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怪獣について

 ゴジラの新作公開が近いので怪獣の話をしましょう。怪獣とは、異形であることと考えています。
 一目で「異様だ」と分かる風体で、とても大きく、そして「恐ろしく」、それでいてカッコよくないといけない。良い怪獣はちゃんと怖い。こんなやつが街で暴れていたら怖い!けどカッコいい……という矛盾が童心をくすぐる。グロテスクで怖いはもちろん、シュールで怖い、無機質で怖いなども、ダダやキングジョーで描かれてきた多種多様な恐怖のバリエーションです。怖いのに、彼らの大暴れな様子を見る目が離せず、次第に愛らしく感じてしまう。


 闇の中から美しさを取り出す「ゴシック」に近しいものを感じます。大好きなヘドラは、一目で分かる毒々しい公害モチーフが恐ろしく、しかしこんな巨大な「毒」そのものが移動したらと想像するとワクワクしてしまう。おどろおどろしいフォルムに美を感じてしまう。
 彼らの悲哀が好きだ。
 怪獣は悲しい。彼らの巨大さはどうしても人類と分かり合えない。人間は対処不能な存在や理解できない者を排除する。ゆえに、彼らは怪獣退治の専門家に退治される。人間にも攻撃される。キングコングは美女に惚れてしまったばかりに人間に殺された。美女が野獣を殺した。分かり合えないから、理解できない畏怖の存在だからこそ、僕らはこんなにも惹かれてしまう。


 だから人間サイズにしても敵側……ヒーローというよりは怪人扱いなものたちを集め、飾ってしまう。「人間じゃない」「共存できる生物じゃない」彼らの悲哀が、孤独が彼らを黒く輝かせるのです。
 ゴジラシリーズはすべて追ってきましたが、やはりゴジラも災害であり人類の敵である方が好きだ。しかし、人類の敵と闘うヒーロー役のゴジラも好きだ。そもそもゴジラ自体が人間の身勝手な戦争の果てに生まれた悲劇のモンスターであるから。それでも意思疎通はできないため、完全に人間社会に馴染むことはないすれ違いも良い。明らかに地球を守る動きをするガメラに対し、人間たちが怪獣扱いできずに敬意を表して敬礼するシーンには感極まる。

 どんな怪獣だっていい。思う存分暴れ回って欲しい。人間の被害なんて考えず、悲しみも恐怖もひっくるめてあるがまま行動し、スクリーンの先で悠長に構える子供たちに恐怖と興奮を同時に植え付けてやるのだ。
 ゴジラとキングコングがまた何度目かの大暴れをしてくれる。彼らが暴れるだけで、それだけで大満足してしまう者がいる。早く二人に会いたい。まさか、ここにきて毎年ゴジラで盛り上がれる時代が訪れるとは。ウルトラシリーズも絶好調。ブレーザーも素晴らしかった。今の子供たちが羨ましい。世界は多くの魅力的な怪獣で溢れかえっている。

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