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ヴァンパイア:ザ・マスカレード『ニューオリンズ・クロニクル』(6)暗闘

 一夜が明けると、アイザックの教団には警察のガサ入れが行われていた。倉庫街の放火と麻薬流通の容疑だというのだ。いよいよパターソン刑事をどうにかしなければならない。

 ムスタファのもとには、手紙と宅配トラックの形で、隣の町のノスフェラトゥ長老公子ローレンスからの迎えが来ていた。依頼したいことがあるとのことだ。バヌ・ハキム氏族に頼むことといえば、ひとつしかないだろう。
「ドブネズミめ、何もなかったらドブごとガソリンで焼いてやるぞ」

シーン1:マリー・ドリシェット

 ロジェは、トレアドールのリーダーであるモーゲインに招待状を出した後、正体も意図も不明なマリー・ドリシェットの様子を探るために、彼女がアイザックとともに過ごしているマンションへと赴く。

 果たして、マリーは生存しているマルセルの孫であるクリストファーに会いに行こうとしている。それを止めつつ、ロジェはアイザックを公子の後釜に据えようとしていることを明かす。驚くマリー。支配と威厳、先覚の訓えパワーがとびかうが、マリーは一応納得した様子である。「意外な展開ね」

シーン2:公子ローレンス

 宅配トラックの荷台に載せられ、隣のバトン・ルージュ市に向かったムスタファは、城館めいた姿を誇る旧市庁舎の大広間で、ノスフェラトゥの長老と会う。ローレンスの依頼は、ニューオリンズを混乱させているマノンを暗殺してくれというストレートなものだった。ローレンスはアントニオ公子を支援しているが、彼が叛徒を抑えきれるとは思っていないため、裏から手を回そうというのだ。また、マノンには何か得たいのしれないものを感じているという。

ローレンス

 ムスタファは血の世代を下げる手段を報酬に、この依頼を引き受ける。

シーン3:父と子、トレアドール

 真夜中ごろ、閉店したロジェの店に、モーゲインの継嗣ジョシュア・ケンブリッジがやってくる。

 ジョシュア曰く、モーゲインは公子と叛徒とのごたごたに関わりたくないとのこと。一方、ジョシュアはロジェが咎人狩りにどのような姿勢をとるかをたずねる。彼はモーゲインに咎人狩りに参加するよう、ロジェに説得してもらうつもりで来たというのだ。

ジョシュア・ケンブリッジ

 カマリリャの維持が至上と言うジョシュアに対して、ロジェはヴェントルーの落胤であるアイザック擁立への協力を、モーゲインには知らせないことを条件に、暗に求めるのであった。

シーン4:寵姫と継嗣、ヴェントルー

 アイザックとマリーは、クリストファーの館を訪問する。麻薬の香りが漂う部屋に通された二人。マリーの姿を見たクリストファーはあからさまに動揺する。「マリー・ドリシェット、あなたは死んだはずでは?」

 窓のほうをちらちら見て、隙あらば逃げたい雰囲気を出しているクリストファーに対して、アイザックはその自堕落さを指弾し、自分がヴェントルー氏族の復権と死せるマルセル公子の復讐を目指していることを明言する。

 それを聞いて哄笑するクリストファー。「誰も父を殺してはいない。おまえの思い込みだ。ギャンレルの予言どおり死んだにすぎない」。マルセルは、かつてルイジアナのバユーで遭ったギャンレルから滅びの予言を受け、それを真に受けて、ギャンレルをニューオリンズから追放、それを防ぐために必死になっていたというのだ。

 笑うクリストファー。しかしアイザックが、マルセルが何か遺物をのこしていたことをほのめかすと、マリーの存在に対して恐怖に震え始める。マリーは《支配》でクリストファーを圧迫したのだ。

 そしてマリーは、帰り際、こうささやいた。「今夜わかったわ。マルセルを殺したのはクリストファーよ」

シーン5:教祖マノンの祭壇

 ローレンスからマノン暗殺の依頼を受けたムスタファは、提供された情報をもとに、スラム街にある古い教会が彼女の寝所であることをつきとめ、そこに向かうことになる。案内役はローレンスの子で、アントニオ公子の密偵頭であるエイヴリー。「父の命令は絶対だからね」


 《隠惑》のパワーで問題なく廃教会に入り込んだムスタファは、黄金に装飾された髑髏が飾られている不気味なヴードゥー式の祭壇の前に、標的であるマノンが立ち、礼拝を行っている光景を目にする。影からそれを撮影するとムスタファは離脱。この奇妙な遺物を調べようというのである。

シーン6:祭儀所の狼と魔術師

 オカルトに詳しい者がいない血盟。お互いに意見交換をして、アイザック(アンドルー・ギルボー)を新公子に擁立するコンセンサスを固めた後、トレメールの祭儀所に向かうことになる。そこにで待つのは、トレメールの参議であり祭儀所の理事であるナイジェル。 

祭儀所

 公子との謁見をすませていないマリーとともにロジェは外の車で待機。ムスタファの感覚を共有しようとするが、これに失敗して憤り、車のガラスを割る凶行に。

 アイザックとムスタファは、在勤していたナイジェルに問題の髑髏の映像を見せて意見を聴く。妙に機嫌がよさそうな理事は、興味深げにそれを見ると、テラスの外にいる何者かに声をかける。果たして入ってきたのは、例の謎の考古学者、ベケットである。「メトセラではないな。ましてや始祖なわけはない。そこは安心してくれ」

 しかしこれは間違いなく長老の遺体。マノンはこれを信奉しているのは間違いない。マノンが冥界との間の障壁を薄くする効果のある魔薬ミッドナイトをばらまいているのは、この長老の魂?亡霊?をマノンは呼び戻そうとしているのであろう。そう、ベケットとナイジェルは語る。

「何者かを器にしようとしているのか。なるほど、そこにネルガルの牙がからんでくるのか……」

 ベケットがほのめかす謎めいた真相。それは、血盟の心に黒い疑念を煙のようにわかせるのであった。

(つづく)


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