見出し画像

「終身雇用見直し」の時代に考えるべきこと

トヨタの豊田社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言したことが話題になっていた。

ここ20年で業績不振に陥った日本企業が大規模なリストラを実施している事実からしても、「終身雇用」を全ての人に保証することが難しいのはすでに周知なのだけれど、トヨタのトップがこのことに触れたインパクトは大きい。

一方で「終身雇用の維持は難しい」となった時に、日本企業で人事制度をメンバーシップ型からジョブ型に変える動きが本格化するか、というのが実は一番重要な論点になると考えている。

経営陣がその制度変革が重要であることを認識していなかったり、抵抗勢力の反発などでそれが骨抜きされて中途半端になると、社員のキャリアパスは変わらずジェネラリスト育成型で報酬も年功型のままなのに、リストラの可能性だけ上がるいびつなモデルになりそうで心配している。

すごく難しいのは、今までの社員がジェネラリスト型で特定の領域のスペシャリストとして育成されてきていない時に、仕事の役割を明確に定義してその職能に報酬を払うジョブ型にどう「移行」するかというところ。両者の混在がうまくいくとは思えないけれど、いきなり変えて既存社員がついてこれるのか、という問題は残る。

この「既存社員が変革についてこれるのか?」というのは、日本型組織だと必ず出てくる批判で、それを受け入れて折衷的な人事制度にして、結果的に年功型で報酬はなかなか上がらないのにリストラ確率だけ上がる制度になり、ただでさえ低い日本企業の従業員のエンゲージメントがさらに下がっていくリスクは高い。

さらにこの問題を働く側から考えてみると、その本質は、特定の職能における専門性が求められる「ジョブ型」にいかに対応していけるか、という話になる。

なので、そこを見誤って単純に「終身雇用でなくなるから副業を頑張ろう」というのはあまり良い手とは言えないところがポイント。

それよりはまず地道にマーケや人事といった特定の職能のプロとして経験を積み、市場で差別化できるスキルを身につけていくのが王道になる。ネットでは目立つ変なノイズに惑わされないのが大切。

煎じ詰めると我々は労働市場で自分のスキルを売る「商品」なわけで、その商品としての魅力を高めるのが何よりも先決。この傾向は専門性が問われる労働市場ではさらに顕著になっていくので、この変化の本質を掴むことが求められる。

まず「売れる」人材になって、プロとして「ブランド」を築いておけば、そこからは副業的なこともやりやすくなるし。なのでニッチでもいいから特定の職能のプロになるのが大切かなと思う。

【参考記事】
欧米のジョブ型雇用と日本のメンバーシップ型雇用の違いってなに?

ここから先は

0字

雑感

¥800 / 月

日々考えていることを書いています

記事を楽しんでいただけたでしょうか。シェアいただけたらとても嬉しいです。