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玖磨問わず語り 第12話「キューティー福ちゃん」

ヤムヤム、興味津々

桜舎に来た福ちゃん、唸らんかったんや。
福ちゃんが入ったケージは、ひょっとして、わーも使ったヤツ?
おおーっ、やっぱりそうなん。
なんか、わー、福ちゃんに親近感出たわ~。

ほいで、福ちゃんのしっぽがおもろいな。
わーのしっぽも「ちーと変わってる」ゆわれるけど、福ちゃんのはもっともっと短いんやね。
玖磨じぃちゃんのしっぽはどうなん?
ありゃ、さきがちこっと曲がっとるねぇ。

福ちゃん、顔もくっきりやけど、毛皮柄もむっちゃ派手やん。
なんかの絵に見えんこともないなぁ。
おなかとかタプンタプンしとるし、どっこから見てもおもろい猫やわ。
ちぃちぃは長いこと押し入れにこもっとったけど、福ちゃんはどうだったん?
なぁなぁ、玖磨じぃちゃん、続き、はよう話してぇな。

ケージよ、さらば

福ちゃんのケージ生活は短いものだしたよ。
3日もしないうちに、ケージは片づけられたんだす。
もっとも最初の晩は、ちぃちぃさんがミンさん仕込みの「上納フード」狙いをやってただすよ。

福ちゃんのドライフードを取ろうとしているちぃちぃ

福ちゃんは野良経験がなかったんだす。
つまり桜舎で生まれて初めての他の猫との暮らすことになったわけだすな。
ところが、福ちゃんにとってはこれがさいわいしたようだす。
ケンカをしたこともなく、友だちもいなかったから、比較的早い時期からオラたちに興味津々の様子だした。

「福ちゃん、もうケージは要らないわね。セミナーのとき、邪魔だし」
ナンリさんはそう言うとパタパタとケージを折りたたんでしまったんだす。
福ちゃんもそれで困った様子はなかったですよ。
淡々とあるがままを受け入れる、そんな感じだしたな。

キューティー福ちゃん


「これまでずっとKさんとふたりきりだったもんね。それに比べると、ここは賑やかでしょう?」
福ちゃん、オラとちぃちぃさんのように腰パンや膝乗りをすることはなかったんだすが、なんとゆうか、いるだけで何もしなくても存在感があったんだす。

猫ちぐらに無理くり入る後ろ姿

セミナーのときは、ちゃっかり展示用キャリーケースに入っていたり。
福ちゃんお輿入れのとき持参の籐かごに、「むふ~」とした顔でくつろいでいたりするんだす。
ごく自然にやって、まったく無理がないんだす。

「やっだー、かわいい~」
「福ちゃん、いい味出してますねぇ」
みなさん、大喜びだした。
そして、なにより喜んでいたのはナンリさんだした。

桜舎にすぐ溶け込んだ福ちゃん
殿様福ちゃん
マタタビ粉を振りかけた爪磨きにズリズリ

特に、このアキレス腱伸ばしのポーズは大人氣だした。

お得意のポーズ


ふとした拍子にやるポーズ

あるとき、シニアハウスで福ちゃんのキャットシッターを担当したという方が猫セミナーにいらしたんだす。
「まぁ、これがあの怒りんぼの茶々丸?」
何度も何度も、福ちゃんを見て驚かれていただすよ。
「茶々丸君は唸り声が恐ろしくて、ケージにごはん入れるのも、トイレ掃除するのもホントに怖かったです。それが今はこんな柔和な顔して、まぁ、なにが起こったんでしょう?」

その晩、ナンリさん。
「Kさんがお留守の時や来客のときは、必ずケージだったみたい。福ちゃんが唸るのは、ケージと関係してるのかな?」

「Kさんご夫妻はずっと犬と暮されて、ご夫君が亡くなったときに、犬は散歩が大変だからということで、茶々丸君が家族になったのよ。ずーっと犬だったから、同じようにしつけも厳しくされたそう。で、福ちゃんに対して、『悪いことをしたら裁縫用の物差しで叩いた』っておしゃってた。そう考えてしまわれたのもある意味、仕方ないと思うけどね。福ちゃん、ここではそんなことがないから、緩んだのかもね」

セミナー中もこんな感じで部屋にいたんだす

福ちゃん、面会す

福ちゃんが来た1か月後、噂のKさんが桜舎に面会に来たんだすよ。
ナンリさんから聞いていたイメージ通りのキビキビ、ハキハキした方で、とてもお元氣そうだした。
「ちょっと茶々丸、あなた、14年も世話したのにちっとも寄ってこないなんて、ずいぶんと薄情な猫だわね。アハハ、でも元氣そうね。ナンリさん、あなたに茶々丸を任せて安心してるの。これでなにも心配することがなく、残りの人生、好きなことを思い切りやれるわ」

福ちゃんはKさんがお土産で持ってきた好物の煮干しはムシャムシャ食べただすが、Kさんに近寄ろうとはしなかったんだす。
普段から福ちゃんはヒトに対して自分からすり寄ったりすることはなかった猫だしたし、な。

「この前、茶々丸のお世話してた人が、こちらに来たんですって? それで茶々丸があまりに変わっていたんで、びっくりして私に連絡してきたんですよ。全然「怒りんぼ」じゃなくなったって。今日見たら、確かにそうね。よかったじゃない茶々丸、いえ、ここでは福ちゃんか。ねぇ~」

「じゃ、また会いに来るわね~」
と言って、Kさんは疾風のように帰っていったんだす。
オラ、ふと思ったんだす。
ひょっとすると、福ちゃんはKさんと同じ潔さを持っているんじゃないか、と。
ヒトと猫、いっしょに暮らしていると、なんとなく似てくるところがあるんだす。
福ちゃんのものおじのなさ、なんとなく華やかな雰囲氣。
オラ、Kさんにもそれを感じただすよ。

オラ?
オラとユズコさんは、どうだすかな?
傍のことは見えるだすが、ジブンのことはなかなか見えないもんだすなぁ。


オラと福ちゃんツーショット

とまぁ、福ちゃんはするりと桜舎の一員になったんだす。
それと並行するように、ミンさんのミッションが始まっていたんだす。

続く










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