20数年ぶりにキャッツを見に行ったらいま首まで浸かってるジャンルの面影が見えたよ前編

わたくし……キャッツは20数年前、まだいたいけな10歳の子供だったころに見たのですね。

親に連れられて何度か。

で、久しぶりに見たらびっくりしたんです。

これ……これ グノーシスじゃん!!!!!(猫です)

この記事は「私……もしかしてキャッツ(魂の故郷のひとつ)の面影をグノーシス(いまのメイン活動ジャンル)のなかに見出して、いまこんなにもハマっているのでは?!!?!?!?」

ということが言いたいだけのめちゃ個人的な記事です。

グノーシスとは!:キリスト教がまだ生まれたてだったころにキリスト教内で猛威をふるった異端(異説)、グノーシス主義のこと。グノーシスっていうのはギリシャ語で『認識』って意味だよ。「神さまが我々のこと愛してくれてるならもっと暮らしが楽なはずでは……???」「我々を創った神さまが全知全能なら、この世界もっと完全無欠のハイパーすごい世界じゃないとおかしいのでは……???」「そもそも物質とか肉体とかヤバいよ、滅ぶし死ぬじゃん、辛いじゃん……なんで創ったの??? 魂とかそういう霊的なものこそ大事、サイコー!!!」……というあたりの発想から生まれてきたもので、物質とか肉体が悪しきもので、それらを創っちゃった創造主が悪者になっているのが特徴。ただそれだけだとキリスト教になれない(創造主の息子なキリストまで悪者になっちゃう……)ので、彼らはほかにも色々な理屈を考えました。その①:この世ではない世界に、本当に完全無欠なすげー神さま(以下:至高神)がいて、その神さまはいろいろ救いの手を差し伸べてくれてるんだけど、創造主が邪魔して人類のとこまで来ない! その②:イエスさまは創造主の息子じゃなくて、真実の完全無欠な至高神さまの子だな! その③:そのことがわかってれば大丈夫! 死んだら天上の世界へ行けるよ! ……ほかにもいろいろあるけど、「当時のキリスト教が抱えていたロジック上の問題を突いたカウンター攻撃として生まれた」存在なので、なんていうかツッコミの力が高い。彼らはものすごい神話体系を持っていたんだけど……逆に話が複雑すぎてあんまりよくわかってもらえなかったみたいなところがあり……でも、たぶんいまマンガとか小説とかアニメとか以下略で鍛えられた現代人にはそんなに難しくないと思うんだよなあ。グノーシスは紀元2世紀くらいからウワ~~~~っと生えてきてウワ~~~~っと流行ったけど、なんか3世紀くらいには消えてしまったんじゃ。集団行動に向いてない存在の集まりだったことと、正統派からのめちゃつよカウンター返しを食らってな……。私が知る限り、グノーシス主義のもっともかっこいいキャッチコピーは「グノーシスは今日に至るまでキリスト教最大の異端である」。みなさんこれぞと思うかっこいいうたい文句をご存知でしたらぜひ教えてください泣いて喜びます。私の現在のメイン活動ジャンル……? です(活動ジャンルです、研究対象とかじゃないです、つまりめちゃ素人です)。

グノーシスについての話はご覧の通り、もう本当に話せば長くなるのですが……(もう別記事で語りたいだけ語ろうかな……)↑で書いたような「逆転」「逆説」みたいな性質がすごく強いのですね。グノーシスの神話には「善悪を入れ替えてしまう」みたいなひねりのほかに、もうひとつ重要な要素があって、それは「女性的な存在の地位の高さ」なんです。

もちろん古代世界の話なので、いまの世界から見たら「いやあんまり高くないのでは?」と思われるかも知れませんが……。

――まず、至高神のいる素晴らしい世界から、あるとき「女性的な存在(女神というのは厳密には正しくないのですが、女神と思ってていいかも)」がふとしたきっかけでその世界の外に落っこちてしまいます。

たとえばどうしてもパパの顔が見たかったとか……

下界を眺めてたらそのまま落ちちゃったとか……

なんとな~く降りてみたら帰れなくなったとか……

これはさまざまなバージョンがあります。「女神的なもの」の名前もバラバラだし、そもそもそれぞれキャラクターが違ったりします。いちばん有名なのはパパの顔を見ようとして落っこちちゃった「ソフィア」と、魂という意味の「エンノイア」でしょう。このうち、ソフィアは落っこちるついでに子供も産んでいます(ソフィアが登場する神話はソフィア神話と呼ばれ、数あるグノーシス派のなかでも最大の派閥を持ちました。ソフィア神話では、このときに生まれた子供が創造主であるということになっています)。

あわれ下界に転落してきてしまった「女神的なもの」は、地上をさすらい、いろんな目に遭います。いいこともあれば悪いことも……書かれているのはだいたい悪いことですが……あります。日々の暮らしにだんだん天上の世界のことも忘れていってしまう。騙されたり襲われたり、毎日いろんなことがありますからね。そんなあるとき、天上の世界から彼女を救うために「至高神の独り子」、つまりイエス・キリストが派遣されます。そして彼女は彼と出会い、彼によって天上の世界の存在として再び迎え入れられる……。

あれ、どこかで……聞いたことがあるな???

そう、キャッツ。

キャッツ……もちろんずっと大好きだったのですが、これまで中々機会がなく、この年このときになるまで直接舞台を見ることは久しくありませんでした。自分の人生に深く根差しているわりには、頭では少し忘れかけている……という状態だったんです。個々の歌は覚えてるし、猫の名前もぜんぶ言えるけど、肝心の大筋のストーリー……物語の構造は抜け落ちてる感じだったんですね。かつて見た私が子供だったというのも大きいと思います。

自分のなかで大事すぎて、行くのにいくばくかの抵抗がある……みたいな存在だったんです。キャッツは。そういうアンビバレンツな気持ちを持っていたんですね……このへんご理解いただける方には深くご理解いただけ、そうではない方々には申し訳ないがそういうもんなんだ……と申し上げるよりないのですが……。いまはもう、これまで行ってなかった分もお金を落としたい気持ちで心が満たされているので、めちゃ行くと思います。これから。

で、ものすごく久しぶりに見に行ってみて、これは……頭が忘れていても魂が覚えていたのではないか……!!!

だって私……大人になったいま こんなにも グノーシスが好き!!!!

と思って、いまこうして筆をとっている次第です。

ありがとうキャッツ……。

我が魂の故郷(のひとつ)よ……。

ようするに、先ほど書いた「女神的なもの」にグリザベラ、「至高神の独り子」のところにオールドデュトロノミーを入れると……。

グノーシス……の神話の……そのへんっぽくない……???

ということなんですけども。

このくるおしいほどの身もだえ……キャッツとグノーシス両方ご存知の方相手でないとおそらく伝わらない……いや両方ご存知の方にも「そうかな~?」って言われてしまうかも知れないけど……。

かつては美しかった女性的な存在が……人生という苦しみのなかで擦り切れ……引き裂かれ……あまつさえ周囲から冷たく扱われる……そんな彼女が復権を果たし、再び天上の存在として迎え入れられる……。

ガスも老いてはいるけれど、彼には芸がある。地上で編まれた技があり、それが彼の救いになっている。けれどグリザベラにはそうしたものもない。光に満ちた「過去の思い出だけ」。

そしてあの~~~、もうひとつ……グノ―シスでは「ほんとうの名前」が非常に重要な意味を持っていてですね……。

……………。

ちょっと疲れてきたので後編に続きます。


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