見出し画像

ライブ告知アオリ 【宙の抜け殻 其之参】(2024年1月4日、「阿佐ヶ谷天」)

act:
Lei Abe (voice)
cixa (voice, move)
高橋直康 (Naoyasu Takahashi) (electric bass)
山田邦喜 (Kuniyoshi Yamada) (drums)

v.s.

多田葉子 (Yoko Tada) (reeds and more)
Nira (electric guitar)
チェロしおり (Cello Shiori) (electric cello)
tsubatics (electric bass)
清水亮司 (Ryoji Shimizu) (drums)

下段のメンバーは私が依頼して出演してもらうプレイヤーです。上段は山田氏の編成したユニット?です。ライブの企画は山田さん。アンダーグラウンドの俊英・新鋭たちが集結! といっても皆さん知らないので紹介していきます。

まずはtsubaticsさん。エレクトリック・ベースというのはとかく妙味の薄い楽器なのだが、どうやってその限界を突破するか。彼はエフェクターを駆使するというよりは、鍛えあげた手業で弾き倒すという正統派タイプ。出演形態によってギターの種類を使い分けるというクレバーさもありますが、とにかく、指の動きが速い! 最速時には人体の極限に挑む嵐のようなプレイを見せる。それもジャコ・パスとかスタンリー・クラークみたいな中身のない速弾きではない。音楽の内部に深く入り込んでいる人にしかできない探究的なプレイだ。ハーモニクスの使い方やリズムの交錯も面白い。いくつかのタイプの異なるバンドでベーシストを任されるなど、音楽経験は幅広いが、基本的に「ファンキー」ではなくサイケデリックなロックのベースですね。彼は即興でのソロを定期的にやっており、即興をもっと深く掘っていこうという姿勢がうかがえる。その先にどんな音楽があり得るのか、可能性を見せてもらいたいと思います。

続いてはドラムの清水亮司さん。即興シーンで活躍していたのだが、最近まったく動向を聞かないので、彼をもう一度「前線」に引っ張り出したいなというのが第二の動機だ。私の企画にも何度も出てもらっている。彼の演奏はフリージャズ系ということになるのだが、その手法を駆使しながらロック系の奏者とも見事に共演を成立させている。相手の音に対する反応の素早さと、その「返し」のアイデアが豊富ですね。タイミングをずらしながら全体としては乗せていくというリズムの遊ばせ方が心地よく、なかなかこういう芸当はできないです。柔軟性とパワーを兼ね備え、間合いの伸縮などにより、共演者のインスピレーションを刺激するプレイだ。彼のような逸材を活かしてこそ即興シーンの発展もあると思うのだが、いかがでしょうか。

でかい帽子がトレード・マーク、ギターのNiraさん。通常はgoizon(ゴイゾン)というバンドを率いている。リズムにタメがあり、しかも出てくる音にはキレがある。また、音色の使い分けが豊富ですよね。彼は奏法の切り替えが早く、ソリッドだったり、浮遊感があったり、激しかったり抒情的だったりと、まさに変幻自在。どこで何をぶつけてくるのか、その判断力が優れている。音の緩急や清濁を変則的に組み合わせることで、聴覚への遠近法を使うのが面白いネ。弦を揺蕩う指が紡ぎだすその感触は切子細工のようにカラフルで、サイケだ。こういう他流試合的なセッションはそんなにやらないらしいので、今度のライブはレアだよ。

もう一人ギタリストを入れようかなと思ったのだが、都合が付かなかったので、じゃあかねてから存在が気になっていたエレクトリック・チェロの「チェロしおり」さんに頼むことにした。撥弦楽器に対して擦弦楽器もあったほうがいいだろうと。プログレみたいでかっこいいし。彼女の本領はあくまで木製のチェロだが、ドラムがある場合はエレキのチェロでないと胴体が鳴ってしまって無理らしいのです。「NA/DA」というロック・バンドを中心に活動中で、爆音のドラムや打ち込みと共演しているので音量問題は何とかなるだろう。チェロは十分にうまいのだが、じつは、彼女が即興をどれくらいできるかは未知数。「oriental force」(高円寺)で見たソロはあくまで調性の範囲内の演奏で、カザルスの「鳥の歌」とかを援用していた。「とうきょうたわん」というバンドではさまざまな特殊奏法も使っていてかなり良かったのだが、それは生チェロだった。したがって彼女は今回の不確定要素です。しかし本人は100%自信満々で、他の出演者が所属しているキヤス・オーケストラやゴイゾンの音楽も知っているそうなので、それならぜひとお願いした。即興というシチュエーションで歴戦の猛者相手にどこまでやれるのか、お手並み拝見です。ハードな音ばかりだと疲れるので、こういう優美な音もあったほうがふくらみがあっていいだろう。既存の即興とはまた異なった角度からのアプローチを期待したい。

最後はサックスの多田葉子さん。彼女は梅津和時の「こまっちゃクレズマ」というメジャーなバンドに長年いる一方、アンダーグラウンドなライブハウスで自己のリーダーバンドを含めいろんなタイプの音楽もやっていて、その中には本当にアヴァンギャルドな即興もある、という貴重な存在。女性のサックス奏者としては本邦の草分けとも言え、それも純粋なジャズとは異なる系譜から出てきた変わり種。すでにベテランといっていいキャリアだが、音楽性に深みと統一感をあたえるために、今回あえて加わってもらいました。アルト、ソプラノ、テナーの各サックスに加え、クラリネット、バス・クラリネット、フルートなど、どれも自由自在に操り水準以上の腕前を見せる、超マルチ・プレイヤー。彼女の演奏はとにかくトーンが澄んでいて美しく、クレズマー由来のこぶしのきいたメロディアスな演奏から、断片化したフレーズをシャッフルしたようなトリッキーなプレイまで振幅が広く、そこはかとなくとぼけたセンスも感じられ、やはり梅津和時の強い影響をうかがわせるが、よりオリジナリティが高い。サックスで吹きまくらずに抑制を効かせて、熟慮の上で奇抜な演奏ができる人は珍しい。今回のようなアヴァンギャルドなロック系の、かつ下の世代のプレイヤーとの共演は貴重だ。

対します山田邦喜さんのユニットは下記リンクの通り。ドラムがあらゆる局面でひっぱっていく。高橋直康さんのスペーシーなベースが渋くサポート。声楽の基礎があるとおぼしきアベレイさんのボイスに、よりエキセントリックな千草さんのボイスが絡みつつ身体表現も見せるという、かなりストレンジな編成なのだが、さすが即興ドラムの鬼! 山田さんの組み立てが巧みで、展開に起伏が感じられる。この日は高橋さんの調子が今一つで動きが少なかったが、次はもっとうねらせてくるでしょうね。1月14日、「阿佐ヶ谷天」で勝負! https://youtu.be/aMafn7A2X5k?si=_9OnVMk-yEBhyRRN


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?