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AoSの八領域の設定を、アーミーと馴染ませるには

「自分の軍勢の設定を考えたい」と思ったことはないだろうか。自軍を率いる将軍はどんな名前で、どんな人物なのか。彼らはどこに居を構え、何を目的としているのか。もちろんどんなオリジナル設定でも構わない。しかし世界設定を知ることで、より世界観に馴染む配役を与えてあげられる。

ゲーム部分のみを遊ぶだけでなく、そういった物語性を楽しむナラティブな遊びができるのも、ウォーハンマーの魅力だ。

今回はウォーハンマーの現ファンタジー版である『エイジ・オヴ・シグマー』(AoS)の領域の話をしよう。

【注意書き】
ウォーハンマーは設定どおりに塗るべし、編成するべしといった意図はありません。ミニチュアをどのように塗るのもその人の自由です。ただ、自分のように、可能な限り世界設定を大事にしたい、独自の軍を作りたいけど、基盤となる設定は尊重したい、といった人に向けた記事になります。


なお「ウォーハンマーとは何ぞや?」という方は、過去に自分が執筆したこちらの過去記事を参照してもらいたい。過去の版を扱った記事のため少し異なる点もあるが、第1回を見てもらえればおおよそどんなものかは理解できると思う。


オールドワールドからモータル・レルムへ

AoSの舞台となっている世界<定命の諸領域>(モータル・レルム)は、かつてオールドワールドと呼ばれており、ゲームとしての名前もAoSではなくウォーハンマー:ファンタジーバトル(FB)だった。
※正確に言えば、オールドワールドはFBの舞台となる惑星の一地方の名称。

オールドワールドは、渾沌軍の侵攻に端を発した一連の大厄災、<終焉の刻>(エンド・タイム)によって砕かれ、そこからAoSの世界が誕生した。AoSの設定でたびたび登場する“かつて在りし世界”とは、砕かれる前のFB世界のことを指す。

シグマーやアーケィオン、ナガッシュなど、AoSに登場する名のあるキャラクターの多くは、もともとは“かつて在りし世界”の住人だ。彼らはさまざまな手段で神や半神といった存在へと昇華し、FBの世界から継続して生き続けている。

このことからもわかる通り、<定命の諸領域>は比較的新しい世界だ。だが、新しいからといって設定が未熟というわけでもない。最初からヘビー級の鈍器(超ブ厚い設定集&ルールブック)を出してくるくらいにはパンチ力がある。

AoSコアブック

これには<定命の諸領域>の成り立ちや、この世界で生きる種族たちなどの設定が書かれている。世界観に興味があれば、絶対に持っておいて損はない。残念ながら日本語版の単品販売はなくなってしまったようだが、2勢力ボックス『ソウル・ウォーズ』にはたくさんのミニチュアといっしょにブチ込まれている。同梱されているミニチュアの値段を考えれば実質無料なので、今すぐ買おう。


世界観の基礎となる舞台<定命の諸領域>とは?

AoSの舞台である<定命の諸領域>は、簡単に言えば複数の世界が並行して存在する多元世界のようなものだ。8つの大きな領域があり、各領域は別個の魔法の力が強く表出していて、大地の環境や住民たちの気質、姿に大きな影響を与えている。(なお、巨大な領域がこの8つというだけで、小さいものを入れれば無数の領域が存在しているらしい)

例えば火の魔力が強い領域・アキュシーで育てば、炎のように燃え盛る色の体毛を持っていたり、焼けて黒ずんだような肌を持っているかもしれない。一方で生命の魔力が強い領域・グューランで育った怪物は、木のような角を生やしていることもあるだろう。

というように、生まれ育った環境が生物の気質や外見に大きく影響を与えることがあるのが、AoSの世界だ。これは独自のアーミーの設定を考えるときに、大きな助けになる。自分の軍勢がどの領域出身なのかを考えることで、カラースキームも見えてくるかもしれない。

ちなみに、各領域は惑星という形をとっておらず、非常に広大な平面世界として作られている。そのため世界の“縁”が存在するが、果てしなく広く、かつ外周部に行くほど魔法の力が強くなり、生物に耐えられない環境へとなっていくという特徴がある。ナガッシュは、死者を利用して世界の外縁から、領域の魔力が結晶化した物質……<領域石>を運ばせているが、その死者でも1度に粒ほどの石しか持ち帰れない。それくらい外縁部の魔力は大きすぎるのだ。

さあ、いよいよ各領域の紹介へと移ろう。こういった情報を自分なりに解釈し、独自の設定を作っていくのがまた面白いのだ。


■火の領域<アキュシー>
火の魔力に満ちた領域、アキュシーには、熱風が吹きすさぶ荒々しい土地が多い。海には水ではなく溶岩が流れ、空には多くの灰が舞っている。アキュシー人は熱に浮かされたように衝動的で、自らの体を危険に晒すような儀式なども広く行われる傾向にある。他領域では外交や裁判といったもので決める物事を、闘争や試練に置き替えて判断することも多いようだ。力強く、勇猛な者を多く輩出することでも知られる。

【アキュシーらしさを演出する】
火鉢、炎をかたどった鎧や竜といったモチーフが例として挙げられている。灰に塗れた姿や黒ずんだ肌、赤熱した武具なども、アキュシーのイメージとピッタリだ。また、<火の領域>とは言っても、必ずしも赤やオレンジ、黄色、黒という色しかないわけではなく、緑や青、紫といった色彩が印象的な場所もある。もっとも手軽にアキュシーらしさを出せるのは、ひび割れた岩から除く炎をイメージした、地面のデコレートだろう。

参考:ホワイトドワーフ2019年1月号

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■生命の領域<グューラン>
あらゆる生命が繁栄し、出生と入滅の循環を繰り返す領域。木々に覆われた密林地帯が豊富な世界となっている。グューランに住む人々は実践的かつ先見的であり、どこか謎めいた印象を受ける。苦難に見舞われたときでさえ活力と生命力に満ちており、粘り強く耐え続けた。この領域では、シルヴァネスの勢力が力を持っている。最近では侵攻を始めたナーグルの軍勢やスケイヴンのスクリール氏族の動きも活発だ。

【グューランらしさを演出する】
春の芽の黄色、夏の緑、秋の赤、冬の鮮明な白、茶色や灰色、黒といった腐敗と枯渇の色などがグューランにちなんだ色。とのこと。天然由来の装備品を使うことや、発光色に生命力に溢れた緑色を使うこと、衣服や装備に苔が付着していたり、根、蔦、緑葉といったものをイメージした装飾を使うとそれらしくなりそうだ。また、ベースに植物を多用したり、シルヴァネスのキットに付いてくる小動物をアクセントに散らす、という方法も試してみたい。

参考:ホワイトドワーフ2019年3月号

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■死の領域<シャイシュ>
大死霊術師ナガッシュが統べるこの領域は、定命の人々が新たな死後の世界を信じる者が現れるたび、その世界を模した空間が魔力によって作られるという特徴を持つ。中央部にはすべてを飲み込む大渦“シャイシュ・ナディル”が口を開けており、多くの人々に信仰される“死後の世界”は安定してシャイシュの領域に存在するが、信じる者がいなくなった場合はシャイシュ・ナディルへと飲み込まれて消滅してしまう。

死後の世界をイメージしがちだが、実際は死の魔力が強い領域というだけで、人間を始めとした生物も普通に暮らしている。シャイシュ人たちは陰鬱で孤独な雰囲気を持つが、強靭な戦士でもある。それは、戦いで斃れた己が、どのような運命を辿るか熟知しているからだという。

【シャイシュらしさを演出する】
シャイシュにちなんだ色は、黒や灰色、アメジストを思わせる紫、死後の世界をイメージする緑色や、腐敗の茶色とのこと。葉が落ち、樹皮がひび割れたシルヴァネス、武器から凶悪な紫色の光を放つカラドロン、かつての仲間や家族の骨をお守り代わりに身につける人々などが挙げられている。死を連想させる骨や、霊体をイメージさせるマテリアル、不気味に立ち昇るオーラを表現した色味などを導入すると、より死の領域のアーミーらしさがでるかもしれない。

※参考:ホワイトドワーフ2019年4月号

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■金属の領域<シャモン>
領域内の多くが金属で形作られているのが特徴。この領域は日々形を変えており、領域の外側に近づくほどその変化の度合いも大きくなる。常人が眺め続けていると狂気に陥るとさえ言われているほどだ。この領域で主な活動している勢力の筆頭といえば、カラドロン・オーヴァーロードだろう。シャモンで生まれ育った者は野心高く、意志堅固という特徴を持つ。また、高品質な武具は、他領域の者から羨望の的となっている。

【シャモンらしさを演出する】
シャモンにちなんだ色は金、銀、銅といった金属色に加え、宝石のような色合いも相性がいい。輝く鎧や、きらびやかな布といった高級志向の外見に整えたり、鎖や歯車といった工業部品を連想させる装飾が似合いそうだ。怪物は金属色の肌を持って生まれてくることもあるので、肌をメタリックにしてみるのも面白いかもしれない。“変化”の要素が強い領域なので、魔法の選択も何かを変容させるものを選んでみてはどうだろうか。

参考:ホワイトドワーフ2019年2月号

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■影の領域<ウルグ>
ウルグには昼夜が存在せず、地域によって薄暗い空か暗闇かのどちらかに分かれている。秘密や嘘、人を惑わせる幻影が蔓延しており、自分の感覚すら信じてはならない。この地で主に活動しているのは、ドーター・オヴ・カインやスケイヴン(エシン氏族)など、暗闇を友とする者たちだ。

ウルグ人は猜疑心が強く、信義に値しない者が多い。胸の内を明らかにせず、自分の意志や直感を頼りにすることが長生きの秘訣なのだろう。彼らは追跡者としての資質を備えており、斥候や暗殺者として重宝されている。

【ウルグらしさを演出する】
ウルグにちなんだ色は、薄紫や褪せたシアン、くすんだ緑、茶色など。全体的に明度や再度が低い色や、モノクロームで塗られていると“らしく”見えそうだ。青白い肌と黒革の装束といったコントラストを生かした色合いや、闇を退けるための発光するルーンや蝋燭などの小物の活用。影と同化するかのような体色や、環境に適応して目が退化した改造をほどこすなど。この領域全体を包む“闇”にどう対応しているのか、という点から設定を考えてみるのも面白そうだ。

※参考:ホワイトドワーフ2019年5月号

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■光の領域<ハイシュ>
シャイシュは光に満ちた領域で、大地から天空に向かって光り輝くエネルギーの束が放たれている。ハイシュ人はあらゆる領域のなかでももっとも賢明な人々として知られており、魔法の扱いにも長けている。知識を追求する性質を持つが、それは完全性への執着と表裏一体だ。文化・技術ともに傑出していたが、学者や魔術師間での競争関係が悪化した結果、腐敗を呼び込む。その後の混沌軍の侵攻なども合わせ、現在はかなり荒れているようだ。

【ハイシュらしさを演出する】
ハイシュを表す色としては、白、金色、青白色などがよく使われている。輝く装束や毛皮、光を放つ武具といった、まさに光といった演出方法のほか、眩むような光から身を守るために、あえて黒い衣をまとっているという考え方も示されている。また、ハイシュの象徴として“光の蛇”というものがあり、蛇をかたどった装飾を用いる者も多い。

参考:ホワイトドワーフ2019年8月号

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■獣の領域<ガウル>
ガウルは、すべての生物が生存競争に明け暮れる、原始的な領域だ。巨大な獣が多く見られ、それらが死んだ後に残した巨大な骨なども散見される。すべての大陸でオールクの神・ゴルカモルカが崇拝されており、人間の信者も少なくない。ちなみに、ガウルの肉は諸領域の中でも最高であり、高価な商品として取引されているらしい。

原初の闘争本能と剝き出しの暴力こそが掟であるガウルでは、人も獣もその理の下に生きている。弱肉強食の世界であるためか、ガウル人は実用主義で率直な気性を持ちがちだ。物事に正面から全力で立ち向かうことを望み、微妙な表現や本心を偽ることを好まない。死への恐怖よりも戦いの興奮に快感を見出す彼らは、例外なく苛烈な戦士であり、卓越した狩人でもある。

【ガウルらしさを演出する】
ガウルにちなんだ色は茶褐色や黄色、骨色など。なお、ちなんだ色は設定されていつつも、自然が原初のまま残るガウルは、じつは色彩豊かな領域であるとのことなので、割と派手めな色でも自然界の色を参考にすれば説得力は持たせられそうだ。

荒々しい入れ墨を入れたり、戦化粧を施したり、さらには毛皮や牙、骸骨といった狩りの戦利品や、骨や石から作った魔除けを身につける、といったキットバッシュもよさそうだ。ガウルには砂漠や雪原といった、あらゆる過酷な自然環境があるため、ベースデコレートを凝ることで、よりアーミーが過ごしている環境を示すのもアリだろう。

※参考:ホワイトドワーフ2019年6月号

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■天空の領域<アズィル>
神王シグマーが治める領域。<渾沌の時代>での激しい渾沌の軍勢による侵攻に際し、他の領域とつながる領域門を閉ざしたために、唯一荒廃を免れた領域だ。門を閉ざしている間にシグマーはストームキャストを作り上げ、反撃のための戦力を増産し続けていた。当然ながら、ストームキャスト・エターナルたちの本拠地である。

アズィル人には勇敢で意志強固な戦士が多く、魔法の技にも熟達している。また、大半の人々は<渾沌の時代>に故郷を失った人々の子孫であり、幾世代にも及ぶ報復の念が彼らを奮起させている。

【アズィルらしさを演出する】
アズィルにちなんだ色は青、紫、金といった、空(宇宙)に関連するもの。また、空の変化として捉えられる鮮やかな赤、黄色、黒なども使われる。アズィル人は、装備の装飾にアズィル産の輝く金属を用いることが多く、太陽や月、星、彗星といった天体にまつわるもの形状のものを好んでいるようだ。同様に、望遠鏡、六分儀、暗視鏡、占星術用具といった道具を身につけている者もいる。

※参考:ホワイトドワーフ2019年10月号

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と、ここまでが主要な八つの領域となる。それに加え、AoSの世界を知るうえで重要な要素もいくつか紹介しておきたい。


領域門
各領域はそれぞれ別個に存在しており、地続きではない。しかし、孤立しているわけでもない。各領域は領域門(レルムゲート)と呼ばれる建造物によって繋がっており、そこを経由することで行き来が可能だ。

領域門は数多あるが、利便性が高いものや生命体の居住地に近いものは、大抵の場合いずれかの勢力が占領している。この場合、片方の領域だけ占領していても意味はないため、基本的には門の両側を占領することになる。有名なのは領域門を中心にアキュシーとグューランにまたがって建てられた人類の都市、ハンマーハルだろう。このような場所は、お互いの特産物を取引する場としても栄えている。

一方で、門の両側を占領下(=要塞化)できない場合、門を封印するという手段を取られることがある。現にシグマーはアズィルにつながる門を封印することによって、混沌の侵攻から耐え忍ぶことに成功した。

領域門は戦略の要所となるため、領域門をめぐって大きな戦いが勃発することも珍しくない。

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ちなみに、領域門の形はさまざまで、すべてがこのテレインモデルの形だとは限らない。つまり、自由に作り放題ということだ。


エイトポイント
エイトポイントは、全領域の中心に位置し、島のように浮かぶ巨大な大陸だ。かつてはオールポイントと呼ばれ、文化と商業の中心地として栄えたが、アーケィオンが率いる混沌軍の侵攻に遭い、荒廃してしまった。境界には各領域につながる弧の街道(アークウェイ)があり、あらゆる領域へと移動できることから、戦略的価値がかなり高い。現在では、アーケィオンの居城であるヴァランスパイアを中心に要塞化されている。

また、永きに渡る渾沌の穢れを浴び続けた結果、渾沌の信奉者たちだけでなく、変異した地形や血に飢えた怪物などが跋扈する魔の大陸へと変貌してしまっている。


渾沌の領域
渾沌の領域は、渾沌の神々や彼らに仕えるディーモンが住まう領域だ。領域と言っても他の諸領域と同質のものではなく、渾沌のエネルギーそのものによって形作られた世界のようなもの。混沌の神々は各々の似姿を纏ってはいるものの、本質的には渾沌のエネルギーである。そのため、渾沌の領域とは渾沌の神々そのものとも言えるだろう。

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長くなってしまったが、今回紹介した舞台を抑えておけば、AoSの物語もより理解しやすくなるはずだ。そして、ぜひ自分のアーミーの設定を考え、ゲームにおいても設定からいろいろと妄想してみてほしい。ウォーハンマー世界における、自分で作る物語を楽しもう。



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