見出し画像

レビュー Men I Trust "Untourable Album"

 カナダの3人組ドリームポップバンド、Men I Trustの4thアルバム「Untourable Album」について紹介していきます。

【収録曲】
1. Organon
2. Oh Dove
3. Sugar
4. Sorbitol
5. Tree Among Shrubs
6. Before Dawn
7. Serenade of Water
8. 5am Waltz
9. Always Lone
10. Ante Meridiem
11. Lifelong Song
12. Shoulders
13. Beluga

■前作「Oncle Jazz」からの継続と進化
 2014年に結成し、これまでに3枚のオリジナルアルバムを発表してきたカナダ発の3人組ドリームポップバンド、Men I Trust。

 元々持っていたグルーヴ感や、浮遊感漂う独自のサウンドに加え、持ち前のポップセンスが爆発し大きな飛躍を遂げることとなった傑作3rd「Oncle Jazz」から2年、遂に4枚目となる新作を完成させた。

 良い意味で変わらないのは、ドリーミーでミニマルで浮遊感のある独自のサウンド。女性ボーカリストEmmaの気だるげなウィスパーボイスや、印象的なベースフレーズも相変わらず冴え渡っており、極上のポップセンスが今作でも光る。

 アルバム全体の空気感としては、前作からの変化が見られる。ジャケットのアートワークがそのまま音としてあらわれたかのような、曇天や霧のかかった風景を連想させるややダークなサウンドが印象的で、全体にポップさがちりばめられた前作とは対照的だ。

 その他に変わった点としては、前作「Oncle Jazz」が全24曲、71分の大作だったのに対し、本作「Untourable Album」は全13曲の37分と、コンパクトな内容へと変化している。

 前作の内容を振り返ると、シングル曲が8曲収録されるなど、まるでベストアルバムのように一曲一曲が華やかでまさに豪華絢爛、彼らを人気バンドへと押し上げるのには十分な内容となっていた。

 それに対し今作は、それぞれの楽曲からアルバムの世界観に溶け込もうと徹する姿勢が感じられ、アルバム全体の統一感という観点では、より進化したと言えるだろう。

 サブスク全盛の今の時代を象徴するように一曲一曲のクオリティに重きを置いた前作と、アルバム全体の統一感に磨きがかかった今作。

 どちらが良い悪いではなく、両方の良さを比較しながら聴くのも楽しみ方の一つだろう。

 アルバムの展開としては、よりキャッチーでポップセンスが光る前半と、よりダークでメロウでドリーミーなサウンドへと誘う後半に分かれる。

 前半は#2 Oh Doveから#5 Tree Among Shrubsまで、怒涛のポップソングの連続だ。

 後半で印象的な楽曲は、ファンキーな#9 Always Loneと、流麗なメロディラインの#11 Lifelong Song

 秋から冬にかけても合いそうな雰囲気。これからじっくり愛聴したい好アルバム。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?