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2023年5月に観たものたち:團菊祭五月大歌舞伎・ハウステンボス歌劇団

6月になりましたね。そろそろ梅雨になるでしょうか。私に情趣を解する心がないのか、雨はやっぱりうざったく感じてしまいますね……。

さてはて、備忘メモとして、5月に観たものたち(実際に足を運んだものたち)を陳列します。

▼5月に聴いたものたちの記事▼

歌舞伎「團菊祭五月大歌舞伎」

人生初歌舞伎。
一度は観たいと思っていたものの、周りに有識者もいないだの何だのと二の足を踏んでいた歌舞伎。一念発起して、東銀座の歌舞伎座に行ってきました。

観てきたのは、「團菊祭五月大歌舞伎」の夜の部。歌舞伎ってのは、「六月大歌舞伎」「七月大歌舞伎」という風に、月替わりで演目が変わるんですが、毎年5月だけは、「團菊祭」と冠がついています。
これは、近代歌舞伎を確立した明治時代の俳優、九代目市川團十郎と五代目尾上(おのえ)菊五郎を記念し、毎年五月に行っているものだそう。

昼夜で演目が変わりますが、夜の部の演目は、「宮島のだんまり」「達陀(だったん)」「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」の3つ。
初めて行ってびっくりしたんですが、16時スタートの21時終わり。幕間に、お弁当なり劇場内レストランなりで食事を取るのが普通のようです。何も分かってなかった私は、何も持ってなかったので、腹ペコで最後まで観ましたが……。

宮島のだんまり

さて、最初の演目は「宮島のだんまり」。だんまりというのは、めちゃくちゃに訳すと、パントマイム劇ということ。冒頭にあらすじを説明する語りがあるほかは、無言で進行していきます。

専門的な解説は他に譲りますが、短い演目ながらも、歌舞伎の舞踊としての側面が凝縮された作品。各登場人物の舞や見得が見どころです……と、後付けで言ってみたものの、音楽においてインストがしばし難解なのと同じく、台詞なしの舞台というのは、掴みづらいもの。

そこで登場するのが、イヤホンガイドです。館内ラジオになっており、舞台進行に合わせて、見どころや難解な部分を囁くように解説してくれます。説明して欲しいところでしゃべり、黙っていて欲しいクライマックスでは黙っているという、スグレモノです。
ちなみに、ガイドは「あったほうが良い」ではなく必須です。初心者は、これなしに観るのは厳しいと思います。現に、私の隣に座っていた、どうやら日本語を解さない(=イヤホンガイドをしていない)外国人グループは、途中で帰っていました。

達陀

2本目は、奈良は東大寺で旧暦2月に行われる「修二会(しゅにえ、別名お水取り)」をモチーフとした「達陀(だったん)」という作品。

修二会は、8世紀から一度もかかさずに行われている法会で、東大寺では女人禁制の二月堂に籠り、練行集が、昨年の穢れを祓い新年の豊穣を祈るため、極めて厳し修行を行います。
そのクライマックスに、超特大松明に先導された練行集が、東大寺境内にある泉から水を汲んでくるので、別名お水取り、もしくはお松明とも呼ばれます。

そのお水取りを舞踊化した作品「達陀」。前半では、実際に伝わる「青衣の女人(しょうえのにょにん)」の怪談に着想を得つつ、厳しい修行に疲労困憊の主人公が、夢か現か俗世の恋人を幻視してしまい、煩悩に惑わされる様子を艶やかに表現。後半では、修二会をそのまま舞踊化した、ダイナミックな舞に目を奪われます。

全体を通して、立ち位置が綿密に計算された美しい画面を、幻想的な照明が彩ります。特に前半は、次々の幻視が入れ替わり立ち替わる舞台装置や、その艶やかな演技が非常に印象的でしたし、何よりも、それを照らす照明も素晴らしかった。歌舞伎って、結構現代的な照明を使うんですね。

今回の3演目の中で、ダントツに印象に残っています。

梅雨小袖昔八丈

さてはて、メインは、「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」。漢字の羅列タイトルを見ると、「お!これこそ歌舞伎!!」とテンション上がりますよね。

あらすじは、めちゃくちゃ長いかつ複雑なので、省略します。ただ、一言だけ付言しておくと、観てると割とスルスル入ってきて、全くストーリーが混戦している感じはありませんでした。様々な人間模様が入り乱れるからこその良さがある。

さて、初演は明治6年、西暦にして1873年です。今から150年前。昨2022年が、日本における初めての鉄道開業から150周年でしたから、そのころの話。文明開花の音が聞こえる明治の初めに書かれたものです。

そんな中にあって、この歌舞伎には、江戸の習俗や生き様が、今も、作り物や焼き直しではなく、「生きた状態で」凝縮されています。本当に、眼前に江戸っ子の生き様が広がっているのです。

ヤクザ者で荒くれ者、実際に誘拐なんていう悪事をしでかしながらも、豪胆で粋、有体に言えばかっこいい髪結新三(かみゆいしんざ、本作の主人公)。食えない人物である大家、面子に生きる親分、親への義理建てと身分差の恋に板挟みになる白子屋の面々。登場人物みなの活き活きとした生き様が、克明に浮かび上がります。

あと、知らなかったんですが、歌舞伎って松竹の商標なんですね。割と一般名詞っぽいけど、商標取れちゃうんだ。

ハウステンボス歌劇団「勇者伝説 情熱のエルマーノ」

ハウステンボス歌劇大劇場の看板
本拠地の「ハウステンボス歌劇大劇場」

行ってきました、ハウステンボス。
ここも、ずっと行きたかった場所のうち一つ。CM観てると、遊園地なのかと思っていましたが、思ったよりアトラクションとかが少なく、こどもの国の超発展系みたいなところでした。全体としては満足。

さてはて、ハウステンボスには、「ハウステンボス歌劇団」なる少女歌劇団(宝塚のような女性のみの歌劇団)があります。
ディズニーとかUSJをみていると、テーマパークの客寄せとして、歌劇団というのは、若干意表を突かれるというか、コスパが悪いというか、そんな気もしますが、かの有名な宝塚歌劇団が、宝塚ファミリーランド(の前身の宝塚新温泉)の客寄せとして発足したことを考えれば、さもありなんということなのかもしれません。

このハウステンボス歌劇団、宝塚やOSK(旧松竹)のOGを引っ張ってきたり、ハウステンボス歌劇学院を設立するなど、2013年の設立以来、結構力を入れているようです。

さて、この日観た演目は「アルディエンテロマン 勇者伝説 情熱のエルマーノ」。チーム輝(シャイン)の公演です。

公演ポスター
「アルディエンテロマン 勇者伝説 情熱のエルマーノ」。アルデンテではない。

細かい感想は省きますが、割とがんばっているなというのが素の感想。予算がどれほどかわかりませんが、そもそもテーマパーク自体が、単年黒字は達成しているとはいえど結構ジリ貧の中、一定のクオリティを維持していると思います。
ありがちなベッタベタな筋書きですが、演技や歌として、観ていて厳しい部分はありませんでした。60分のコンパクトな上演時間ながら、しっかりショーもあり(歌唱指導もありました)、それなりの見応え。

一方、気になったのが劇場設備。本拠地である「ハウステンボス歌劇大劇場」は、こんな感じの立派な劇場なんですが……ひとことで言うと、音響がクソ。もしくは、PAがクソ。
クラシック演奏専用の劇場でもここまで、というほどのわんわん響く劇場に、貧弱なプロセニアムスピーカーだけ。そもそもセリフが聞き取りづらかったりと、ちょっと厳しい感じでした。1回しか観ていないので、いつもこうなのかはわかりませんが。

劇場内の様子
劇場内の様子

このハウステンボス歌劇団、福岡にも「歌劇ザ・レビューシアター」という専用劇場も持っているようですね。九州での覇権を狙っているのでしょうか。とにかく、総体として(後ろの方の席なら)ハウステンボス入場者は無料で観られるということも相まって、「アリ」。今後の発展に期待というところでした。

おまけ:M3も行ったよ!

4月30日なので、厳密には5月じゃないんですが、人生で初めてM3に行きました。

初めて行ったんですが、音系の同人即売会ってのは、難しいですね。
絵が中心のコミケやコミティアでは、来場前にチェックしてる作家さんだけじゃなくて、通りすがりで目に留まった作品を買うということも多いです。が、音楽系では、それが難しい。

一応、どのブースでも、みなさん視聴キットは用意しているのですが、わざわざ売り子さんに声をかけてヘッドホンを借りて聴く必要があります。そうなると、若干気になったレベルだと、どうしてもスルーしてしまいます……。
音楽という目に見えないものを扱っている即売会の限界を目の当たりにしました。

まぁそうはいいつつ、ものすごく賑わっていましたし、私もたくさんの戦利品を手に入れ、ニッコニコで帰りました。あそこまで動員できるというのは、やはり20年以上の伝統あるM3ならではですね。

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