見出し画像

長崎は音が良い

 家の庭に、うとうと眠る猫がいた。しばらく見入っていると、どこからか寺の鐘が鳴り響いた。夕暮れを知らせる鐘の音だと思う。まちを見下ろす静かな斜面地に、穏やかな鐘の音が染み渡っていく。歌人でもあれば一句読んだであろう趣の深さに、しみじみ感動する。

 長崎は音が良い。暮らしの中に溶け込む音を、とても気に入っている。教会や寺院の鐘の音、入港を知らせる船の汽笛、草花のそよぐ音、名も知らぬ鳥の鳴き声、路面電車の通る音。まちなかは賑やかだが、少し離れた斜面地の坂の上は、しんと静かでもある。

 長崎のこういう魅力は、暮らしてみて初めてわかった。やはり観光で訪れるのと、住んでみるのとでは、まちの見え方・感じ方が変わるものだなぁとしみじみ思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?