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おりおりいっぴつ #051 (人が望む、風)

時は風化を助け

人は風流を望む


時間というものは、地球上のほとんどを腐食させ、塵や砂に変えていきます。

科学的に加工し、永遠に輝き続けるように見える金属ですら、人がいなくなればそれは磨かれませんから、徐々に茶色くなっていきます。

もともと新品だったものの色が次第に変わり、誰も使わなくなり、そしてどんどん小さくなって、壊れていく様を見るたびに、人は切ない思いを胸に抱きます。

その切なさを人の人生になぞらえて考えると、今を生きているこの時間こそが、感謝の極地であることに気づくのです。

八幡様は、言います。

八幡様:「人の命は、やがて終わります。終わった後に、生前、こう思います。

  • もっとやっておけばよかった。

  • もっと見ておけばよかった。

  • もっと会っておけばよかった。

  • もっと勉強しておけばよかった。

  • もっと楽しんでおいたらよかった。

  • もっと積極的になればよかった。

  • もっとあの人を愛すればよかった。

こうやって、自分が生きた過去を悔やんでいきます。悔やまない人はほとんどいません。何かしら皆、心残りを持って旅立っていきます」

そして八幡様は、僕に尋ねます。お前も死んだら後悔するか? と。

僕:「後悔しないようにもちろん生きたいですけれど、きっと何かしら思い残すことはあるんだろうなぁと思いつつ・・・でもたぶん、後悔しないかも!」

曖昧で適当な僕の答えにも八幡様は顔色ひとつ変えず、なぜそう思うのかを聞いてきます。

僕:「だって、後悔したくないもんですもん!」

と、問い詰められて焦っているのでやや文法もおかしくなっている答えにも八幡様は動じず、方向修正して質問します。

後悔したくないから、どうするのかと。

僕:「それは・・・今を楽しむことだけです。昔のことをどんなに考えても、時間は戻ってきません。先のことを考えても気持ちが重くなっちゃいます。だから、今を後悔しないように生きていけば、死ぬ時に後悔のかけらも残ってないと思います」

そう断言して初めて八幡様は、新しい質問を投げかけます。

風という文字に一文字足して、人の心が望むことを3つ出しなさい。

僕は答えます。そんなの簡単です。

  1. 風景

  2. 風雲

  3. 風流

この3つを挙げた時、なんとも言えず不思議な感覚になったので、僕は逆に質問しました。

僕:「人が望むことって、いままさに窓から入ってくる、優しい風のようなものなんですね?」

八幡様は答えてくださいました。

八幡様:「人は、たとえ砂漠でも、廃墟でも、ゴミ山ですら、そこに美しさを探します。どんな風景をも、自らの美意識に照らし合わせ、許すことができるのです。

もし、近い未来に風雲急を告げる恐ろしい事態に陥いる予感があったとしても、なおさら目の前の風情がたまらなく愛おしくなります。

人が望む風は、今そこにある事象の幸福感です。風鈴が風に鳴る音を聞きながら、それを風流だと感じられる自分を慈しめばよいのです」

僕はこう思います。

人はやがて滅びる身体ですが、老いていく自分の今の状態を愛でながら生きるしかありません。それを風化とみるか、風格とみるかで、輝きが変わるのだと。

ですからみなさん、今。この一瞬を楽しんでください。時がもたらすものは、素敵なあなたの魅力です。

あなたに、今日も幸あれ。


<PS>

つむじ風のような旅をしました。

レビューは僕の永遠の家宝です。

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