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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2018年8月の記事一覧

大学で悶々としているあなたへ

こんなはずじゃなかった、と思っているかもしれない。 大学というのはもっと華やかで楽しげで、友だちが100人くらいできて、彼氏とか彼女がとなりにいて、それはそれは人生の夏休みかのような世界が広がっていると思っていたかもしれない。 けれどもちろん、現実は甘くない。ユートピアは存在しない。大学に入ってから、その事実にボコボコに打ちのめされた人がいるのではないかと想像する。もしかしたら、そんなバカな人間は、僕ひとりだけなのかもしれない。 僕は短期の猛烈な受験勉強を経て、奇跡的に

カシタンが教えてくれたしあわせ

結婚式は、二度挙げた。 1回目は日本で、2回目は義理の兄家族が赴任していたチェコ、プラハで。 互いの両親を引き連れての、大人数での旅は、一生忘れられない思い出になった。いつかまた、その時のことは 別で綴ってみたいと思っている。 チェコから持ち帰った、一番のお土産といえば、カシタンにまつわるお話だ。 チェコ語でカシタンという、マロニエの実。 ポケットの中に入れておくと、しあわせになれるのだそう。 「カシタンGETで、元気100倍!」と 駆け出していった、4歳の姪っ子が

そんなところで主張しないでほしかった

頰の下あたりにシミが出来始めているのに気付いたのは、次男を出産してからのことだった。 「うわ」 薄っすらとしたシミに、思わず心の中で声を上げる。当時、まだ20代。シミの存在がショックだったこともある。でも、それだけではなかった。 わたしの母親には、まったく同じ箇所にシミがある。現れたきっかけは知らない。いつからそこに鎮座しているのかも知らない。だけど、わたしのシミとまったく同じ位置に、同じような形のシミがある。 鼻の上、目に近い部分には、いつかはっきり現れるのだろうな

〇〇は清潔? (知念実希人の蛇足カルテ)

医療の世界には、一般的な感覚とは大きくかけ離れた常識があったります。その代表的なものの一つが『清潔』の定義です。 皆さんにとって『清潔』という言葉はどういう意味ですか? 汚れがない綺麗な状態のこと? はい、それで正解です。 けれど医療界ではちょっと違っていて、『清潔』とは『病原体がいないこと』と定義されています。 つまり、手術などで外科医が『手を清潔にする』と言えば、『消毒薬で手に付着している微生物を殺菌する』という意味なんです。 そうすれば、手術を受ける患者さん

運命論があるならば

運命の赤い糸が小指に結ばれていて、つたっていけばいつかその人に出会える。そんな迷信はどこで知ったのだろう。 運命とは往々にしてあらかじめ決められていることを指す。もちろん、大人になると大抵のことは「結果」にすぎないこともよくわかる。 でも何かに迷った時に「運命」は「これは決まっていたことだから」と自分を納得させる強制力を持つ。起こるべくして起きた「必然」よりも、「運命」はもっと強く人生に作用するからだ。 *** その日は廊下に漂う空気が変だった。14年経った今でもよく

【こよみごと 葉月】 番外編 百鬼夜行の妖怪たち ひゃっきやぎょうのようかいたち

今週は夏の番外編としてひと涼み。 現代ではエアコンがあるので夏も快適に過ごせるようになりましたが、エアコンのなかった時代、寝苦しい夏の夜にはお化けの話をして、さむい気持ちになって遊んだようです。 妖怪とは心の不安や恐れなどによって生まれたもので「妖」も「怪」もあやしいという意味。江戸時代にはまとめて「ばけもの」と呼んでいたそうです。 百鬼夜行絵巻に描かれるお化けや不思議な生き物たちは、怖いというよりどことなくユーモラス。性格や喋り方を想像しながら見るのは楽しいものです。

ネガティブにもポジティブにも受け止められる言葉

「今度のサオリの結婚式、服どうしよう。私、この前リカの結婚式で着た服しかないんだよね。出席者かぶってるし、みんなから『また同じ服』って思われるよね?」 ミホは言う。26歳くらいのとき、第一次結婚式ラッシュがあり、彼女は頻繁にその言葉を口にした。 私は、「リカの結婚式であんたがどんな服着てたか覚えてないから大丈夫!」とこたえる。 「誰もあんたのこと、そんなに見てないよ」と。 するとミホは「そっかぁ、そうだよね~」とほっとした表情になる。安心して、新しい服を買うのをやめる

ぬいぐるみをもらってみたい

タリーズで抹茶フラペチーノみたいな飲み物を飲みながらぼんやりしていると、店内で売られているティディベアが目に留まった。 もふもふしていて可愛い。ティディベアをもらってみたい。ふとそんなことを思った。 彼氏にティディベアをもらったこととがある人は、この世に一体何人いるのだろう。 大体、ティディベアをあげる、なんて破廉恥な行為、はっきり言ってめちゃくちゃイケメンにしか許されない気がするじゃないか。 イギリス王室でも王位継承上位の男性しか許されそうもない甘すぎるプレゼン

迷惑な話。

“ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。”が昨日発売された。 Amazonでは一時的に品薄状態になっていて、値段を倍近くに釣り上げた業者が出品しているけど、今日増刷が決定したのですぐに解消されるとおもいます。 近所で流通している書店か電子版、Amazonで購入したい方は少しお待ちください。Amazonから出版社に大口で注文が入っているのですぐに解消されます。 プレミアがついて高くなるかも!!なんてことは絶対ないので早まらないで。 最初からもっと部数を刷れよって声も聞こ

にしかなこがあらわれた

ここ数日『まにまに』というエッセイ集を読んでいる。書いたのは、西加奈子さん。すすめてくれたのは、うちでアルバイトをしてくれているチャン・ワタシ(普段は本名にさん付けで呼んでいるが、この名はなんだか呼び捨てがしっくりくる)。 このエッセイがまあ、めちゃくちゃおもしろい。日常を観察するちょっとだけ意地の悪い視点と、それをユーモラスかつリズミカルに文章に落とす確かな筆力。そして、くさしても包む博愛。「女子トイレで顔を、かっ、くわっ! としながら化粧を直す女性への共感」、「雑誌の『

どこで食べるかはやっぱり大事だった

数年前、友人と日曜日の日本橋でお笑い系のライブを見に行ったことがあった。 ライブが終わったら一緒にご飯を食べることにしていたが、ライブの終了時間がわからず店の予約もできないので、近場でよさそうなところに入ろうということにしていた。 日曜日の夜9時近い日本橋は、閉まっている店が多かった。そのせいか、商業施設に入っている飲食店は軒並み満席だった。 ときどき食べに行っていた火鍋の店は開いていたが、わたしがどうにも火鍋の気分じゃないなどとわがままを言うものだから、わたしたちは夕食難

おじいちゃんに会いたいと思った話

note初めての投稿です。よろしくお願いします。 今朝家族で笑った。 大好きなおじいちゃんを思い出した。隣で笑ってる母には言えないけど、おじいちゃんにまた会いたいと思った。 思い出す、というのは、当然だけど、おじいちゃん、そしておじいちゃんとの経験がわたしの脳に記憶されているから、です。 では記憶って何だろう?どうしてふと、ある記憶の中にある人に会いたいと思うんだろう? 生物学でいうと、記憶の中枢は大脳と小脳にあります。 そして「陳述的記憶」つまり計算や感じなど頭

私が不登校だったときの母のこと

中学2年で不登校になったとき、母はなんとか私を学校に行かせようと必死だった。 叱責され、泣かれ、励まされ、抱きしめられ、無視される日々。 こういった母の態度は、不登校児の親として、満点のものではなかったと思う。 だけど、私は他人から母の対応を悪く言われると「うるさいやい!」と思う。 うまくいかない期間が長かったけど、母のことは大好きなのだ。

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ブラーフィクション #02  Blur Fiction #02

飲み疲れてボロボロになった帰り道、 繁華街に隣接してるのに人気のない高架下 ハザードを点滅させた一台のタクシー、 色は紺。 若い警官とタクシードライバー、 そして中年のスーツ姿の男が話している。 タクシーと客の喧嘩、そしてその仲裁を装い、 それぞれ手にはアイスピックを持っている。 ジャコウネコの香水を気化させ合流する深緑のドレスの女。 手には目を疑うほど磨き上げられた金槌。 僕はここに存在しないかのように 四人で進む世界。 スーツ男がトランクを開け、 中から取り出した大