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【短歌掌編】キウイを齧る

午後から来客の予定があった。

洗濯機を回して、いつもより念入りに部屋の掃除をし終わる頃には汗をかくほどだった。遅めのブランチに、と考えていたホットサンドは少し季節外れかもしれない。

「ねぇ、これ食べない?」

彼女の手には小さな毛むくじゃらがひとつ。
キウイだ。

「それはいいね」

私はホットサンドを、彼女はキウイを用意する。
そこに氷を浮かべたアイスラテを並べたら、ブランチは完成。

チーズやハムを挟んだホットサンドはやっぱり熱くて、アイスラテで口を冷やす。欲張って沢山塗った粒マスタードが弾ける。

「ちょっと酸っぱいかも」

彼女の言葉に少し警戒しながら、キウイを齧る。

キウイは思ったよりも甘かった。それと同時に少しだけツンとした、でも優しく爽やかな酸味があった。
優しく部屋を抜ける風にも、このブランチにも、少し熱を持った私にも、キウイはちょうどよく収まり、寄り添って漂った。

そして気付いた。

「あぁ、夏が来たんだね」

「え?そう?」

彼女は不思議そうにしたが、説明は求めなかった。でもそれでよかった。それがよかった。





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