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インスタグラマーもディズニープリンセスも。なぜ今、ヒロインは笑わないのか?

最近、ミレニアル世代のインフルエンサーを見ていて思ったことがある。あれ、なんか笑顔少なくない!?!?というか無表情…。

例えば、フォロワー15万人を誇る木村なつみちゃん(@natsumi__kimura)や、紅白歌姫のあいみょん(@aimyon36)も。最近、話題の女の子たちがあげる自身の写真は、退屈げだったり、無表情であったり…。笑っていないのだ。


ディズニープリンセスの表情を追う

時代における女性像の描かれ方をわかりやすく象徴するのは、ディズニープリンセスかもしれない。時代を少し遡って見てみたい。

シンデレラや白雪姫に代表する一世代前のヒロインは、「悪者にいじめられるか弱き姫が王子に救われる」が物語の型であった。私も小さな頃、この2作をよく見ていたものだ。

彼女たちは、定めを受け入れる。囚われっぱなし、やられっぱなし。でもその美貌が、王子を引き寄せる。眠っていたり、待っていたりさえすれば運命が変わった。

表情や仕草に注目すると、控えめで上品。ポスターや印象的なビジュアル(著作権の問題で画像を貼れないが)を思い出してほしい。顎を引き、指先を組んだりして、上目遣いでこちらを見つめるイメージが強いのではないだろうか。


一方、次世代のプリンセスたちは一味違う。アナと雪の女王、塔の上のラプンツェルたちに見るヒロインは、「地位や周囲の期待を投げ打って、自己実現のために冒険へ出る」。

表情の描かれ方も、一昔前と変わっている。企みの眼差し、好奇心に輝く瞳。その目線の先に、もう王子はいない。彼女たちが夢みるのは「自分らしい生き方」である。

王子に愛されることや結婚が、みんなにとっての正解とされていた時代。目線の先には王子がいたから、ポーズや表情にも女性らしさが溢れていた。しかし、自分らしい生き方を追い求める姿への共感が強まる時代に、王子への媚びた笑顔は不要になった。

私の感覚としても、大人になったいま旧ヒロインを見返すと、「結局美貌か、無理ゲーじゃん」と感じてしまう。だが、最近の作品には自分の生き方や信念を貫く難しさを重ね合わせたくもなる。

インターネットやSNSが普及し、先輩たちがいろんな生き方、働き方を実現していく今。ミレニアル世代が描く未来で、王子はほんの一要素でしかなくてl、むしろ膨大な選択肢の中で何を選ぶべきかに戸惑うとき、「地位や周囲の期待を投げ打って、自己実現のために冒険へ出る」新ヒロインたちの"ハンサムな表情"に惹かれるのは自然なことかもしれない。


CanCamの表紙モデルも笑わない。

笑わない傾向は、ここ最近の女性ファッション誌の表紙にも見られている。今回は2014年と2018年、それぞれ12ヵ月分のCamCam表紙におけるモデルの表情を比較してみた。(同じく写真は貼れないため、画像検索などで確かめてほしい)

分類の基準はこちら。

笑う:目線をこちらに向けて、歯を見せた笑顔。
笑わない:口角をあげず、目元の緩みもない。
ぶりっ子:モテを意識上目遣い・流し目など。
その他:メンズグループ表紙など

雑感でまとめたグラフだが、ここにも「笑わない」女性像が増えていることがわかる。(ちなみに、3月号も笑っていなかった)

では、なぜいま笑わない、言い換えれば無表情な女性に共感が集まるのだろうか。


無表情が生む想像力の余白

無表情…と考えたときに、思い出したのはキティちゃんだ。

「NIPPONIA」のインタビューで、デザイナーの山口裕子さんはこう語っている。

「口を描くことによって、キティは固まってしまう。口を描くことで、語りかけてくれなくなる。無表情だけど、何かを語りかけてくれる顔。それこそが、見ている人にとって癒やしになる。怒っているとか、笑っているとか、泣いているとか、キティは相手に感情を押しつけない。空気のようにそこで見ていてくれる。それがずっと一緒にいられる秘密なんじゃないかしら」

つまり、無表情とは想像力を引き出すための余白なのだ。

旧ヒロインや数年前のCanCam表紙のような「美しい人の完璧な笑顔」をみると、今の自分と引き算したときに落胆を感じてしまう。だけど「無表情にある余白」をみると、そこに自分の感情を重ね合わせたり、いろんな想像力をもってその人のイメージを完成させることができる。

じわじわと、しかし確実に変化が起きているヒロインたちの表情には、ミレニアル世代の深いインサイトが隠れているように思える。


まとめると…

まとめると

✔︎生き方が多様化する中で、王子物語は崩壊。
✔︎ヒロインは、誰かのために笑わなくなった。
✔︎無表情には「解釈の余白」がある。

このnoteを書いている人にいろんな意見を聞いたが「かわいいは嫉妬、かっこいいは共感」という言葉をくれた人もいる。なるほど、確かにそうかもしれない。

クリエイティブの中でモデルを起用するお仕事をされている方は、モデル自身のイメージだけではなく「誰がターゲットで、モデルにどんな表情をしてもらえば共感されるのか」を設計する必要がある。これは私の肌感だが、モデルの表情や切り取り方を見て、カメラマンの性別がわかるようなビジュアルもある(だいたい当たる)。男性が共感する女性像と、女性が共感する女性像はまた違うからだ。

生き方が変われば、ヒロイン像も変わる。笑わないスターたちが世に共感される背景には、まだまだいろんなインサイトが潜んでいそうである。


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