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写真の視点を獲得するということ

視点。

「写真を撮るときには視点が大事だ」とよく言われますが、では具体的に視点とは何なのでしょうか?

これにはたくさんの解釈があり過去から現代まで幾多の写真家の方達が視点について論じてきましたが、端的に言うと「誰の立場で撮るか?」ということだと思っています。
同じ子供を撮るとしても、親の目線と他人の目線では撮る写真が変わります。
写真はタイミングとアングルと演出で変わるので、その目線の違いはタイミングかアングルか演出のどれかが違うことになります。

普段僕たちが撮っている写真は全て、何かしらの視点を持って撮られたものであると言えます。
その視点に自覚的になったとき、写真は統一感を持ち始めるのだと思います。
そしてその視点は、実在しないものに設定することも出来るのが写真の面白いところです。

例えば僕は最近「Aliens」という写真のシリーズを撮りためています。
Aliensはまさに視点がコンセプトになっている写真群です。
コンセプトは「エイリアンが初めて地球を観光した時に撮る写真」で、「エイリアン的には普通にエモいと思ったものを撮っているけど、人間の目からは少し奇妙に思える」という視点で撮ろうと試みています。


いかがでしょうか?
この写真を人に見せると「エイリアンっぽい」と言っていただくことが多く、それは個人的にはとても嬉しい瞬間です。
たださらに面白いのは、エイリアンぽさを感じていただいた方に「同じ視点で撮ってみて下さい」と言ったときです。
妻にそれをやってもらったのですが、視点に共通している部分と異なる部分があってとても面白い結果でした。
「確かにここはエイリアン!」と共感するときもあれば、「これは林的にはエイリアンではないかな」という場合もあります。
僕は感じたことは割と正確に言語化できるタイプなのですが、これは非常に言語化しにくい感覚で僕の中のエイリアンを完全に人に伝えるのは難しい作業です。
でも自分の中には確固たる「これはエイリアン」という視点がある。

この非言語的な確固たる視点が僕の言語化能力の不足によるものなのか、これが視覚言語と呼ばれる認識の仕方なのか、恐らく答えは両方でしょう。

一つ言えるのは、一度この写真群を見てしまえば、あなたの中にも「あなたなりのエイリアン視点」が生まれるということです。
「全然わからん!」という人は思いの外少なく、写真を撮っている人であれば「なるほどね」となる場合が多いのです。
これが視点の獲得です。

獲得した視点は初めは精度が低く、その視点で写真をとってもどうもブレているように感じることも多いと思います。
でも視点を獲得する以前とは全く違った写真が撮れているという事実がそこにはあります。

今回は視点の獲得とはどういうことなのか、例を挙げて書いてみました。
視点の話は無限にあるので、また別の回でお会いしましょう。

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