見出し画像

「ちょっと不良」は伊達じゃない

大学生のときに一度だけ、企業研修の「添乗員」というアルバイトをしたことがある。サラリーマンを対象にしたいわゆる「街歩き研修」で、バブル期にはよくあったものだと思う。

私のバイト内容は、銀行の行員さん20名弱を、花事業に参入したある企業の現場や昔ながらのハーブ店など4〜5箇所にお連れするものだった。その日は私のような「添乗員」バイトがほかに二人ほどいたと思う。

その「街歩き研修」を企画した会社(私が雇われた会社)の社長さんが面白い方だった。50代のおっさんで(当時の私から見ればこの表現がしっくりくる)、会社は実質おっさん一人で切り盛りしていた。
たまたま私の学校の近くに事務所があり後日飲みに行くことになった。

社長は若いころに世界中を旅して周り、中南米の村ではお祭りの儀式の際に豚の屠殺をやったんだと唾を飛ばす勢いで語ってくれた。(いま思うと次長課長の河本さんに似てた)

で、そのおっさんが考える「いい女の条件」という話になった。

  • 可愛くて

  • 賢くて

  • ちょっと不良

「いい女」という表現じゃなかったかもしれない。
でも、なるほどと思った。
「ちょっと不良」いまでも覚えているくらい。

※パパ活のように見えるかもしれないので?補足すると。
添乗員のバイトの日に、私のような当日だけのバイトのほかに、研修のテーマを説明したり場を仕切っている20代なかばくらいの女性がいた。その人もアルバイトなのだが、社長いわく大学卒業後就職したけど建築の勉強をするために再び学校に入り直したデキる女性なのだそうだ。
上の「条件」は、そういう女性を想定してるのだと思う。

三つの条件のうち、「可愛い」と「賢い」は主観部分も多いだろうけどなんとなく基準や物差しの種類が思い浮かぶ。
「ちょっと不良」は魅力的なワードながら定義がむずかしい。社長はもうちょっと説明してたかもしれないけど記憶にない。


🌳


宮沢賢治の『どんぐりと山猫』をご存知だろうか。
文字通り「どんぐりの背比べ」をするどんぐりたちの言い争い(裁判)をおさめる話なのだが、ご意見番となった主人公・一郎はこんなアドバイスをする。

そんなら、こう言いわたしたらいいでしょう。このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらいとね。

宮澤賢治『どんぐりと山猫』より

「ばかでめちゃくちゃで、なってない」どんぐりが一番偉いとしたのだ。
「どんぐりの背比べ」は競う方が愚かなのだ。
この条件で手をあげる者はひとりもいなかった。


🌳


先ほどの社長の話に戻ると。
「ちょっと不良」って、このときに手をあげられる人なんじゃないかな。

  • 私利私欲の自己顕示をしない(マウントしない)

  • 人と違うことができる

  • 本質がわかる

あ、でもこれって「賢い」に含まれるのかな
「ちょっと不良」って曖昧だなあ。
「いい女」てだけでなく、男女問わず「魅力的な人間」の条件のひとつなのかもしれない。

ああそうだ、大人になって『どんぐりと山猫』を読み直すと、山猫のしぐさや服装がいかにも気取っていて俗物なことに気づく。えー山猫好きだったんだけど。
宮沢賢治からすれば揶揄の対象だっだのだ。

山猫は別れの際、またハガキを書いたら来てくれるか、そのハガキに「出頭すべし」と書いていいかと上から目線の関係を迫ってくる。
一郎はやんわりと拒否した。

「ちょっと不良」……パンクやロックは元々は反体制の意味合いがあったそうだ。
思春期だと「大人たちの支配」だろうか(by 尾崎豊)

「不良」を突きつめると
権威や体制に簡単に従わないこと、丸め込まれないこと。


ああそうか、「ちょっと不良」は伊達じゃない。奥深い。
とにかく賢くないと不良になれないということがわかった。


(終わり)



ライラン参加してます。


書く部 参加してます。部内で行われてるタイトル選手権いつか選ばれたい!


画像は 川中紀行 様にお借りしました。ありがとうございます。
デニムにヒール👠映画みたい!
リンク先の記事興味深いです。


それではこれにて!ありがとうございました。

(ライラン58日目)

最後までお読みいただきありがとうございます。楽しんでいただけたら幸いです。「スキ」ボタンが励みになります。