衆院補選(東京15区)の維新の敗因と今後の戦略

先日の東京15区や長崎3区で維新は惨敗した。しかし、言い訳のような分析が多いように思える。そこで維新の敗因を分析反省していく。

1.反省の仕方

 まず、反省する上で維新以外のせいにするのは絶対にやめるべきだ。また、維新だけではどうすることもできないことを反省しても意味がない。
例えば、Twitter上でも立憲や共産の組織票のせいにする方も一定数いるが、維新ではどうすることもできない。投票率も維新だけどうにかできるものでもない。

万博も決めた以上それありきで戦う必要がある。本選では連合や自民党組織、創価学会を相手に戦わなければならない。これは宿命だ。
大阪では低投票率でも選挙で勝ってきた歴史がある。そのことを考えれば、投票率も言い訳に過ぎないかもしれない。

有権者を問題視するのはもってのほか。また、小池百合子のせいにするのもおかしな話で、維新は望んで全面対決をしているにもかかわらず敗因に挙げている。

2.敗因

1.活動量

 まず、これを論じるには金澤さんの発言について考える必要がある。そもそも4年間で1万5000回の辻立ちをしたのかという問題。
 馬場代表が総括として活動量が足りないと発言しており、今後の方針として、10倍、100倍の活動量をすることも発言している。では、彼女の発言で言われている活動が事実だったとして、10倍、100倍の活動量ができるのかということである。

上記のサイトは江東区における戸建て、集合住宅の世帯数と事業所の数が明記されている。江東区の戸建て住宅は31,560世帯、事業所数は19,748ある。彼女は、ポスターを1000枚を貼っていたと仮定してそれを10倍、100倍に増やせるかと言えば、10倍と仮定すれば、戸建て住宅だけに貼っていけば1/3の家に、事業所を合わせたとしても1/5の戸建て住宅と事業所にポスターを貼る計算になる。100倍は無理な話で集合住宅の中の1軒1軒に貼る必要が出てくる。
 辻立ちに関しても、最近は土日に20回~50回程度というのを加味しても1年間で2500回の辻立ちをしているとしているが、10倍、100倍となると年間2万5000回、25万回の辻立ちということになる。彼女が途中でしんどくて回数を減らしたものをその倍以上に増やせとなるのも難しい話だ。

 もっと簡単なことを言えば1000枚も貼ってたらそこかしこらにポスターはあり、目にしているということだ。辻立ちを1万5000回もやってればみんな知ってるはずだ。投票率は低いならそのことに目がいく人の割合は格段に多いわけである。それなのに投票に結びつかないのは嘘を言ってるからという論調があってもおかしくない話とも言える。
 党もその活動量の少なさを認識しているからこそ活動量が足りないという結論をだしたのは、その論調を裏付けるものになってる。
 彼女の活動量は嘘を言ってないと仮定した場合、それは党が現場を把握しておらず、適当に活動量のせいにしているとも取れてしまう。
 結局のところ、活動量が事実とするならばそれを増やせというのは、候補者の体力的に難しい話だ。

2.活動方法

これまで活動量で論じてきた辻立ちはあくまでも空中戦にかかるものである。ポスター貼りはどちらかと言えば地上戦、ポスティングは空中戦と地上戦の中間と言われているもの。ここでは衆院選後の2年間でどれだけの戸別訪問や集会に参加することができたかというのは得票に大きくかかわることである。もちろん後援会を大きくすることや、ポスター貼りも大事である。例えば、愛知10区の杉本氏は近畿以外では最も惜敗率が高い議員であるが、彼はポスター貼りばかり頑張ることで知られている。
 

大阪では小選挙区で当選するような議員は、多くの集会に参加している。集会を自ら開くだけではなく、自分の足で参加しに行くことが重要です。人間は様々な組織や団体に所属している。この組織団体に顔を出すことは非常に効率よいものであり、地上戦で非常に重要な活動だ。この集会に参加することがこの2年間でどれだけ参加できたかは、得票に大きく影響してくる点だと考えられる。

3.政策

 ここでは、政策について話したい。東京15区は自民党候補がいないという稀にみる珍しい選挙になった。この点において、自民党支持層から支持を手厚く受けたいがために外交、安全保障について演説することは悪くない戦略ではあるが、離れていく票も多かったのではないかと考える。


投開票日1週間前に江東区内の有権者を対象にインターネットで実施していた情勢調査

 上記のグラフはインターネット調査における日本の防衛力強化についての賛否だ。実は、この防衛力に関してインターネット上であっても強化に賛成している割合は5割に満たないのだ。電話調査になると強化すべきという声はより下がると思われる。つまり、有権者は防衛力強化に必ずしも賛成しているわけではないということだ。
 
また、日本保守党の飯山氏がいたことで防衛力強化をいくら訴えても、維新を支持することになるのかと言えば難しい話だ。
 政治とカネの問題については、どの候補も同じような問題意識と解決策であり、違いなくそれを理由にして維新に投票する要素になりにくいという点もある。

3.今後の戦略

今回の衆院補選を受けての課題から維新は今後どうするべきか考えたい

1.政党経営の多角化

 維新は大阪の実績による政党ブランディングを行っているが、それは大阪に限った話になっており、全国的な政治課題の解決、地域課題の解決を政治の側面では十分発揮できていないという事実がある。しかし、政治団体というのは政治活動を主たる活動とするものであって主たる活動でなければ営利事業などをすることも可能である。つまり、商業の観点から政治課題や地域課題を解決していくのも1つの手ではないかと考える。例えば、コンビニ経営をすることで過疎地域の買い物難民の救済したり、地域の社会インフラの拠点にもなりうる。また、様々な業界団体に加盟することも可能だ。

2.候補者育成施設、プログラムの創設

 現在の維新は公募による候補者選定が主流であり、維新政治塾はあるものの、それは日帰りかつ回数も非常に少ないものとなっている。これは働きながら政治塾に参加できることから気軽に参加できるが、候補者育成の観点からすれば非常に不十分だ。現に公募だと当選後の離党や不祥事が相次いでいる。数ヶ月~数年単位での施設での候補者育成や育成プログラムを組むことによって0から質のいい候補者を育成できる環境を整備していくことが不祥事を無くしていくことに繋がるのではないかと考える。

3.党シンクタンクの創設

 党シンクタンクの創設は議員の政策立案への手助けとなる重要なものだ。議員以上に詳しい政策の専門家が政策を策定することで、より現実的かつ最善の政策を掲げることができる。また、議員が選挙などに集中することができる点も大きな利点になる。また、党シンクタンクの創設は候補者育成においての政策面での育成に重要な要素になる。維新支持者の中には官僚出身議員を非常に嫌う人もいるが、議員ではなく一般人の立場から政策をつくるものなので彼ら官僚出身者を議員させる必要はない。また、彼らがいることによって霞ヶ関と戦いながらの政策実現が可能だ。

4.全方面全面対決路線の転換

>また、自民に対抗すべく野党が一緒になるべきだという意見を多く頂きました。
 ここにおいては非常に賛否が分かれるところだろうが、野党同士で対決することにどれだけのメリットがあるのかというのはよく考えるべきである。少なくとも第3極の立ち位置あるもの同士、政策的にも近い都ファに関しては歩み寄りをしていかなければ、無党派層の期待が薄れていくのではないか。自民党には派閥が存在することでその巨大な組織を維持してきた。また、その派閥同士の権力闘争によってそれぞれの派閥(政策集団)の政策が実行されてきた。馬場代表の長所たるまとめる力とは派閥でこそ発揮される、真価が試されるもので、それこそ立憲との完全合流の上にその新党の最大勢力馬場派として野党第一党の党内で力を振るうことではないのかと考える。

4.終わり(橋下氏の予備選論について)

 橋下氏の予備選論は党として合流できない上で、自民党に対抗するために編み出した妥協案である。それは党として比例代表を残したうえでの小選挙区での選挙協力を無理やりするものだ。しかし、この案を採用したことによる弊害は1つ、自民党が過半数割れを起こしたときに予備選で無理やり候補者を降ろされた政党は果たして彼らの政権に与するだろうかということだ。また、政権に加わらなかったとき、予備選は野党自民党とやることになるが果たして予備選として機能できるのかと言えば難しい。予備選をやるよりは党自体が合流することが最もシンプルかつ、比例枠を使った候補者救済もできる。また、自民党過半数割れ後の政権樹立にも支障がない。

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