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わたしたちは、特別になれるか。

僕は大学時代、バレーボールサークルを2人で作ったことがあって(パスしかできないね)、昨日はその創立10周年記念パーティーでした。

サークル名はMSTといいます。自分の大学生活のほとんどを捧げた場所が、こうして長く続いてくれていることは、本当にありがたく、感慨深いです。

今回僭越ながら最後にご挨拶をさせていただいたのですが、パーティーに来れなかった後輩が多かったので、全文をここに残しておこうと思います。

「わたしたちは、特別になれるか。」というタイトルで、手紙を書いていきました。

MSTの皆さま

この度は10周年、おめでとうございます。

MSTのチームスウェットには「since2008」と書かれていますが、あれを入れた当時「いや、今年やん」とセルフでよく突っ込んでいました。

「since」には本来、歴史の重みが必要です。

だから重みのないそれを身に纏って登校することは、「これから重みをもたせます」と周囲に意志表明するようなもので、リラックスウェアのはずのスウェットが、私にとってはさながら重たい鎧のようでした。学校につくまでのバスの間、いつも緊張していたのを思い出します。

あれから10年が過ぎました。

うちのオカンは何かにつけて「10年で人はガラッと変わる」と、名言風に言いたがる人なのですが、たしかにそうかもしれません。

私もこの10年で、全く別の人になったような気がします。

学生の皆さんに、わずかながらの人生の先輩としてお伝えできることがあるとすれば、「歳を取るのはいいことですよ」ということです。

よく聞く親父の一言のようで、我ながらちょっと悲しいですが、でも本当にそう思うんです。

なぜなら、「歳をとっていく」というのは「自分を知っていく」ことだから。

断言しておきますが、皆さんは自分のことをまだこれっぽっちも分かっていません。私もまだまだですが、皆さんは尚更です。

自分ってこんなことに怒るんだ、喜ぶんだ、悲しむんだ、と気づく機会が、これから幾度もやってきます。

それはとても体を軽くしてくれます。自分を知り続けることは、生きづらさの鎧を脱いでいくことに直結しているからです。

昔はできなかったのに、さわやかに何かを諦められたり、かたや、誰に何を言われても譲れない、という意志が生まれたりもしますから、どうか自分にワクワクしてください。

皆さんの未来は明るいんです。

さて、話は変わって、最近知り合いのインスタのストーリーを見てむかついたので聞いてください。

こんな内容のスクショに「それな」とコメントを付けて、その彼はアップしていました。

“「特別な人」になんて、ほとんどの人がなれないのに、SNSでちょっといいねの数が多いからって、特別だと勘違いしてる人が多くて残念。”

ストーリーのタイムゲージがすーっと伸びていく間、私は固まり、この言葉をよく咀嚼し、最後に、こう思いました。


「はぁ…???」


自分が「特別な人」に対してもった劣等感を、勝手に誰かを見下すことで昇華しようとしてんじゃねえぞ、と。だっせぇぞと。

劣等感を解決するのは、適切な目標と、着実な努力だけです。それがいやで、だらしなく誰かを見下して、なんとなくホッとしていたいのなら、せめて黙ってやってくれ、そう思いました。

そして、そもそも「特別な人」って、そんな幸せなもんか?と首をかしげました。

たしかに彼らを取り囲む景色は、ダイナミックで、ロマンチックで、ドラマチックな気がします。「特別な人」の周りには「特別な景色」がきっとある。

でも、私は確信します。

「見慣れてしまわない景色」は、どこにもないのです。

「特別な人」も「特別じゃない人」も、同じ所で停滞すれば、眼前の景色に慣れてしまうものです。ダイナミックなそれも、平々凡々なそれも、そうなったらばただの日常。

だから、別に「特別な人」になんてならなくていいんです。そんなこと、大差ないのですから。

それよりも、私たちは「特別な瞬間」を積み重ねるべきでしょう。

「特別な人」には、誰もがなれるわけではないですが、「特別な瞬間」を積み重ねることは、誰にだってできる。

だから、どうかみなさん、思いっきりバレーボールをやってください。
春がきたら、友だちと野原を駆け回ってみてください。
小さくたてたダイエットの目標は、ぜひ達成してください。
旅行にいくため、貯金にもチャレンジしてください。
好きな人には、好きだと伝えてください。

そんな特別な瞬間を、ひとつひとつ丁寧に、積み重ねていってください。

私にとって、このバレーサークルMSTは、人生における「特別な瞬間」の始まりの場でした。

私はバレーボールがとても下手で、セッターなのに二段トスもまともに飛ばないような選手でしたが、はじめていった合宿で、同期から「それでも太田のトスで打ちたいと思ってるで」と言われた時の感動を、今もはっきり覚えています。

引退試合ではなんと優勝しました。

あの時、拳をつきあげた自分の腕のしなりは、今も私の体にじんわりとした振動となって残っています。

学生の皆さん、臆する事なく、今を思いっきり輝いてください。

10年後、今の私のように昔の自分たちを思い返す時、たしかな光をちゃんと感じられるよう、この一瞬を生きてください。

そしてOBOGの皆さん、私たちも、思いっきり輝きましょう!

それぞれの坂を登りましょう。

見慣れた景色に囲まれないよう、
自分なりに、登りたい坂を、ゆっくりでもいいから登っていきましょう。

誰とも比較しなくていいから、
ただ自分の、自分だけの「特別な瞬間」をこれからも積み上げて、
たまにはこうして肩を並べて飲みましょう。

10周年、ありがとう、私たち!

10周年、おめでとう、私たち!

MST初代代表
太田尚樹

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