【読書感想文】月曜日の抹茶カフェ① すれ違いの愛情
Twitterにも少し書いたけど、感想を改めて。
コンビニで文庫本を売っているのを見て、表紙の可愛さと、前に少し気になっていた、という経緯もあって、読みたくなった。
睦月、如月、弥生……と12ヶ月のオムニバス形式の章立て。月曜に開いた、1日限りの「抹茶カフェ」から広がる物語。
以下はネタバレがあるので、本作を読みたい方はお気をつけください。
私がまず心打たれたのは、皐月&水無月の話。
老舗和菓子屋の孫娘と祖母のすれ違いを、各自の視点から描き出すエピソードで、孫娘の視点が皐月、祖母の視点が水無月。
皐月の章を読むと、ああ、いるよね こういう毒親(祖父母)……というイライラを掻き立てられるのだけど、水無月の章で、祖母なりの精一杯の愛情がちょっと出口まちがっちゃった感じが紐解かれてて…
章のタイトルでもある、夏越しの祓にまつわるお菓子「水無月」が関わっていたりして、ほんとに尊いつーか、センスの良い話。
祖母は、思い込みというか、枠で何かを見る癖がある頑固者で、それが人を遠ざけている側面があるのだけど、ちょっとした運命の悪戯(というほどでもない小さな偶然)から、彼女の頭の中の枠がポロッと外れて、目の前の人の愛、本質が見える、という描写がある。
それは、自分なりの愛がひとに伝わっていた事がわかる瞬間でもあって、見た目いじわるな彼女の報われた感じがすごく良く、涙が止まらなかった。
孫娘も孫娘で、今までばあちゃんにビクビクしすぎていたことに気がついて、自信を持ってぶつかっていく、という描写が皐月の章にある。
彼女の自信、ライフワークの源も、実はばあちゃんにもらったものだったりして、肉親間の複雑な愛情がよく描かれている。
その先は敢えて描かれない。きっと、少しずつ何かが変わるのかもしれないし、またこじれてすれ違ったりも、するかもしれないけど、2人の間にあった関係性や思いの本質は、変わらないだろう。
きっと、こんなふうにすれ違ってしまう肉親間の愛情ってたくさんあるのだろうなあ…と思った。
おそらく、この話のようには綺麗に回収されないこともたくさんあるだろう。
性格とか物言いとか、やったことなど、人はどうしても、自分の心の景色から見えるもの、聞こえるものと、表面的なもので、他人を判断する。
本当に見たい、見なくてはいけないのは、その奥にあるものなんだと思うけれど。(これは、肉親間に限らず)
この先も好きな章がふたつあるのだけど、長くなるので、エントリーをわけます。
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