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2019-20シーズンのビジャレアルCFを振り返る

2019-20シーズンのビジャレアルのレビューをずっと書いていたのですが、第32節を最後に更新できていませんでした。第32節のレビューを書いたのが7月4日。ここから怒涛の忙しさがやってきて、Jリーグのレビューと、月2回のnoteサークルと、HiVEの準備と(予定外の2セッション)、Podcast「帰るまぎわにつかまえて」の収録と編集、新しい仕事、本業の仕事などなど、目の前の作業をこなすことが精一杯で気がついたら7月が終わってました。

どうにかリーガ・エスパニョーラの試合は観ていたのですが、文章を書く気力と体力がなくシーズン終了。でも何も書かないとシーズンが終わらないので、シーズン終了の締めの挨拶を兼ねて、コラムを書きたいと思います。

2019-20シーズンのビジャレアルCFは18勝14敗6引き分け。勝ち点60を獲得し、5位でフィニッシュ。UEFAヨーロッパリーグの出場権を獲得しました。得点63は、FCバルセロナ、レアル・マドリーに次いでリーグ3位。18得点でスペイン人最多得点を記録したジェラール・モレノ、11得点を記録したカソルラの活躍が目につきましたが、僕はビジャレアルが5位でフィニッシュしたのは、彼ら2人以外の貢献度が高かったからだと思います。

チームMVPはラウル・アルビオル

特に貢献度が高いのは、DFのラウル・アルビオル、パウ・トーレスの2人です。2018-19シーズンのビジャレアルは中央のDFに問題をかかえていました。アルバロ、フネス・モリ、ビクトル・ルイスの3人は、背後のスペースへの対応が遅く、背後を気にするあまり、DFラインが自陣深くになってしまい、FWとの距離が遠くなってしまうという課題をかかえていました。この課題をラウル・アルビオルとパウ・トーレスの2人が解決してくれました。

僕はチームMVPを1人選べと言われたら、ラウル・アルビオルを選びます。190cmという身長に似合わず、過去にサイドのDFでプレーした経験もあるほどスピードも兼ねそなえた選手です。練習場でプレーを見たとき、アルビオルのスピードにびっくりしました。日本でプレーする中央のDFの大半の選手より、ラウル・アルビオルの方が速いです。

でも、ラウル・アルビオルは足が特別速くは見えません。それは判断が正確で、アクションにミスがないからです。バレンシア、レアル・マドリー、ナポリといったチームでプレーした実力を大いに発揮しました。中断後も第37節のレアル・マドリー戦を除いてフル出場した事実も、彼の貢献度を物語っています。

マンチェスター・シティのラポルタよりパウ・トーレスの方が凄い

パウ・トーレスは2019-20シーズン飛躍した選手です。ラウル・アルビオル同様に身長(192cm)とスピードを兼ね備えているだけでなく、左足の正確なパスという武器を持っている選手です。シーズン序盤は無駄なファウルが多かったのですが、試合を重ねる毎に慣れていき、シーズン終盤は相手を見下ろしてプレーしているようにも見えました。

左利きのDFとしては、マンチェスター・シティのラポルタの評価が高いですが、僕はラポルタよりパウ・トーレスの方が現時点でも上だと思います。2020-21シーズンビジャレアルにいるかは分かりませんが、アカデミーから経験を積み、ビジャレアル出身の、正真正銘のホームグロウン選手でもあるパウ・トーレスが、2020-21シーズンに、どこで、どんなプレーをするのか。とても楽しみです。

目立たないけどチームを支えたアセンホと"もう一人のモレノ"

ラウル・アルビオルとパウ・トーレスという2人が安定したパフォーマンスを披露したことで、GKのアセンホのプレーも高いレベルで安定するようになりました。2018-19シーズンはDFとの連携に苦労する場面もあり、2019-20シーズンの開幕戦は足元の技術に優れた他のGKがスターティングメンバーで出場したりもしましたが、試合を重ねる毎にシュートストップに定評があるアセンホが定着。ビジャレアルの上位進出に貢献しました。

ビジャレアルの「もう1人のモレノ」アルベルト・モレノも素晴らしいパフォーマンスを披露しました。リバプールではロバートソンの控えに甘んじたため「終わった選手」という扱いをしていたファンもいたかもしれませんが、ビジャレアル加入後は怪我で戦列を離れた期間もありましたが、アグレッシブなボールを奪うアクションでチームに貢献しました。左MFのカソルラの活躍は左DFのモレノのおかげでもあると思います。

センターラインの安定がチームの高パフォーマンスを生む

2018-19シーズンに残留争いに巻き込まれたビジャレアルが残留できたのは、シーズン途中にチームに加入したイボーラのおかげでした。イボーラの加入でセンターラインを越えるまでのプレーがスムーズになり、相手にセンターラインをスムーズに越えさせないようになりました。イボーラと共に貢献したのが、カメルーン代表のアンギサ。シーズン終盤はイボーラよりアンギサの方が主軸となって起用されていたほどでした。

GK、中央のDF、中央のMF、中央のFWというのがチームの中心というのは、サッカーがどんなに進化しても変わりません。2019-20シーズンのビジャレアルはここが高いレベルで安定していました。

中央のFWはジェラール・モレノが中心、と思う人が多いかもしれませんが、僕はビジャレアルの中央のFWはパコ・アルカセルがファーストチョイスだと思います。パコ・アルカセルの凄さは、ボールを持っていないときのアクションです。常に相手の視野から消える位置を探し、相手の背後を狙って動き続け、ボールを扱う技術も正確。ボールを持っていないときは、自分のスキルをチームのために活用できる選手です。パコ・アルカセルほどボールがないときのアクションで味方を助けるFWを見たのは久しぶりで、練習中もパコ・アルカセルとカソルラばかり見ていたのを思い出します。

カジェハの姿から感じた監督業の辛さ

最後に2019-20シーズン限りで退任することになったカジェハについてもコメントしておきたいと思います。2018-19シーズンの序盤のカジェハは、4-4-2のチームオーガニゼーションを採用しつつも、サイドのMFをぐっと中央に寄せ、中央からボールを運んで相手を攻略するサッカーを志向していましたが、そのサッカーをやるにはメンバーのレベルが釣り合ってなかったと思います。シーズン途中に解任され、改めて就任した後は、5-3-2でボールを奪いにいくタイミングを整理し、チームを立て直しました。

2019-20シーズンのカジェハは、特別なことはあまりやっていませんでしたが、特別なことをやってなかったが故に、カジェハの影響が強いチームではなかったのではないかと思います。僕は2019年1月からチームに加わったキケ・アルバレスの影響が強いチームだったのではないかと思っています。でなければ、選手交代であれだけ勝ち点を失った監督が、急に選手交代が上手くなるわけないからです。

ただ、2019-20シーズンのカジェハは、前のシーズンよりよい成績を収めているのに、試合を重ねる毎に老けていったようにも見えました。カジェハの姿を見ながら、監督という仕事がいかに激烈な仕事なのか思い知らされました。

シーズンを振り返っていて無視できないのは、2020年2月にビジャレアルに行ったことです。練習を見学し、試合を観て、レバンテUDのセルジオ・ナバーロと話した時間がとても活きています。また、ビジャレアルの佐伯さんとは現地でお話するだけでなく、イベントでもお話を聞く機会がありました。

2018-19シーズンから2年間続けてきたビジャレアルのレビューですが、このタイミングで一区切りしたいと思いますが、ビジャレアルの試合はこれからも観ると思います。今後のビジャレアルが楽しみです。



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