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雨と私と私


「曇っている。鉛空だ。」




そんな空模様に合わせてしっかり重かった朝。
始まりの時点でもう既に重たかった。
だから
今朝の私は
何をするにも心の中で
「えーめんどくさい」って
ブツブツ言っていたと思う。
声には出てないが、充分
そんな顔をしていたと思う。


普段は、お気に入りのラジオを流す車内も。
今日は無音のまま。誰とも話したく無い。
そんな気分だったのかもしれない。


まぁ、そんな日もあるよ。


人間は自然の中で生きてるんだから
雨が降って心が憂鬱になるくらいが自然だ。
ある意味、健全。
逆らわなくていい。



太陽が見えなくても1日は始まるから。
太陽がそこにあると信じて
一生懸命生きてみる。



こんな日だからこそ
見つかる感動があるって
希望を持つくらいなら、悪くないでしょ?


そして
1日の終わりに思う。
どんな1日も無碍にはできないんだと。




3/23




私といえば、
定期的にヨガのレッスンを開催している。


ただ、

近頃はみんな、やる気がないのか?
それとも、やるべきことが多すぎるのか?
春だしね、花粉だしね、入学だし、卒業だし
「ヨガよりも大事なことがあって」
みたいな感じで、めっきりお休みが多いし
何故か当日になると、キャンセルの声が上がる。

それは
「あなたなんかよりも大事なことがある」って言われているみたいで、
いつもちょっと胸が痛むんだけど。
ただ、
それに対して私は不満を言うわけでもなく、
少し心が痛むくらいにして
「まぁ、気持ちわかるよ。」って言ってる。

実際、今日の曇り空みたいに
どんよりしちゃう日が、

私にだってあるしね。人間だもの。

案の定、今朝もスタジオに向かう途中に
一本の電話。心はもう少しだけ
重さを増した。



そんなわけで、




今朝は、ヨガのレッスン日だったんだ。
ポツりポツリと降り始めた雨に
ワイパーを揺らしながら
私はいつもよりちょっと重たい
自分の心に聞いてみた。



「どんなヨガを届けようか?」



私は割と素直に


この曇り空を
連れていくことにしたんだ。


「陽気のない心」を許そう。
そんな優しいヨガにしようと。
自分にも、ちょっと優しく
生徒さんには、もっと優しく。


というわけで
スタジオに着いてからはただただ
ぼーっとしながら生徒さんを待った。


すると、少しずつ集まる生徒さん。
挨拶をし、生徒さんと世間話をする私。
いつもの私だ。会話には静かに花が咲き、
私の顔にはもう、笑顔が戻っていた。


そんな私たちの様子を
遠くからぼーっと見つめていたのは


もう1人の私だ。


もう1人の私は


ここにいるみんなが
冷たい雨が降り始める朝に
自分の足で
ここまで来てくれたんだ。と教えてくれた。


鳴ってしまった目覚ましを止め、
あれやこれや家族の分の支度をして、
慌てて渋滞の中を潜り抜け
ヨガマットを抱えて
コインパーキングから
ビルの三階まで登ってきてくれたんだ。


そんな風にもう1人の私が教えてくれたから
胸が熱くなった。



そして



元の私は生徒さんの前に立ち
感謝からレッスンを始めたんだ。



「まずは今日、お越しくださったことに
感謝します。」

そう呟いた瞬間、ちょっと
涙ぐんでしまった。
誰にも気が付かれないように
照れ笑いをして、
いつもどおりの雑談からレッスンを始めた。
そんなだからか、
今日のレッスンには、いつもよりも多く
笑顔という陽が差した。
ちょっと暑いくらいだった。



そして
無事レッスンが終わると、

「先生は、他の場所でもレッスンしてらっしゃるの?先生、とても良かったわ。」

なんて、伝えてくれたおばぁちゃんが1人。

それに

「先生、次は何日ですか?」と

聞きにきてくれる生徒さん達。

もう、それだけで今日はいっかな。って
胸がいっぱいだった。
私が大切にしたいものって、こんな感じ。
ヨガを届けていて、
嬉しいのってこんな時。


「私」がここに立ってよかった
そんな瞬間なんだと思う。
そんな瞬間を与えてくれるのは生徒さんだ。
そんな瞬間を与えてくれるのは自分だ。


みんなが
見えなくなるまでお辞儀をして送り出した。 






今日はこんな雨模様のせいで
湿ったままの私が
スタートしたんだけど

そこには
太陽があることを信じていたんだ。

その結果
出会ってくれた人と
出会う意味があったんだって。

そんな風に思ったよ。






曇り空でも、雨模様でも
そんな面倒く臭い1日の中にこそ、
得るものが
ちゃんとある。

心の痛みから知る、喜びも
ちゃんとある。



たった一つの選択に。
たった一つの行動に。



陽の光を見逃さず。生きよう。





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