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病院情シス入社から退職までを振り返る

ついに退職まで残り4稼働日となりました。
毎日が怒涛のように過ぎ去った2年1ヶ月。
そんな記憶もいつか忘れてしまう気がするので、記憶が新しいうちに病院で起きた珍エピソードを交えて振り返っていきます。
病院情シスの仕事に興味がある方の参考になれば幸いです。

1.病院情シスに入ったきっかけ

知人が管理者を務めている病院から、「コロナがヤバいが、情シスもヤバい。助けてくれ」とSOSが入り、悩んだ挙句に入社を決めました。これまで営業職を10年程経験してきていて、全くの未経験分野で不安も大きかったのですが、キャリアの珍しさに魅力を感じていた部分もあります。入社当時はコロナ真っ只中でワクチンもない時期だったので、純粋に医療従事者の支援をしたい気持ちもありました。

2.入社2日目の大規模NW障害事件

入社2日目の朝8時頃、インターネットに繋がっているネットワーク全域で通信障害が発生しました。何が何だか意味が分からず、SE風なオーラを醸し出している2名の職員がpingを打ったり何かしている風ですが、状況は改善せず。パニック状態な上司は「PHSで呼ばれたから、あとは宜しく!」と丸投げしてどこかへ消えていきました。

とりあえず回線管理している本部の担当とルーターのベンダーに連絡するも、当然保守契約もないので即応はお断り、調べたらEOL済み製品、おまけに自前でネットワーク構築しているようで、ゼロベースでベンダー選定を開始。Cisco、富士通、アライド全社お断りで、唯一YAMAHAだけがNW構築を請け負っている販社を紹介してくれて、翌日アポを確保。

確かこんな感じの。

同時並行で、とりあえず同型番の新品ルーターをAmazonでポチり、業者来院のタイミングで怪しいルーターの設定情報をポーリングしてもらい再設定し、ようやく回線復活。一番挙動が怪しかったルーターがドンピシャの障害原因だったのがラッキーでした。そしてこの業者さんに何度もピンチを救われることになります…。そして何より、情シスになりたいと思うキッカケを作ってくれた存在になります。

3.ドラゴンクエストな日々

病院情シスの洗礼を受けながら、信じられる情報を頼りにヘルプデスク・IT機器の更新業務に奔走する日々な1年目でした。
病院の中を歩いていると、
「あらKさんちょうどいいところに….」
あらどうしたのと聞き返すと、
「実はこれ前から頼んでいた案件で….3年位前かしら」
こういった依頼が後を絶たず、1年目はPCの入れ替え作業中に、現場職員との思いもかけない情報からパワハラ事案が発覚したり、上司の課長Aが色々な依頼を闇に葬っていた事実が発覚しまくるのが常態化していました。
この組織に来て異常だなと思ったのは、「私は知らない」「私は聞いてない」と言えばフォローせずに案件ごと終了していしまうケースが結構あることでした。あと「この仕事やりたくないのでやりません」と平気で社員が言ってて、それがまかり通ってるところも不思議でした。
「ちょっと分からないんで、調べてみますね。」とかではなくて、「それはうちの部門の範疇ではないので知りません」的な感じで、部門ごとがかなり閉鎖的になっている実態があります。

おかげさまで、課長Aのクレームを聞かされながらシステム関係の依頼も拾っていくうちに、電子カルテ本体の仕組みも徐々に理解が深まり、気づけばサイバーセキュリティに関しては一番詳しくなりました。

日々勉強、勉強!

4.”ガバナンス”に発狂する脳外医師

PHSの後継サービスの導入が決まった時期の話で、入社2ヶ月目くらいの時期でした。同時にベンダーの提供する無償サブサービスの運用も決まりました。MRと医者の事前予約管理システムで、平たく言えばMRと医者の間に変な関係はないよ的なガバナンスを利かせていくためのものでした。

システム説明会当日、説明会の最後に某脳外医師が突然ブチ切れ始めました。彼の主張は、「この説明会の案内文(紙)の出し元が情報システム課になっている、システム課長ごときにガバナンス云々をいう権限はないはずで、院長名であるべき。それにガバナンスというが疑われるようなことは何も無いのにどういうことだ?」と凄んでいる感じでした。
医者は変な奴が多いんですが、この人もかなりクセ者でこの日はすぐに課長Aを呼んで事態の収拾に努めましたが甲斐なく、明らかな恫喝・パワハラ行為で管理者に通報する事案がありました…。

最終的には、ベンダーが納品直前になって仕様を満たせないことを開き直ってきて、管理者判断で契約打ち切りが決定。当然サブシステムの話も流れることになりました。説明会の苦労は一体….。

5.怪しい魔法使い達

この組織には魔法の言葉があります。
「私は知らない。」
「私は聞いていない。」
もし新入職員が居たとしたら、職員から問い合わせがあったらこの二言を覚えておくことを勧めます。転職できなくなるけども(色んな意味で。)
一部お示しできる範囲のエピソードをまとめます。

・電子カルテの共有NASにファイルを入れすぎると電子カルテが動かなくなるので、ファイルを置くのは止めましょう。
・デスクトップはACアダプタのついているものにしましょう、消費電力がおさえられます。
・電カルサーバーは、年に1回再起動しましょう。バグが取れてより早く動きます。
・レーザープリンターは早くて綺麗です。とても環境にも優しいです。
・電カル端末はベンダーしか直せません、1回3.5万-10万円です。

これらの事象は、ベンダーや色々な調査の結果、ウソであることが判明しました。こうした偽情報に騙されている職員が非常に多いことに驚かされると同時に、こういった情報を流布する情シス担当者を軽蔑しました。実は裏側でこんなことが起きていました。

1.NASファイルに入れられず、業務用ファイルをUSBに入れたいが上司OK取るための資料作成する時間もなく、私物USBでファイル移動していたらウィルス感染。
2.サーバー再起動のための保守費に加え、ベンダーからは老朽化が理由で再稼働できなくなるリスクもあるとの情報。
3.プリンター故障が頻発しているが、修理の原則があるので新品購入はNG。たとえ修理費>新品だとしても修理!修理!!!

未だに魔法にかけられている職員にたまに会いますが、こうしたことを改善した結果、在籍期間中でおよそ1500万円程度の費用削減が実現できました。


闇が深すぎてダンブルドアが10人くらい必要です。

6.旧解剖室でロンリーキッティング

都心にあることもあって、この病院は本当に場所がありません。
場所が無いので、霊安室の横にある旧解剖室が倉庫代わりになっていたので、そこで3ヶ月くらい一人でキッティングをしていました。
Windows10PCは100台ほど、EPSONのプリンターは80台ほど。
霊安室を通らないと入れないので、患者さんの葬儀のタイミングを外さないと作業が出来ないのが不便でしたが、初めてご遺体が目に入ってしまったときは、大変驚いたものです。
たまに霊安室の方から物音がしたりするので、夏でも涼しく過ごすことが出来ました。
病理の検体が沢山あったりしたので、まさかプレートから漏れないよな、、、とか最初は色々考えていましたが、考えることをやめました。

霊安室・解剖室は本当にほこりっぽくて、あまりいい環境ではなかったので、天気のいい涼しい日なんかは少しでも換気してあげようと思って、ドアを開けっぱなしにして作業する日もありました。ご遺体はしっかり冷蔵庫なので、風を感じることはないんですが、少しでもフレッシュな空気が届けばいいなと思ってみたりしたものです。

棺桶に出荷先伝票みたいなのが貼ってあって、行先は天国…とは書いてませんでした。

7.業務命令無視常習犯な課長A

「私は知らない」攻撃で存亡を図っていた課長Aですが、ついに複数の管理者からクレームが頻発してしまい、部長命令でタスク管理アプリの導入が決まりました。

普段はノートで案件管理しているようで、
K「それで業務抜けてないんですか?」
課長A「何を言ってるんだ!業務が抜けているわけがないだろう!!」
K「案件AとBってどうなってますか?」
課長A「・・・・。」
K「案件CとDってどうですか?」
課長A「・・・・私は知らない。」

こんな事が常態化していたので、とりあえず試験的にタスク管理アプリをいれて改善していきましょう(もちろん管理者も閲覧可)、がスタートしてもう1年半ですが、結局彼がタスクを入力することはありませんでした。どうしてやらないんですか?と問うと、
課長A「どうして私だけが部長に監視されないといけないんだ!!」
と怒り出す始末。

これ以降、課長Aと話すことはほぼ無くなり、私は事務長含む管理者と直接業務を進めていくことになりました。

8.突然の病院卒業、情シスの道へ

なにかやらかしたわけでは無いのですが、情シスに引っ張ってきた知人の退職に伴い、私も退職することになりました。やっと富士山3合目くらいまで来た感覚でしたが、通勤が辛いこと、子供が生まれたことで転職を決めました。
本当に大変な毎日でしたが、その分得られた経験は過去一番大きいと感じましたし、何より情シスという仕事を楽しめている自分がいました。今まで資格なんて取ったことは無かったんですが、昨年末、情報セキュリティマネジメント試験に一発合格できました…!!
この資格のおかげもあって、昨年12月から活動を本格的に初めて、2月上旬に次の職場が決まりました。リモートワークにも積極的で、平均年齢が60→22歳なので、今度は私が高齢者枠に入りそうでビビっています…。

表彰状もらえるのは嬉しい!

9.おわりに

本当に色々あった病院人生でしたが、これがなければ営業→情シスへのキャリアチェンジは無かったろうと思います。色々と思う所が無いわけでも無いですが、それは大体どこの職場にもある話で、今は4月からの新生活に備えて体調を整えていこうと思います。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

そろそろ趣味のロードバイクも復活…!?

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