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形ない家族と私

ろ子
2001年生まれ
19歳から本格的に被写体として活動し、現像屋やギャラリーで働きながら写真の知識を身につけ、現在は写真屋でアルバイトしています。

好きなことは写真と銭湯
好きな食べ物はアイス
何者でもないただ表現が好きな人間です。
自己紹介はこんなところで、今回は自分の家族を題材にしました。
ナダールさんの『目指せ個展』惜しくも賞は頂けませんでしたが、自分の作品を気に入っています。
この展示が終わってすぐ用事で実家へ帰宅しました。父と連絡をとっていたのですが、初めて『気をつけて来いよ』とLINEを貰い背筋が凍りました。
帰宅してすぐ父の所へ行くと、自慢げな顔で『見ろ!いつ帰ってきても良いように片付けておかなきゃな。』と言い掃除をしていました。
人間変わるモンだな…
相変わらず声が大きく口が悪く、すぐイライラしてしまう父でしたが、父に心が出来たようでなんだか嬉しかったです

展示の内容、私自身のこと何も話していない中
そうして年老いた父を見ると喜びと悲しみと窮屈で退屈な懐かしい心が締め付けられました。

日々変わる人間の面白さ
この作品は変わる前のもの

そう、実家は嫌な匂いが漂う冷たい洞窟



家庭が崩壊してから5人掛けのテーブルで楽しく食事をした記憶がなく、あそこには幼い私の悲しみが棲みつき、今も誰かを待ってる

リビングのカーテンが変わって、昔は狭かったあの場所も今は父だけが生活をする。
よくわからない荷物が増えていく度に寂しいと言っているみたいなんだか幼い頃大切に持っていたガーゼが手から落ちたような喪失感だった。



まだ置きっぱなしの荷物と自分の思い出を探して家の中を歩いた

電話の下のなんでも入れにL版のプリントとネガを見つけ、それ以外私のアルバムは出てこなかった。

玄関から階段を上がって途中の踊り場にジグソーパズルでできたクリムトの接吻が昔からある。
あまり考えてこなかったが、あれ程の物を完成させる暇が両親にあった様には見えない。
随分と埃を被った様子を見てなんだか、今だからこそ向き合わなければならない事なんじゃないかと思い、首から下げたカメラを握った。

ここに落ちていったピースのカケラを無意識に捨い始める



”見えないものを見ようとする”事は私が写真を撮る上でいや、生きる上で一番優先している。
そこに写っていないものを尊重する事で私が写る

小さな水溜りに空がある事を知る様にシャッターを切りたい。

わたしは弱いまま強くある事を選ぶ
傷を愛すことは一体何年かかることか私はまだ知らない
それでもこれでよかったと思いたいから自分を抱きしめに、過去と今を繋ぎ止めに実家に歩み寄り写真を通じ見る

自分が強くければ、大人であれば、と思って悔しかったことは今の私が全部背負って、時空を超えた世界は懐かしく、冷たく暖かい。そして今を生きるあなたに私はそっと肩をたたければと思います。

本人
兄と本人
本人
母の愛した植物
本人の過ごした部屋
退職間近のワイシャツ



実際の展示の様子

透ける布にプリント
マットに釘打ち込んで額装
プリント_A4と2L相当
(ING-JET.NET)
額_太子、八切りサイズ
(マルニ額縁画材店)

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