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ムエタイの視点から、立ち技格闘技の安全性をいかに担保するか?~シン・ムエタイで勝つ為の100の法則~

先日、ボクシングの著名選手が試合後意識を失い、そのまま帰らぬ人となった痛ましいリング禍が起こりました。

また、

キックボクシング試合に出場予定だった選手が計量前日に体調不良に陥り救急搬送、その後亡くなったとのニュースも。

もちろん、自分がその場面を見ていたわけではないし、医療知識があるわけではないので事故の機序はわかりませんが、ムエタイを含め格闘技界全般にとって無視できない、無視してはいけない出来事。

もちろん、

事が単純ではないのは理解していますが、いかにこのような悲しい出来事を格闘技の世界から無くすか?は関係者共通の責務であるのは間違いありません。

今日はどうすれば事故を防げるか?をムエタイの視点から考えていきたいと思います。

試合後外傷を極力減らすには・・・


もちろん、
格闘技である以上お互いダメージを与えあうものであって、ゼロにするのであれば根本的に議論になりません。

如何に減らすか?

の問題ですが、日本で主流となりつつあるK-1、RISEなどのキックボクシング興行はもちろん、「ONE」や他の国内キックボクシング団体も、

”顔への少量のワセリンは可、身体への塗布は認めない”

とのルールがスタンダードになっています。

方や、

ムエタイはワセリンはもちろん、タイオイルも使用可です。

ムエタイでお馴染みのタイオイル

ワセリンを塗るのと塗らないのでは、大きな差があるのはお判りいただけるかと思います。当然、顔に打撃が当たれば薄い皮膚は切れやすくなるわけで、ワセリンで滑りやすくして防ぐ、また身体に塗っても同じですね、わずかに滑るだけでダメージの浸透度が変わるのは想像できます。

安全性を考えれば、ワセリンを身体を含めて塗ったほうが良いと思うのですが、なぜNGとなっているのでしょう?

これって、

明確に答えられる業界関係者って居ないような気がする・・・。

おそらく、ですが、

MMAの影響があるのではないか、と思うのです。
MMAであれば寝技があるので身体へのワセリン塗布禁止ってのもわかる気がするのですが、立ち技ならば関係ないのでは?と思うわけです。

敢えてぶっちゃけますが、

”なんとなくルール的にしっかりしているイメージがあるから”
”会場を汚すといけないので”

のような、およそ選手の安全性とは程遠い理由のような気がしてなりません。

タイオイル禁止に至っては、会場側がNGなので・・・の理由が100%でしょう。

あと考えられる理由として、

はっきりとしたダメージを早い段階で判るようにするため、なのでしょう。

現代の立ち技格闘技はスピード感が求められます。

昔は5Rが主流だったキックボクシングも今はほとんど3R制、その短いタイミングの中で観客が喜ぶアクションを魅せるには、さっさと選手がダウンしたり倒されたりする必要があるわけです。

つまり、

ワセリンでダメージが軽減されては困るのです。

今、国内でも人気の「ONE」。
現在タイ・ルンピニースタジアムでも毎週金曜日に「ONEルンピニー」が行われています。割の良いファイトマネーと、良い試合(KO勝ちなど)した場合に特別に与えられる35万バーツ(約140万円)のボーナス目当てに多くのタイ人選手が出場を希望しています。

が、

当然今までのムエタイのレギュレーション(5R制、ワセリン・タイオイル可、通常のグローブ)とは違うルールのため、試合後に怪我で長期離脱する選手がいかに多いことか。

先のスーパーレックやロッタン、スーパーボンのように「ONE」で成功した選手の裏では、相当数の選手が怪我で離脱しているのです。 

「ONE」で顎を2か所骨折のヨードレックペット



仮に、

「ONE」でもワセリンやタイオイルの使用があれば、これほど多くの怪我人は出ないでしょう。 


国内のキックボクシング団体もこのルール、

”顔への少量のワセリンは可、身体への塗布は認めない”

を改正したほうが良いと思うのです。

もちろん、

ムエタイのように全身にベッタベタに塗れとは言いません。

「ONE」であれば選手がリングインする前に(セコンドではない)係員が選手の顔にワセリン塗りますよね?

同じ感覚で、

選手の両スネ、両ヒジ、両ヒザに少量でもよいから塗ればいいと思うのです。

それだけでも選手の怪我の度合いが変わってくるはず。

極度の減量による事故は防げるか・・・


さて、

やはりこの問題を解決するのは前日計量というものを見直す必要があると思います。

ムエタイはご存じのように基本的に当日計量です。

また、

選手の試合間隔も短いため、通常多くても5㎏程度の減量幅が一般的。

しかしながら、

前日計量が主流の日本のイベントでは平気で10㎏以上の減量をする選手も居ますし、計量時と試合時で体格が全然違うなんてこともザラにあるように思います。

そして、

それに伴って最近では「水抜き」行為による計量失敗や、最初にもあるように救急搬送されるという事例もよく耳にすると思います。

「ONE」は計量時に尿比重(ハイドレーション)テストを行い、過度の「水抜き」行為を禁止していますが、そもそも当日計量にしてしまえば良いのでは?と疑問を持つのは自分だけ?

当日計量であれば、試合まで短い時間しかないわけで大幅な減量はできません。タイと同じですね。

以前は日本のキックボクシング団体もほとんどが当日朝の計量でした。

それが変化してきたのも、やはり国際式ボクシングの影響なのでしょう。

以前は当日計量だった国際式ボクシング、でも極度の減量で体力回復しないままに試合に臨み、リング禍が起こってしまったということから前日計量に変更されたと聞きます。

ならば、
当日計量にして、さらに試合直前の計量を導入し、戻し規定を作る(IBFというボクシング団体は実施しているようです)、そうすれば過度の減量も防げるし一番良いと思うのですが・・・どうでしょう?


でもね、

立ち技格闘技の団体やイベントが、前日計量にこだわる理由が実はもう一つあって、

”計量”というものをステージイベントにしてしまっていること。

計量を「公開計量」と称しイベント化、中継や配信することで大会自体のプロモーションをしようとする、その思惑に当日計量に踏み込めない理由があるのでは、と。

当然ながら、

タイのように当日早朝の計量ではイベントにできませんからね。

まぁ、

自分もムエタイイベントを主催していますからそのあたりはよく分かりますし、急に当日計量に変える!となっても処々の事情で難しいのも理解できます。

が、

敢えて言わせてもらえれば、


試合後外傷を減らすのも、

極度の減量による事故を防ぐのも、


実はテクニカルな問題ではなく、それを開催するイベント・団体サイドの思惑が妨げているのかもしれません。


とは言いつつも、

自分も無責任な評論家ではないので、選手の安全性という究極の定義を軸にしつつ、且つイベンターや主催者サイドが対応可能な方法を皆と一緒に見つけていくつもりです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。








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