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鶏の一枚肉を豪快に揚げる!|山賊焼

今までに一番食べてきた料理はなんだろう。と考えてみると、それは『鶏の唐揚げ』かもしれないと思い至った。他にもいくつか頭に浮かんだものはあったけれど、何しろ鶏の唐揚げというのは幅が広い。定食屋居酒屋はもちろんファストフードコンビニなど店で食べて買って食べ、そして家でも作る。昔ながらのほっとする味も、衣やソースで変化をつける個性派も、ベースのおいしさ保証付の安心感があるから、ついどこでも食べたくなる。初めて入った中華料理屋で[鶏の唐揚げ香味ソース]というメニューを見つけてお願いすると「油淋鶏(ユーリンチー)ですね!」と元気な声が返ってきた。「おお、なるほど」と納得したと同時に『鶏の唐揚げ』という言葉の持つ引きの強さと分かりやすさを実感した。

信州の名物料理[山賊焼]は、何と言っても鶏の一枚肉をそのまま揚げる豪快さが最大の魅力。それを「大きな唐揚げ」と言ってしまうのは味わいがない気もするけれど、分かりやすく説明するとしたら、やっぱり「大きな唐揚げ」が通りがいい。香ばしい衣をザクッとかじり、口一杯に肉肉しさとにんにく風味を頬張る。名前と大きさに臆することなくガブリといけば、そのおいしさは保証付。

■山賊焼の作り方■

【使った材料】
・鶏もも肉…1枚(320g位)

[漬けだれ]
・りんご…1/4個
・にんにく…15g
・しょうが…15g
・醤油…25g
・酒…20g

・片栗粉(衣用)
・揚げ油

肉を大きいまま加熱するときは、できるだけ肉の厚みが均一になるように整えるのがポイント。漬け込み時間を十分に取ると味がこなれてムラなく染みて、どこを食べても一口目からおいしい丁寧なおいしさになります。

■動画でもご覧いただけます■


①漬けだれを準備します
下味が仕上がりに直結する唐揚げは、漬けだれと漬け込み時間がおいしさのカギ。[りんご/にんにく/しょうが]をそれぞれすりおろして、[醤油/酒]と合わせて漬けだれを作ります。りんごとしょうがは風味の強い皮ごとすりおろして使用。

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信州のイメージから、甘味としてりんごを使いました。甘い味が欲しい時に果物を利用するのは古くからある知恵で、特にりんごの甘酸っぱさは肉料理との相性が良く、焼肉のたれなどにもよく使われています。今は甘い調味料がいつでもどこでも手に入るけれど、その土地でとれるものをまず考えて工夫してみるのが面白い。

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②鶏肉を平らに整えます
大きい肉を料理する場合、火が通った部分だけを先に取り出すという事ができないので、まんべんなく熱が入るよう出来るだけ事前に肉自体を整えておくのがポイント。皮を下にしてまな板に置き、肉から大きくはみ出した余分な皮や黄色い脂、肉の表面に残った骨があれば包丁で切って除きます。そうして平らに置いて見ると肉の厚みがある所も分かるので、続いてその厚みの部分に切り込みを入れ、やたらと厚い部分を無くすように整えます。

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元々肉が薄いところはどうしようないのでせめて分厚いところは無くすということ。切り込みを入れて肉を平らにしていくと広がってかなり大きくなってきます。大きいまま揚げるのが最大の特徴の山賊焼ではありますが、そうはいっても家のフライパンや揚げ鍋に合わせて調整が必要。切り落とした部分は炒め物など他のお料理に、一緒に漬け込んで味見と称したつまみ食い用に。

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余分な皮は塩を振ってカリカリに焼くとつまみ食いに最適で、鶏肉を料理する日の私の楽しみの一つ。どうせ食べてしまうのなら付けたままでも良いように思えるけれど、その料理に過剰なものは一旦分けて別に生かす方が、それぞれにおいしく使い切ることができます。

③漬け込みます
合わせておいた漬けだれを肉全体に絡ませ、ラップをして冷蔵庫で寝かせます。できれば一晩〜丸一日ほど置きたいところ。寝かせるといっても冷蔵庫で置くだけです。

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漬け時間をしっかり取ると、調味料をたっぷり使わなくても味が染み、肉もしっとり。普段の唐揚げや豚の生姜焼きなども、時間をしっかり取って味を馴染ませるようにしています。

④揚げます
肉が良い醤油色に染まったら、いよいよ揚げ。
油を“弱めの中火”で温め、肉の水気をしっかりキッチンペーパーで押さえてから、片栗粉をまんべんなくたっぷりまぶします。この水気を押さえる一手間でザクっと硬派な衣に。

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私は家の揚げ物はいつもフライパンで“底から1〜2cm高さの少なめの油”で揚げています。特にこの山賊焼きは肉が大きく、入れると一気に油の高さが上がるため油の入れ過ぎには注意が必要。皮目を下にして静かに油に投入。油の温度が低めのところから入れてゆっくり揚げれば、少なめの油でもきれいに揚げられます。

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大きな泡が出ている間はあまりいじらず、衣が固まってくるまで待ちます。
泡がぶくぶくから徐々に細かく、肉の縁の色が白っぽく変わってきたら丁寧に裏返します。トングや、箸と揚げ網を組み合わせるなど、肉をしっかり安定させられる道具を使い、油はねにくれぐれも注意してください。

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裏返すとまたぶくぶくが始まるので、また静まるまで待ちます。皮目を下に6〜7割揚げてから返すイメージで、皮目をしっかり揚げると素敵な香ばしさに。揚げ上がりまでは全体で10分程度が目安。

⑤完成です
衣全体にカリッとした固さを感じたら揚げ上がり。網に上げて休ませつつ、付け合わせの定番、ざく切りキャベツをお皿に用意します。何も揚げ立てを熱い思いをして切る必要はなく、少し時間を置く方が肉汁も適度に落ち着いて、結果安全においしく食べられる。手で触れるくらいになってから箸で持てる幅にザクザクッと切りキャベツの上にどんと盛り付け出来上がりです。

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一切れでもズシリとくる重量感。頼もしい衣に包まれた肉は、にんにく強めで甘辛ジューシー。好みで塩を添えて。途中途中にキャベツを挟みつつ、もう箸が止まらない。

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長年親しんだ食べものはいつどこでもおいしくてそして意外に“幅”がある。そこがまたいい。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。


お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。