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#Daldobetter 〜 カナダの大学でのレイシズムに反対する


 みなさん初めまして。今回のブログ担当、カナダ東岸部在住の島田たばさです。今回の投稿では、カナダの大学での人種差別に反対する運動の様子を紹介します。

 私が4年間通っていたダルハウジー大学では、学生によるオーガナイジングが盛んに行われていました。その中でも2019年初頭に行われた #DalDoBetter についてシェアしたいと思います。


背景 

 まず、2018年に満期になる学長の一時的な代理として Peter McKinnonが6ヶ月契約で仮学長として2019年1月に就任するという発表がありました。

 就任まもなく、当人の著書に差別や抑圧のシステムに対して寛容でそれらを助長する記述があったことが判明。これに対して、大学内の学生オーガナイザーやコミュニティオーガナイザーがアクションを計画し始めます。

 2018年の終わりに大学の創立と黒人奴隷制度への歴史的加担を大学教授や研究者が調査したLord Dalhousie Reportが発表されたのにもかかわらず、どのようにPeter McKinnonが学長代理ポストに選ばれたのかは全く不透明で、学生や学部への事前の相談はありませんでした。


アクション① 就任パーティーでのスタンディング

 1月中旬、大学構内の建物で就任パーティが行われました。本人が登壇し挨拶をする中、黒人学生が率いる有志の学生らが、バナーやプラカードを持って、無言のシュプレヒコールなしのサイレントアクションを行いました。ここでの目的は、就任パーティを取材しにきたメディアに映り込み、人々の関心を引くことでした。


Dal Do Better による声明


 アクション後、Dal Do Better という有志グループは懸念事項と要望を含んだ声明を発表しました。

懸念事項
・ブラックフェイスや人種差別的なハロウィン衣装を擁護している。
・大学教員には、学生の代名詞(プロナウン)を間違える「権利」があると主張している。
・トリガー・ワーニング(事前警告)の使用に反対している。
・TRC(真実和解委員会)の提案を全面的に取り入れることを疑問視している。
・石油燃料から撤退することについて非難している。
・大学のポリシーや意思決定にあたり、学生や教授・学部がもつ影響は減らすべきと提唱している。
・BIPOC*、LGBTQ2S+**(*注1)などの疎外されたコミュニティ/学生のことを全く加味して考えていない採用であった。これにより、構内の学生の安全と、大学の打ち出している実質的平等、多様性が脅かされた。

要求
・仮学長の解任
・直接的、間接的な害を引き起こす採用をした、ダルハウジー大学と学生自  治会からの謝罪
今回の採用に責任がある大学理事会の暫定委員会で以下を認めた声明を出すこと。
 ・採用と審査プロセスに失陥、不行き届きがあったこと
 ・今回の採用によってBIPOC*や他の学生の安全を脅かしたこと
 ・大学の多様なニーズ、インクルーシブなビジョンを代表できる新たな人事採用チームを構成する委員会の責任を明確化すること

・反抑圧ワークショップを全ての大学運営関係者や学生自治会の役員に対して行うこと
・現在と過去における、大学が垂れ流す構造的レイシズムの組織レベルでの見直し


メディアの報道

 地元の反差別や反抑圧に特化したジャーナリストなどが今回の行動の様子を報道し、さらに議論を深め批判しました。

スタンディングとSNSでの表明について報道した記事:

↑ブラックフェイスが人種差別でないという主張を専門の学者意見とともに批判している記事


元仮学長によるアクション受けての声明についての記事↓


 また、カナダの国営メディアであるCBCでも取り上げられました。元仮学長やオーガナイザーの学生、教員がそれぞれインタビューされました。


再びスタンディング 

 これまでのアクションを受けて、大学はキャンパス構内における多様性、インクルージョン、リスペクトについてのフォーラムを学生主体で開催すると合意し学生代表と企画を始めました。

 そこでの元々の案は、本人を招いて学生らと対話するというものでした。しかしイベント当日に大学から形式変更の連絡があり、実際には学生と教員、スタッフらがお互いに話し合うフォーマットで行われました。本人と対話するという約束は破られてしまったのです。

 そのままではいられないので、突然の通知ではあったものの、イベントが始まると同時に学生たちは講堂の舞台にプラカードを掲げて並び、再度スタンディングをおこないました。

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学長任期延長の阻止!

 数ヶ月後の5月、大学は次期学長をインド出身のDeep Sainiに決定したと報告。Peter McKinnonは6ヶ月の任期を終えて、ダルハウジー大学を後にしました。

 もし、学生による反対運動がなかったらレイシストな学長の任期が延長になり正規の5年間契約になっていたかもしれません。また、有色人種の学長が就任することも起こり得なかったかもしれません。


さいごに

 カナダの大学は学生オーガナイザーがたくさんいる環境です。どのような経緯かで運動に参加し始めたのかは人それぞれですが、共通しているのは、地域のコミュニティオーガナイザーやメンターとの繋がりです。

 #DalDoBetterを率いた学生オーガナイザーに聞いてみたところ、プロテストや大学や地域の反レイシズムのイベントなどに積極的に参加していたそうです。他の参加者やコミュニティオーガナイザーや地域のアクティビストに会っているうちにオーガナイズする上でのコミュニティや知識を広げることに繋がったとのことです。

 何かやりたいけどどこから始めたらいいかわからない、私で大丈夫?など思っている人は、経験のあるオーガナイザーなどに積極的にアプローチするところからはじめてみてはいかがでしょうか。Moving Beyond Hateでは常にレイシズムと闘うメンバーを募集しています。

 今回はカナダでの学生運動の様子をお伝えしました。


fin.



(注1)BIPOC*とはBlack, Indigenous and People of Colour の略
LGBTQ2S+**とはLesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer, Two Spirit + の略


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