【今日の一冊】 学びの構造
学習科学にハマっていた時期に買った本をやっとこさ読破しました。本書が教えてくれるのは「学ぶとはなにか」「どうしたら深く学べるのか」この二点です。
サマリー
覚えたものは忘れるが、わかったものは忘れない
「学ぶ」=「まねぶ」は学習科学的にも正しい
前提そのものを疑い続けることが、学び続けるコツ
覚えたものは忘れるけど、わかったことは忘れない
脳内の海馬という場所で、短期記憶から長期記憶への変換が行われる話は、みなさん一度は聞いたことがあると思います。何度も繰り返して書いたり読んだり、他人に注意されながらついに「おぼえた」状態になっても、そのまま放っておくと自然に「わすれる」のが人間です。完全にわすれた状態になれば、それははじめの「知らなかった」状態と何ら変わりありません。つまり、覚える行為は可逆性があります。
一方で「わかった」状態に一度でもなると、新しい情報が入ってわからなくなることはあれど「元のわからなかった状態に逆戻りする」ということはありません。「わかる」とは不可逆性の行為です。
「学ぶ」=「まねぶ」は科学的にも正しかった
H.ペトリーによれば、「学び」という現象は「経験を通じて」起こるという。たとえば、地球に重力があることは机からものが落ちる事象と教科書を見比べて経験を通じて理解できるし、シェアドリーダーシップのような目に見えない現象もそれに当てはまる経験を内省することで、これか!と分かる。
つまり、学ぶためには経験が必要で、誰かの経験を後追いすること=真似ることで、近道できるという。
アドバイスしても、実行しない人には、まずやってみないと・マネしてみないとわからないよ、と伝えることはあながち間違っていないのだ。ただし、そのアドバイスが正しいと気に限るけれど。
前提を疑い続けることが、学び続けるコツ
著者は学びにはいくつかの段階があり、その広がりと高まりを6つの段階で表している。
第一段階
受動的な学びで、丸暗記するレベル
おぼえたことで生活がかわることもなく、覚えたこと同士の矛盾や関連性に気が付くこともない
やれ、おぼえと、と言われればやる
粘土でできた人形みたいなもの
第二段階
学ぶ側に選択権が出てくるのがこの段階
一種の目標に合致したものだけは学ぶが、無関係なものや関連系が薄いものは目標から外れる
また、目標が達成されれば学びは途端に終わってしまう
試験や受験のための勉強、褒めてもらうための勉強がこれにあたる
第三段階
知的好奇心による学びがおこるのがこの段階
自分で新しい目標を次々作るはたらきはなく、目標はそこから取り入れられる
新しい知識が導入されると、それが生活に浸透するが、矛盾が生じても、それは自分にはわからないものだと諦めてしまう
第四段階
新しい知識を確かめるために、自分の経験や思考をめぐらせるだけではなく、他者の目を取り入れるのがこの段階
自分なりに納得がいっても、他者からみてそうでなければ、それをそのまま放置せずに疑問として意識され、外に向かってその疑問を投げかけていく
この段階での目標は、目標という言葉が使えないほどひろがっていて、しいていえば「より深く物事を理解すること」が目標になっている
第五段階
矛盾があればそれを疑問として外に投げかけるだけではなく、何かしらの形で解消しようとするのがこの段階。いいかえれば、新しい一貫性を求める段階です。
また、自分の信じるところを他者に話すときに、一歩的に話すのではなく対話の中で新しい真実を見つけていこうとするスタンスがある。「もしかしたら今まで自分が信じていたことは間違っていたかもしれない」「自分が説得する側ではなく、される側かもしれない」という前提をもって他者と関わるのがこのレベルです。
自分が暗黙のうちに前提としていたことろまで遡り、再構築し、新しい一貫性を自分で生み出す形で、納得する。つまり、アンラーニングし続ける人といえそうです。
第六段階
変革のきっかけが目の前の他者との矛盾だけではなく、世の中全体に広がるのがこの段階。世の中のさまざまな現象や問題から新しい視点を発見したり、自分自身の中からも新しい視点を生み出し、現存する視点との矛盾にを超える新しい一貫性を作ることができる。
され、以上の6つの段階は、必ずしも子供から大人になるにつれて高まるとは言い難い。どうして?とうるさいほど聞いてくる子供は第三段階にあてはまるが、受験勉強に疲れ果てた大学生は段階一かもしれない。80才になっても、若々しく第六段階でアンラーニングし続ける人もいるかもしれないですね。
個人的学び
学びの発達にも主体性が必要で、その根源となる知的好奇心の火を消さないために、会社ができることは何だろう?
アイディアを活かせる環境や、意思決定に関わる機会、仕事を自分で完遂するチャンス、他者からのフィードバック。色々ありそうだけど、一つ言えるのは孤独にならないことは絶対必要だと感じます。
自分の火に風を送りこんでくれる存在、相手の日に風を送れる存在であることが、組織として働く意味ではないでしょうか。
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