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「まるでコスメのような生理用品」世界的デザイナーのアナ・スイ氏が日本の女性に贈るメッセージ

「やっと時代が進展したと感じました。私たちは長い間、挑戦してきましたが、女性の日常生活をサポートしてくれる生理用品ができたことを嬉しく思っています」ANNA SUIデザイナー / アナ・スイ

まるでコスメのような生理用品が誕生した。

これなら化粧ポーチに入れて持ち歩いても、そのまま手に持ちトイレに向かってもいい。
ローズとイランイランのモチーフをあしらった個包装に、心がときめく。

「ソフィ®センターインコンパクト1/2」と大人気のファッションコスメブランド「ANNA SUI」がコラボレーションしたパッケージの第2弾が、11月に数量限定で発売された。(※第1弾は2021年4月に数量限定で発売

ANNA SUIは、アナ・スイ氏が自らの名前を冠してアメリカ・ニューヨークで設立したファッション コスメ ブランドで、30か国を超える国で販売され、世界中にファンを持つ。

アナ・スイ氏は、今回のコラボレーションについて、「第1弾の素晴らしい反響により、第2弾につながったことをとても嬉しく感じています。ファッションアイテムではなく、生理用品という必需品で女性に喜んでいただけたことを、非常に誇りに感じています」とコメントを寄せた。

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今回は、コロナ禍に実現したこのコラボが誕生したストーリーや、#NoBagForMe プロジェクトの活動にも通じる、生理用品を通じて届けたいメッセージについて、ニューヨークのアナ・スイ氏にメールインタビューした内容と、ANNA SUI JAPAN 広報でm&associates代表の遠藤美和さんの言葉と併せて紹介したい。

「おしゃれで可愛い生理用品を」ANNA SUIとソフィが組んだ理由


アナ・スイ氏は1970年代、アメリカ・ニューヨークの強烈なカルチャーアンダーグラウンドシーンに進出。ファッション、写真、アート、音楽、デザインの世界において存在感を示し、1980年に「ANNA SUI」を設立し、長年に渡って世界中に愛されるブランドを創り上げてきた。南西部デトロイトに生まれた中国系アメリカ人としても、彼女の華々しいキャリアは、“アメリカンドリームの実現”とも評されている。

世界的に活躍するアナ・スイ氏は、日本の生理用品ブランドである「ソフィ」との今回のコラボレーションについて、「とても期待していた」と力を込める。

このコラボレーションのきっかけは、世界中でコロナ禍が広がりつつあった2020年春にさかのぼる。

最初にコラボレーションを提案したANNA SUI JAPAN 広報の遠藤さんは、かねてから猫柄のデザインが特徴の「ソフィ センターイン ハッピーキャッチ」を愛用しており、「使うたびに猫のデザインが見えて幸せな気持ちになれたんです。猫もブランドのアイコンモチーフであるANNA SUIと、コラボレーションができたらと思いました」と発想のきっかけを話す。

もっとおしゃれで可愛い生理用品があればいいなと思っていました。ソフィとANNA SUI とのコラボによって、面倒や憂うつに感じる生理で気持ちが塞ぐ日々も、ワクワクした日々になるのでは?とコロナ禍のステイホーム中に思いました」

母世代から娘世代へ――。世代を超えて愛されているANNA SUIブランドは、ソフィにとっても生理用品の目指すべき姿でもあった。これまで生理用品の世界では、コスメブランドとのコラボレーションは難しいものとされてきた。だからこそ、ソフィにとってもANNA SUIサイドからの提案はうれしい驚きだったという。

こうしてソフィとANNA SUIは、「まるでコスメのような生理用品」の実現を目指して、タッグを組むことになったのだ。

ローズのデザインと上品な香り、コスメのような生理用品の誕生


第1弾の好評を受けてパワーアップした第2弾でも、アナ・スイ氏監修のもとデザインにこだわり、香りも一新。パッケージだけでなく個包装のデザインも、ANNA SUIの世界観が表現されているのが特徴だ。

ソフィから提案されたデザイン案を一目見て、その完成度にアナ・スイ氏も感激したという。

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紫の蝶が舞うパッケージには、ANNA SUIブランドを象徴するローズをモチーフに、ステンドグラスのように、花の部分から少し個包装が透けて見えるデザインに仕上がっている。

個包装にも、ローズのモチーフをあしらいながら、イランイランの花の色を混ぜて華やかな印象の生理用品に。生理中でも気持ちが上がるように、まるでコスメのようなデザインを心がけたという。

さらに香りは、落ち着いたジャスミンやローズの香りに、イランイランとシトラスの香りをブレンド。アナ・スイ氏の監修により上品で贅沢な香りを実現した。

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実用的な生理用品が、魅力的なアイテムに変わることで、生理の期間を「より楽しい気分で過ごすことができる」とアナ・スイ氏は語る。

実際に、第1弾の反響として「ポーチにいれなくていい」「見せびらかしたい生理用品」「ハンカチっぽいデザイン」などの声が多く届いたという。美容室のトイレにも置かれたそうだ。生理用品は、実用品の枠を超えて、日常に染み出すおしゃれなアイテムとして支持されたことが伝わってくる。

遠藤さんは、今回のコラボレーションを通じて、「愛され続けるブランドANNA SUIがワンコインで買えるアイテムとなり、より多くの女性が手に取ってくれたら良いなと思いました」とふり返る。

アナ・スイ氏にとっても、ファッションアイテムではなく生理用品を通じて、女性たちの日常のシーンを変える挑戦は、大きな喜びになったようだ。

やっと時代が進展したと感じました。私たちは長い間、挑戦してきましたが、女性の日常生活をサポートしてくれる生理用品ができたことを嬉しく思っています

ANNA SUIが次世代の女性に贈るメッセージ


「話そう。知ろう。生理のこと」を掲げる、#NoBagForMe プロジェクト。日本ではまだまだ性教育や生理への理解は道半ばであるが、アナ・スイ氏もまた、ジェンダー平等の実現の大切さをふまえたうえで、すべての人が生理を理解することの大切さを説いてくれた。

女性の生理の大変さをみんなが知ることで、ストレスが軽減されると思います。意識することが理解につながります

そして遠藤さんも、次世代の女性に届けたい個人的な思いを打ち明けてくれた。

「ちょっと憂鬱な生理期間ですが、若い子たちには生理は愛おしいもの、誇らしいことだと思ってもらいたい。恥ずかしいことや面倒なことではない、誇りを持ってほしいと伝えたい。ワクワクする生理用品で、生理の日も少しでもおしゃれに、楽しい気分で過ごしてもらえたらと思います」

先輩世代からの温かいエールが沁みる。

ANNA SUIとソフィとのコラボレーションの架け橋になった遠藤さんの思い。アナ・スイ氏もまたその思いに共感したという。生理用品は、文化や世代を超えて女性をつなぐキーアイテムになりえるのだと気づかされる。

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世界を切り拓いたアジア系女性デザイナーの贈りもの


小さい頃、自分のベッドルームを「バービー」一色の世界に仕立て、10歳の頃にはクローゼットの中までホットピンク一色に塗り替えた少女は、ニューヨークで初めて住んだアパートメントではヒョウ柄、黒、赤の空間を創り上げた。

アナ・スイ氏は、あの頃と変わらぬ夢を追い続けて、世界で活躍するファッションデザイナーのひとりになった。ニューヨークのファッション界は、長らく白人の男性が活躍する世界だった。1980年代、アジア系の女性が成功するのは並大抵のことではない。アナ・スイ氏は、その歩みをこうふり返る。

「ひたすら自分の夢を見つめ続けることが大事。それが常識外れなものだとしても。そうでなければ、デトロイトの郊外から来た若い女の子がニューヨークで成功をつかむことなんてできなかったでしょう。この夢が私を支えてくれました」

ANNA SUIの躍進は、90年代の日本上陸ともリンクしており、アナ・スイ氏は日本には特別な思いがあるという。最後に、コロナ禍の日本のファンにエールを贈ってくれた。

ANNA SUIファンのみなさんに早くお会いできる日を楽しみにしています。私たちはこの困難な時期を通し、すべての素晴らしい経験を家族や友人たちと共有できることに心から感謝します

コロナ禍に誕生した「まるでコスメのような生理用品」は、アナ・スイ氏から日本の女性たちに届いたギフトといえるかもしれない。

(ライター:笹川ねこ 写真:クロカワリュート)

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