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風俗嬢との恋⑨

時間がいくらあっても足りないくらい

沢山話した。

特にこれといって話題が入れ替わったり
また同じ話題に戻ったりと

二人でいると話が尽きなかった。

そして会ってまだまもなく
出会い方も不自然なのかは分からないけど

彼女をより一層、好きになってしまった。

あまり踏み込んでしまってはいけないと思ったりする自分も
いたけど、日々の生活の中でどこか彼女のことで
頭がいっぱいで、ダメだと分かっていても
考えてしまっていたことを彼女に話した。

すると彼女は

『そりゃそうだよね!!
今の時代普通にやってるよとはいえ
やっぱりどこか下に見られたり可哀想な子
誰かに貢いでる子、メンヘラや病気持ち
リストカットしたりするヤバい人

とか言われたり勝手に思われたりするし
お店の掲示板とかも私普通に誹謗中傷ですごいよ。

まあトータル風俗嬢は悪みたいなのあるよ。
全部手っ取り早く自分の時間削ってお金が欲しいだけなのに
うるさい人は消えてなくなれとも思うよ。

嫌なことが多すぎて
たまに病むことだってあるけど
よかったって思えることも沢山あるし
今こうして幸せな気持ちでいられるのも
多分色々な奇跡が巡り合わせてだと思わない?』



って言ってくれた。


確かにそうだ。
生まれから今までどこかの時間が1分、1秒でもずれていたら
彼女とは出会ってないのだから。


彼女だけではなく今いる自分の周り全てそうだ。


出会いは時に素晴らしく、時に悲しくも儚く
色々な意味があるのだと。


そして彼女のことがどうしても手放したくない
気持ちでいっぱいになり沢山抱きしめて一夜を共にした。
二人ともお店とは全く違う愛情を伝え合った。


これがよかったのか悪かったのか分からないけど
二人とも只々近くに自分を見てくれる人が欲しかったのか
何かに縋りたい思いもあったのかと感じた瞬間もあった。

朝、アイフォンのアラームが部屋中に響き渡りながら
消して、あともう少しっていうのを5〜6回やった。

『おはよ〜もう朝だね
出勤だるいな〜このままずっとこうやっていたいと
布団に包まった。』

自分もこれから仕事だから頑張って準備して行こっかと話した時に

彼女が『 そうだよね〜準備しよっか 』
とシュンとした感じで言った。

精算は入室前には終わっていたので退室ボタンを押して
エレベーターに乗り込んだ。

彼女はそっと手を握ってくれて
『今日は無理言ってごめんね、沢山一緒に入れてよかった』
って言ってくれた。

扉が開くと明るいエントランスを通り抜けた先に
入り口の自動ドアが開き別々の行き先へと向かった。

今日で最後かもと思いながらふと
彼女の後ろ姿を見たら彼女も同じタイミングで振り返り
手を振ってくれた。


心の中でありがとうって言った。



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