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弱っている時に優しくされると、好きになってしまう。

 昔、実家で犬を飼っていた。オスなのに名前を「めぐめぐ」といい、ミニチュアダックスフンドなのに体長が1mあるという、チャーミングな犬だった。彼と長い時間を共にしたこともあり、これまで、自分は筋金入りの犬派だと思っていた。そう、長崎に移住するまでは…。

 3年前。仕事で挫折し、逃げるように長崎に移り住んできた時、だいぶ弱っていた。心は暗く、これまでの不摂生な生活が祟ってか、体は重かった。移住直後、そんな自分を癒してくれたのが、長崎の猫だった。

 暮らし始めた家は、坂のまち長崎の、斜面地の中腹にあった。しばらく生活すると、あることに気がついた。道端で、やたらと猫と出会うのである。もはや、猫を見ない日がなかった。知らず知らずの内に、長崎の斜面地で、猫たちとのご近所(?)暮らしが始まっていた。

 猫のおかげで、心がどれほど和んだだろう。彼らと出会うのが楽しみで、毎日外に出た。行きも帰りもバスには乗らずに、坂のまちの階段をせっせと登っては降った。余談だが、対象に接すれば接するほど、好感を持ってしまうことを「単純接触効果」というらしい。正しくそれである。気がつけば、犬派から猫派に、寝返ってしまっていた。

 猫のおかげか、今では心身ともにすっかり健康になった。猫としては、別に優しくしたつもりはなかった(多分、「お前、餌くれないんかい!」としか思ってなかった)と思うが、とても感謝している。ありがとう猫。これからも、猫とのご近所暮らしを楽しもうと思う。

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