[映像評]SUGA / Road to D-DAY feat.坂本龍一

 BTSのラッパー、シュガ(SUGA)がソロ・アルバムを完成させるまでの過程を描いたドキュメンタリー。アメリカ各地や韓国などを旅してスティーヴ・アオキ、ホールジー、アンダーソン・パークなどの友人たちを訪ね歩き、セッションして音を重ね、飲んだり遊んだりしてヒントやエネルギーをもらいながらアルバムを作り上げていくという一種のロードムーヴィーでもある。決してイケイケではなく、内向的で悩みがちなシュガの内面が率直に吐露されるあたりが見応えあるが、やはり最も興味深いのが、シュガが少年時代から憧れ影響を受けてきた坂本龍一を東京まで訪ねるくだりだ。2022年9月30日というから、死の半年前。例のPlaying The Pianoの収録時期も同じころだったはずで、もしかしたら少し後の撮影かもしれない。

 緊張気味のシュガの話を静かに聞き、質問に答え、彼の書く歌詞に共感し、若い頃の思い出話で和ませ、緊張のあまり間違えまくるシュガのピアノ演奏をにこやかに見守り、そして最後は彼のために戦メリまで弾いてみせる。もしかしたら、教授にとって他人に聞かせるための演奏はこれが生涯最後だったかもしれない。それは、オレのあとは頼むぞ、という教授のメッセージのように見えた。シュガはメチャクチャ重いものを受け取った気分かも知れないが、そうして後を託された後輩たちによって、教授の音楽やスピリットはこれからも受け継がれていくのだろう。

 ということで、BTSファンだけでなく坂本龍一ファンもぜひ。正直、かなり泣けます。これを見るためにディズニー+入ったけど正解だった。シュガのアルバムの教授参加曲「Snooze」も良い曲ですよ。

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