている場合が多いです。この言葉が誤解を生んで、デフレが解消されて物価さえ上がれば景気が良くなるような、誤った認識を与えている気がしています。

日本経済の課題

 何度も申し上げますが、インフレとデフレというのは、物価が上がるか下がるかの話です。日本経済の課題は低い経済成長率です。低い経済成長率の中で物価だけを上げることを考えても、根本的な問題の解決にはなりません。
 今のメディア、政治家、財務省の動きを見ていると政府が有効な成長戦略を実行できていないことについて、国民の視線 をそらそうとしているようにすら見えます。

日本銀行の役割と限界

 日本銀行は物価の安定を図る立場にありますが、日本銀行の政策だけで経済成長率を大きく引き上げることは無理です。これは、ほとんどの方が「当たり前だよね」と思っていることでしょう。安倍政権が始まり、2013年に黒田緩和が始まったころからずっと言われていることです。
 安倍政権は「3本の矢」と言っていましたが、金融緩和以外に、財政政策と規制緩和などを含めた3つの成長戦略を進めようとしました。規制緩和などを含めた成長戦略がなければ、日本銀行の金融政策だけで経済を成長軌道に乗せることはできません。これは初めから分かっていることです。

成長戦略と新規事業の困難性

 では、日本経済の何が問題なのか、どうすれば成長していけるのか。私は国民が必要としているものをきちんと提供できる環境が整っていくことだと思っています。
 例えば、私は日本の金融機関が提供する金融商品やサービスが、あまり顧客目線で作られていないと感じています。そのため、いつか自分で「モハPアセットマネジメント」を立ち上げられたらと思うこともありますが、日本でそれを実現するのは非常に困難です。金融業界の参入障壁が高いためです。新規参入できる企業は、メディアによく出ていたり元々大手企業の出身で大企業のお偉いさんとコネクションがあり大企業に出資をしてもらえるケースがほとんどです。だから面白いサービスが出てこないと思っています。

成長戦略と規制の問題


 金融分野では、変な業者が海外から入ってきたり、マネーロンダリングのようなことが増えたりしないようにするため、安全のためにそうしている面もあり、規制が厳しいことはダメなことではありません。ただし、規制を厳しく、安全第一にすると成長する機会は乏しくなります。
 安全と成長はトレードオフになっている部分が多い、安全にばかり注力しすぎると成長できなくなってしまう傾向があります。もちろん、安全をないがしろと言いたいわけでは全くありませんが、安全が全てにおいて優先されると成長していくことが難しくなってしまいます。これは金融以外の分野でも言えることだと思います。

私の考え

 成長していくためには新しいことにチャレンジし、新しい問題に向き合っていく、そうしたポジティブなマインドとタフさが必要です。
 新しいことを始めるのが他の国に比べて難しいのが日本です。そのため、本当に国民が必要としているサービスがなかなか提供されないという問題があります。これが日本が成長していかない一つの要因だと私は思っています。
 円安やインフレも重要ですが、真に重要なのは、日本がどのように成長できる国になっていくかです。政治家も国民も、そこに関心を持たなければならないと私は思っています。

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