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スウェーデンの大学との「若者の意識についてのオンラインワークショップ」開催後記

どうも、きょんです。

先日、URL(Universal Research Laboratory)という組織の仲間たちと、ストックホルム大学・日本学科講堂とで、オンラインイベントを開催しました!

URL(Universal Research Laboratory)は、世界の様々なテーマについてオープンに語り合う「対話型ラボ」です。

イベントのテーマは「若者の社会に対する意識」です。

話題となった日本財団の「18歳意識調査」の結果を受けて、日本とスウェーデンとで意見交換をしながら、お互いの若者にとっての社会や国に対する意識の違い、そして今必要とされるアクションプランについて考えてみるという取り組みでした。

このイベントを通して多くの学びが得られました。そのため、自分の備忘録としてnoteに書き起こそうと思います。

イベントの背景

イベントを主催したURLでは、「北欧ラボ」と称して北欧についてのワークショップとか勉強会をしていました。

そこでつながりのあった、スウェーデン在住の川崎先生(東海大学名誉教授で、専門は内的起業家精神教育、北欧と日本の企業経営の比較)が、日本財団の「18歳意識調査」について、「なんでこんなに日本だけネガティブなの?」と興味を持ってくれました。

▼日本のデータの特異さがわかるデータ

18最意識調査_第20回_社会や国に対する意識調査_ 要約版

18最意識調査_第20回_社会や国に対する意識調査_ 要約版_国

それに答えるために、身近な若者に声をかけ、日本とスウェーデンの若者の実際の声を聞きつつ、互いを比較・意見交換したら双方に大きな発見があるんじゃないか、という話になって、このイベントが企画されました。

この企画を、同じく北欧ラボから関係がある西浦先生(宮城学院女子大学教授で、専門は心理学。現在の研究は幼児教育(特にスウェーデンのアウトドア教育)なども一緒に練ってくださり、当日に至りました。

イベント中では、すべての質問項目について意見交換するのは大変なので、以下の2つの質問に絞って日本とスウェーデンで意見交換をしました

1.自分で国や社会を変えられると思うか
2.自分の国の将来についてどう思うか

ちなみに、日本財団の調査にスウェーデンは入ってないため、第二部でストックホルム大学側で学生たちにアンケートをしてくれました。

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イベントのサマリー

イベントは大きく三部構成※でした。

第一部:若者の意識調査についての説明と、スウェーデンのケース紹介
第二部:グループディスカッション
第三部:ディスカッション結果の共有
※本当は第四部の振り返りの時間があるが、それは総括的なものなので省略

第一部では日本とスウェーデンの意識の違いについての現状の整理と、日本側とスウェーデン側でそれぞれ交代で発表をしました。

先述の通り、スウェーデンは日本財団の調査の対象ではないため、内閣府の『子供・若者白書(旧青少年白書)』を用いて、お互いを比較しました。若者の意欲や意識についての両国の大きな差が浮き彫りになりました。

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日本側は、若者の意識調査の結果について、自分たち自身も事前にそれに答えつつ、なぜ日本だけ突出して低い結果になったのか、日本のU29の若者同士でディスカッションした結果を報告しました。

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スウェーデン側は、ストックホルム大学の学生であり、日本に留学した経験があるエドヴァルドくんが、自分の経験を元に、スウェーデンの若者の社会や国に対する意識について、また日本で感じた文化の違いについて話をしてくれました。

【エドヴァルドくんのスピーチ一部抜粋①】
スウェーデンと日本の間では、若者の中で思われている政治のイメージに差があることに気づきました。また、自分の意見を述べることに対する文化の違いがあると思いました。

スウェーデンでは、恐れず自分の意見を話すことを高く買います。その意見が正しいと思われなくとも、勇気を出して述べる姿勢そのものが望ましいと考える人が多いと思います。

しかし、日本の文化では、逆に自分を目立たないようにし、また、自分の考えを言葉にしないほうが望ましいと思われる美徳があるような印象を受けました。

こういった文化の違いは両方それぞれ長所と短所があると思います。

そして、社会を変えられると思うか?という設問に絡めて、グレタさんについての話を引き合いにして、「グレタさんは日本のロールモデルになり得るか?」という問いを出してくれました。

【エドヴァルドくんのスピーチ一部抜粋②】
皆さん、環境運動家のグレタ・トゥーンベリをご存知でしょうか?グレタは 15 歳の年でプラカードを持ち、議会の前に立って環境問題について訴えました。

彼女についてどう思うのか、日本で直接聞いてみる機会がなかったのですが、この場を借りて、尋ねてみたいと思います。

彼女は日本でロールモデルになり得るのでしょうか?もし日本人の若者が同じ行動をした場合、日本の人々はどう思うのでしょうか?

第二部では、双方の発表を踏まえて、日本とスウェーデンの差について考えるために、参加者同士でディスカッションをしました。

オンライン参加者を、いくつかの少人数のグループに分けて、それぞれのグループでディスカッションしてもらいました。

第三部では、第二部でディスカッションした内容を各グループで共有したあと、宮城学院女子大教授の西浦先生から教育についてお話をしていただきました。

なぜかたまたまイベントの当日にエドヴァルドくんの日本留学時の友人である韓国人の女性も、ストックホルム大学側から意見をくれました。笑

議論された内容のまとめ

イベントを通して、何が日本と北欧で違うのか、どうしてその違いがあるのか、ということの色々な示唆が得られました。

自分なりに大きく3つにわけて気づきを整理しました

1.意識の違い
2.設問の捉え方の違い
3.なぜ捉え方が違うのか

1.意識の違い

・スウェーデンは社会が良くなると思っているし、社会を変えられると思っている
・日本は社会が良くなると思っていないし、社会を変えられると思っていない

スウェーデンは現状の社会にあまり不満をもってない一方で、社会で何か問題が起きたときには自分たちでそれを変えられる、解決できると思っているようです。

日本は現状の社会に不満を持っている上で、社会の問題を自分たちで変えられると思っていないようです。

2.設問の捉え方の違い

・スウェーデンは「社会」という言葉から身近な家族や地域社会なども想起
・日本は「社会」という言葉から政治の世界や国家を想起

スウェーデンは、社会という言葉をとても身近なものとして想起することができるようです。地域の人、家族、友達。こうしたものを社会と捉えています。

そのため、「社会を変えられると思うか」という問いについて、自分の問題として考えやすいし、肯定的に捉えやすいようです。

日本は、社会という言葉を聞くと、国家のことを想起する人が多いようです。

そのため、「社会を変えられると思うか」という問いについて、自分とは遠い問題だと思い、無力感を感じてしまうようです。

3.なぜ捉え方が違うのか

大きく2つのことがあるのかなと感じました。

①社会構造の違い
②政治についての向き合い方の違い

①社会構造の違い

・スウェーデンは挑戦ができる社会
・日本は慎重にならざるを得ない社会

スウェーデンは、若者の挑戦を後押しする世代間の協調がある、無償で通える教育機関がある、新卒で就活しなくてもギャップイヤーがある、リカレント教育によって社会人になっても学び直しができるなど、やり直しがいつでもできるし挑戦を応援してくれる社会だそうです。

そのため、新しいことを生み出すことだったり、社会を変えようとして何かを始めることが比較的容易なんだとか。

日本は、若者の挑戦を非難したり(意識高い系、とか)、社会人になって学び直しをしようとしたら批判されたり(遊びにいくと思われたとの実体験を話してくれた人がいました)、挑戦を阻害する文化があります。また、受験や新卒一括採用などで失敗したらそれだけで大きな社会的な格差が生まれるなど、やり直しがきかない社会です。

それゆえに、出る杭が打たれてしまうために挑戦しようとするモチベーションがわかない上、失敗できないという強迫観念があり、社会を変えるという発想に至らない、そんな余裕がない社会になってしまったのでは、という意見が交わされました。

②政治についての向き合い方の違い

・スウェーデンは政治について語ることが当然
・日本は政治について語ることがタブー

スウェーデンでは、投票はほぼ義務であり、社会に責任を持つ者として、しっかり政治について考え、議論をする社会なんだそうです。普段から政治について考えるし、教育の現場でも政党の主張などを自分で調査したり、環境問題やジェンダーの問題について語る社会の授業があるとのこと。

だからこそ、日常的に国家や社会について自分事として常に考え、投票を責任もってできるそうです。

日本では、政治について話すことはあまりされず、話をすると変な人として見られてしまうとエドヴァルド君は感じたそうです。たしかに、誰かと政治について語る機会はあんまりないんじゃないかな、と思います。

だからこそ、国家や社会について考えることが日常的ではなく、自然に政治的トピックは他人事となり、投票がされないのではないか、と意見が交わされました。

ワークショップ運営自体の気づき

今回のワークショップですが、アクションを考える、という目標があんまり達成できませんでした。

なんでアクションを生み出せなかったのかな、と仲間内で話をしながら得た示唆が2つあります。

①トピックに気をつける

教育とか政治とかの大きな話になっちゃうとアクションが考えられなくなってしまいます。

仮に「ジェンダーギャップを改善するために、日本の首相を女性にしよう!」とか考えた場合、それは一般人の立場では実現不可能です。

教育や政治はマジックワードで、多くの問題の原因を探ろうとするときに、多くの人が想起する問題であり、しかもそれは概ね正しいです。

正しいですが、それを考え始めると、自分たちの手の届かない解決策ばかりが浮かんでしまいます。そうなると、机上の空論ばかりになっちゃいます。

議論のトピックは気をつけないとな、と思いました。

②0→1的な発想には気をつける

アクションを考えるときに「○○な組織を立ち上げる!」「○○について調査する!」と、自分たちが新しい組織とかを0から創り出す、というアクションを考えることをやりがちだそうです。

でも、実際は、自分たちが知らないだけで、同じような取り組みをしている組織が別にあって、そこが色々な実績をもっていたり、知見をもっていたりすることは多々あります。

自分たちで0→1をする、というアクションが発想されがちですが、そうではなく、既にある1を探し、連帯する、という手段のほうが、手っ取り早いし、得るものも大きいかもね、という話があり、なるほど、と思いました。

まずは仲間を見つけること、他の事例を知ること。そうしたことから開始してみるというのは、第一歩のアクションとして良いのではと思いました。

今後やりたいこと

大きく3つあります

①今後もこうした意見交換を継続する
②自分たちだけで出来るアクションを考え実行してみる
③海外の若者とつながって一緒にプロジェクトを実施する

①今後もこうした意見交換を継続する
せっかくスウェーデンとのつながりができたので、今後もこうした意見交換や、互いの認識の差を埋めていくことを継続していきたいなと思いました。

想像以上に、「社会」という言葉の捉え方の違いなど、大前提から認識がずれていることがわかったので、そうした差をどんどん見つけつつ、意見交換できるといいなと。

あと、西浦先生から、意外に日本のほうが進んでいる分野があるらしいとのお話を聞いて、それならスウェーデンの人たちから教えてもらうばかりじゃなく、僕ら日本側が貢献できるもありそうだなと思いました。

お互いの国の差は強く感じますが、過度に自分たちの国を卑下することなく、お互いに価値提供し合いながら協力できる関係を築きたいです。

②自分たちだけで出来るアクションを考え実行してみる

アクションについて、今回はあんまり考えられませんでしたが、イベントの後に仲間たちと振り返りながら

・自分たちと同じような関心をもつ人とつながって知見を交換してみたい
・その人たちと一緒に別のイベントやってみたい
・日本での先進的な取り組みについて調べてみたい

などなど、やってみたいことが自分の中で色々出てきました。

今後、そうしたアクションを考え、実行して、一歩ずつ取り組みを前に進めることで、自分たちこそが行動を通して「社会を変えることができる」と胸を張って言えると良いなと思っています。

③海外の若者とつながって一緒にプロジェクトを実施する

協力してくださった先生方と話をして、学生たちと一緒にプロジェクトとかやれるといいね!みたいな話もしています

今回の若者の意識調査に限らず、SDGsについてのお互いの国の取り組みとか情報交換してレポートにしてみたりとか、色々できそうなことがありそうです。

また、別の国の方々とつながることもできそうなので、他の国と今回のワークショップと同じテーマで意見交換してみるチームを、スウェーデンの人と組んで一緒にやってみるとかすると面白いかなとか。

また近いうちに、こうしたイベントを企画していきます!よろしくお願いします!

なお、このワークショップについては、後日、在日スウェーデン大使館かスウェーデン社会研究所の広報誌に掲載されるようです。

以上です!


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