見出し画像

『国宝・燕子花図屏風』

会場:根津美術館
所在地:東京都港区南青山6-5-1
アクセス:地下鉄表参道駅から徒歩7分
訪問日:2024年4月29日

毎年、庭園の燕子花(かきつばた)が咲く、4月~5月の時期に、尾形光琳作・国宝『燕子花図屏風』が、展示されます。
前回の庭園に続き、今回は本展です。

リーフレット


光琳は高級呉服店の生まれで、40歳になるまで放蕩生活を送っていました。そろそろ何とかしなくちゃなあと思ったのでしょうか、40歳で画家になろうと決心します。
そしていきなり出世作を出してしまいます。
それがこの『燕子花図屏風』
もともと本阿弥光悦のDNAを引き継いでいるので、才能があったんでしょうね。

館内での写真撮影は禁止なので、webから引用させていただきます。

『燕子花図屏風』6曲1双 江戸時代18世紀 根津美術館蔵

「右隻」
出典:wikipedia 
「左隻」
出典:wikipedia 

この屏風、どこがすごいの?
光琳は実家が呉服店だったので、着物の模様が繰り返されていることに着眼しました。
こんな塩梅に。

出典:Wikipediaに加工しました
出典:Wikipediaに加工しました


これすなわちデザイン性であり、リズミカルと言われる所以です。
群青色にぺったりと塗られた花も、単一に塗られた葉っぱも、写実よりもデザイン性を重視したのですね。


『吉野竜田図屏風』 江戸時代 17世紀 
春の吉野の桜と、秋の竜田川の紅葉が、画面を埋め尽くすよう。

出典:美術展ナビ

日本画にはよく書が一緒に書かれました。
物語のストーリーだったり、短歌だったり。

桜の間になびいている短冊がご覧になれますか?

出典:Instagram根津美術館 

これらが短冊です。たくさんあります。

『古今和歌集』と『玉葉和歌集』の和歌が書かれています。
風景を愛でる和歌と絵画のコラボレーション。
文字と絵画が引き立て合うように、文字の配置のためにデザインされたのが短冊なんですね、すごいアイディアじゃないですか。

それにしても絵の具をホットケーキの生地のようにぼとんと垂らして、上から花びらの形を押した、エンボス加工のような桜。
さくらは「たいへんよくできました」のスタンプに使われるような、様式化された桜です。
まさに判で押したよう。
日本画が「デザイン性」と共にあったことがわかります。

出典:根津美術館Facebook 2024年4月23日
一部を拡大しました


この展示会のサブタイトルは「デザインの日本美術」です。
琳派が登場する以前から、日本画にあらわれていたデザイン性に目を向けることが意図されています。



『誰が袖図屏風』 6曲1双 江戸時代 作者不明

出典:美術展ナビ

虫干し?
と思ったら、衣桁や屏風に衣裳を掛けただけの室内を描く様式があり「誰が袖図」と呼ばれているそうです。人物は描かれていません。誰の袖かなあと、想像して楽しむらしい…。

出典:美術展ナビ

螺鈿の衣桁、朝顔の金箔を施した襖絵、文机、などから富裕層であったことが伺えます。着物は普段着の小紋で、亀甲や雪輪など、今で言う「古典柄」。
江戸から現在まで着物の柄が引き継がれているなんて、じーんとしちゃう。

由来はこちらの和歌なのだそう。

色よりも 香こそあはれと 思ほゆれ 誰が袖ふれし 宿の梅ぞも

『古今和歌集』・詠人知らず



尾形光琳の弟、尾形乾山の作品も展示されていました。

『銹絵染付金彩絵替土器皿』 江戸時代17〜18世紀

出典:根津美術館HP「コレクション」

枝や花、川の流れなどが、お皿からはみ出すように描かれることによって、四季折々の自然の一部が切り取られたかのよう。丸窓から見える風景のようにも見えます。
茶色っぽく見える部分は金彩です。




他の展示室の作品も見てみます。
根津美術館は、設立当時の所蔵品数は4643点でしたが、多くの寄贈を受け、現在は7420件を数えているそうです。
しかも多岐のジャンルにわたっており、紀元前のものが国立博物館以外で見られるなんて、財閥の財力と熱意に呆然。


『双羊尊』
中国・おそらく湖南省 紀元前13‐11世紀 根津美術館蔵

出典:根津美術館HP「コレクション」
https://www.nezu-muse.or.jp/sp/collection/detail.php?id=90074

青銅器。
2匹の羊が背中合わせになっているのが可愛い。
『羊双尊』の「尊」はお酒を供える盛酒器のことを言うそうです。羊たちの背中にある器は、口が空いていて、ここへ酒瓶を入れていたのですね。
器の模様は、こちらを向いている人の顔かと思いきや、饕餮(とうてつ)の顔らしいです。
饕餮とは、なんでもむさぼり食べ尽くす魔獣なんだとか。
羊の身体は全面が鱗の文様で覆われ、脚の付け根は龍がとぐろを巻いています。龍といい、饕餮といい、ギョロっとした目にメソポタミア文明を感じます。
『双羊尊』は、ロンドンの大英博物館と根津美術館、2例のみなんだとか。


展示室5では、
「地球の裏側からこんにちは!-根津美術館のアンデス染織-」
を開催していました。

標高6000メートル級の山脈を頂く中央アンデス地域には、先史時代より高度な文明が築かれていました。
文字は残っておらず、思想表現のために染織が使われていたようです。

出典:根津美術館Facebook


2000年以上前の猫らしきの動物。
胎内にもう1匹、猫らしき動物(私にはうなぎのように見えますが)が刺繍されています。
安産祈願、多産祈願などに使われていたのでしょうか。

アンデス地域を「地球の裏側」と表現していいのかは、ちょっとあれ?と思いましたが。



実は、入ってすぐのホールには仏像が並んでおり、写真撮り放題でした。
ここだけでもお腹いっぱいになるほどの楽しい空間だったのですが、いずれまたご紹介できればと思います。



<参考資料>
根津美術館HP
https://www.nezu-muse.or.jp/sp/index.html

美術展ナビ
https://artexhibition.jp/topics/news/20240412-AEJ1919150/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?