サウナぎつねのフィンランド巡りと12月前半ふりかえり
アートで楽しむ サウナぎつねのフィンランド巡り
巷のサウナブームには、さすがにちょっと過熱しすぎでは? と思っていた時期もありましたが、気づけばヨガやジョギングと同様すっかりわたしたちのライフスタイルの一部として溶け込みつつあるようです。
イベント同様、サウナ関連の書籍も毎月のようにさまざま出版されていますが、ここに紹介する『アートで楽しむ サウナぎつねのフィンランド巡り』(アルソス刊)は、なかでも一風変わった趣向で目を惹きます。
作者は、フィンランドのヴィジュアルアーティスト/イラストレーターのピヴェ・トイヴォネンさん。全編、彼女の手になる水彩画の描き下ろし作品で構成されています。
ひとくちにサウナといっても、スモークサウナ、公衆サウナ、会員制のサウナ、移動式サウナ、友人宅のプライベートサウナなどなど、フィンランドにはたくさんの魅力的なサウナが存在しています。
この『アートで楽しむ サウナぎつねのフィンランド巡り』では、じっさいに存在するそうしたサウナのひとつひとつがピヴェさんのカラフルでほのぼのとしたタッチの完成されたイラスト作品として紹介されているのが特長です。
とりわけユニークなのは、タイトルからもわかるように登場人物が「きつね」など動物の姿で登場するところ。サウナで共によい時間をすごした仲間やそこでたまたま出会った人びとも、みな「きつね」や「くま」といった動物として登場します。ちなみにオレンジ色のきつねはピヴェさん本人とのこと。フィンランド各地のサウナを紹介するガイドブックですが、絵本を眺めるような感覚でページを繰ることができるのです。
もっとも、絵本ときくとファンタジー、なかには絵空事といったイメージを抱くひともいるかもしれません。たとえば、じっさいにフィンランド現地のサウナを巡りたいと考えている人にはあまり実用的でないといった印象を与えることもありそうです。
しかし、「まえがき」で作者のピヴェさんはこのように書いています。
ここに描かれたものは、登場人物から石鹸のような小物にいたるまですべてじっさいにその場にあったもので、そこになかったものをつけくわえるといったことは一切していません、と。
そのため、じっさいのサウナのもつ雰囲気は正確に伝えつつも写真のように克明には伝えすぎない。いい意味で、読み手の想像力をかきたてる余白がそこには残されています。GoogleストリートビューやSNS、4Kやら8K映像によって現地までわざわざ行かずともなんとなく行った気になれてしまう昨今ですが、むしろほどよい匙加減の情報量によって現地まで足をのばす期待を高めてくれるような長所がイラストにはあるようです。
いま、あえてこうしたスタイルの「ガイドブック」を手にとることの意味と可能性を感じる一冊といえます。
それでは、以下12月前半までのふりかえりです
ここから先は
¥ 100
サポートいただいた金額は、すべて高齢者や子育て中のみなさん、お仕事で疲れているみなさんのための新たな居場所づくりの経費として大切に使わせて頂きます。