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【音楽遍歴】2002年に行ったライブ③


はじめに

2002年は結婚したこともあって、3年ぶりにフル参加したFuji Rock Festivalを含めて7本と少なめでした。おまけに、単独公演の内、2本はFuji Rock Festivalでも見る羽目になるという「先に言ってよ~」な状況でした。それでも、初めて単独ライブを見ることになったSpiritualizedThe Flaming Lipsは心斎橋クラブクアトロという小さいハコを全く気にしない本気のパフォーマンスを見せてくれ、中々の衝撃を受けました。

今回はそんな中から、常連が多いですが、下半期に見た単独公演4本について書いてみたいと思います。

ライブ情報

  1. Spiritualized(2002年1月11日@心斎橋クラブクアトロ)

  2. The Chemical Brothers(2002年2月26日@Zepp Osaka)

  3. Fuji Rock Festival '02(2002年7月26日-28日@苗場スキー場)

  4. The Flaming Lips(2002年8月16日@心斎橋クラブクアトロ)

  5. Oasis(2002年10月3日@大阪城ホール)

  6. Underworld(2002年10月27日@Zepp Osaka)

  7. Primal Scream(2002年11月13日@Zepp Osaka)

出来事もろもろ

The Flaming Lips

Summer Sonicでは東京のみの出演だったThe Flaming Lipsに、The AvalanchesをDJセットに加えたSummer Sonic前夜祭。のはずでしたが、フライトの都合で来日が遅れたThe Avalanchesは当日キャンセル。なんてこったい。

ニューアルバム"Yoshimi Battles The Pink Robots"リリース直後という絶好のタイミングでの来日で、しかもフルセットは嬉しい。The Avalanchesがキャンセルになったので、ほぼ定刻にThe Flaming Lipsが登場。Wayne Coyne以外の二人は"Do You Realize?"のプロモーションビデオと同じように、ウサギの着ぐるみを着ていて、舞台袖ではカエルやオオカミの着ぐるみが踊っていました。

新作で最も美しく明快なメッセージを持つ"Do You Realize?"で始まり、前作の力強い"Race for The Prize"へ流れていく中、Wayne Coyne は紙吹雪投げまくり。おまけに、天井が低くて小さいクアトロで大きな風船を飛ばしまくるので、ステージへ戻ってきた風船がメンバーに当たりまくり。ここ、クアトロだよ!?(笑)

The Flaming Lipsの場合、ライブで歌や演奏の表現力が見違える訳でもなく、身体を突き動かすようなグルーヴを生み出す訳でもないけれど、「コミュニケーション力」が凄まじい気がしました。映像や小道具を使ったパフォーマンスの助けを借りつつ、双方向のコミュニケーションチャネルの常時確立がしている分、発する側と受ける側が固定されないことによる没入感と対等な関係であるが故のメッセージの重み。それだけに、ライブが終わってからスクリーンに映し出された「あなたの知っている人は皆、いつか死ぬ。」というメッセージのリアリティは強烈。非現実の優しさと現実の残酷さが同居した体験したことがないライブでした。

Oasis

初めて彼らのライブになった2000年3月の神戸ではアリーナ1列目だったのが災いしてか音のバランスが悪く、期待していたベクトルとの微妙なズレもあって乗り切れず、2001年のフジロックフェスティバルではレアな選曲を楽しめたものの、直前のManic Street Preachersで体力を使い果たし、最後方でボンヤリ見ていたこともあって没入できずと、バンドとは無関係な原因で連敗中。ただ、この日はPAブースの側と適度に良く、「二度あることは三度ある」よりは、「三度目の正直」になりそうな予感。

定刻から10分ほど経ったときに"Fuckin' in The Bushes"が流れてメンバーが登場し、1曲目は"Hello"。続いて"The Hindu Times"と"Hung in A Bad Place"と、ロック的要素が強い新作からの曲が続きます。その後、リフでこの日最初の大合唱が起こった"Go Let It Out!"を挟んで、初期の佳曲"Columbia"と"(What's The Story) Morning Glory"へ。後者では兄弟掛け合いバトルの部分で再び大合唱が起こったのに気を良くしたのか、Liam Gallagherは客席に向かって拍手をしていました。

アコギ1本でNoel Gallagherの歌う"Wonderwall"の澄んだ美しさにはゾクッとしましたが、新作のキートラックの一つ"Born on A Different Cloud"で弟が演出した力任せの美しさの前には兄貴の存在感も薄れ気味。と思っていると、"Acquiesce"では兄弟のコラボレーションが始まり、互いをスポイルすることなく、リスペクトしている感じ。アイドリングから暖気、さらにはトップスピードに達する流れは、バンドのウネリ、自分を含めたオーディエンスのノリの両方の面で大満足。

この日一番の盛り上がりは"Don't Look Back in Anger"。イントロが始まっただけで大歓声が起きましたが、リフの大合唱にはゾクゾクしました。The Whoのカバー曲"My Generation"でライブ終了後、会場に流れた"Chanpagne Supernova"に併せて軽い合唱が起こり、ライブの余韻を楽しむことができました。

今回も小さな部分の変化を除くと目新しい発見はなく、山のようにストックされたキラーチューンでオーディエンスを捻じ伏せるのはいかにもOasisのライブ。ただ、何度も弟が客席に向かって拍手したり、"Very Nice"とボソッと呟いたり、兄貴が機嫌良くMCをこなす。異様な盛り上がりを見せたオーディエンスもバンドを完璧にサポートし、「三回目の正直」が冒頭の疑問へのファイナルアンサー。

セットリストはコチラ

Underworld

2002年を代表するフロアアンセム"Two Months Off"を引っ提げての来日は、未だに強烈な印象を残す99年のフジロックと微妙な評価に留まった2000年のエレクトラグライドのギャップを埋められるかどうかが一番の興味でした。オプティミスティックでオープンな"A Hundred Days Off"を彼らの特有のインタラクションを備えた立ち回りととTOMATOのビジュアルでどのように再構築して、パッケージし直すのだろうか?Underworldに対しては、どうしてもそんな過剰な期待を抱いてしまいます。

オープニングトラックは驚きの"Rez"。チープなシンセサイザーのイントロが始まった瞬間に、会場のボルテージは一気に沸点に到達。当然のように"Cowgirl"を挟みながら再び"Rez"へとつなぐ、いつもなら本編ラストかアンコールでやる強烈な流れ。その後は"Dark Train"で少し落ち着かせた後、早くも"Two Months Off"を投入するという出し惜しみのなさ。

「そろそろアレ聴きたいな」と思ったタイミングでオーディエンスを浮かび上がらせるライティングと共に始まった"Born Slippy"では会場中から堰を切ったように笑顔が溢れていたけれど、この日は既に何回かの小爆発が起こっていたので、以前のようにタメにタメて一気に爆発させる、という強烈さには欠けていました。そして、意外にも圧倒的なパワーを見せたのがアンコールで演奏された"Moaner"。曲が持つエネルギーと目が眩みそうなライティングがフィードバックを掛け合いながら無限に発散していく様子はSupernova(超新星爆発)で、"Born Slippy"の決定力不足を補い、別次元の空間に持って行かれたような感覚になりました。

良いライブだったと思いますが、彼らのライブを見るときにはどうしても99年のフジロックのホワイトステージがリファレンスになってしまうので、評価が厳しめになってしまいます。ただ、エレクトラグライドに比べると、随分と「あのとき」に近づいたように感じたので、いつか新しいリファレンスを産み出してくれそうな気はします。

セットリストはコチラ(アンコールで"Moaner"をやったので間違ってるかも)

Primal Scream

"Evil Heat"を聴いたとき、平均点は超えていたものの、アルバム毎に表情を大きく変えながら様々なブレイクスルーを成し遂げてきたこれまでのキャリアを考えると少々物足りなさを感じたのが正直なところ。この日のZepp Osakaは前回の来日時よりオーディエンスは少なく、Primal Screamへの渇望感も弱めに感じました。

ところが、そんな悪印象は一瞬でクリア。CDよりテンポを上げた"Accelerator"でのドラムのカウントダウンとギター、ベースが絡み始めた瞬間、Bobbie Gillespieが歌い出す前に既に勝負ありという程、一音目の集中力は凄まじく、緩めだった会場の雰囲気は一気に引き締まりました。アドレナリンが吹き出し始めたところに輪をかけて、地鳴りのようなリズムと吐き捨てるように歌われる"Miss Lucifer"。リズムマシンとドラムスがシナジックに絡み合って作り出されるビートが身体に打ちこまれるような感覚がひたすら続き、さらに輪をかけて強靱なリズムトラックと狂ったようなギターの襲いかかる"Rize"という攻撃的な展開。

プリミティブなロックの格好良さが残っている"Kill All Hippies"からニューアルバムで最もロック寄りの"Sick City"、そしてみんな大好き"Rocks"で会場がバースト。ステージ上のメンバーもオーディエンスも「なんじゃ、こりゃ」っていう盛り上がりが続き、エレクトロニクスバージョンへの変態を予感させる"Kowalski"から"Swastika Eyes"、そして"Movin' Up On"で本編終了。もう、ここまででも充分な充実度と疲労感で、「すげぇ~」という声がアチコチから聞こえてきました。

1回目のアンコールは"Higher Than The Sun"から始まり、全身の毛穴からエネルギーを吹き出すようなパワー全開モードから一転して浮遊感溢れる世界が生まれ出て、しばらく身体をクールダウンさせながら揺らし、"Jailbird", "Detroit", "Skull X"と続く中でテンションを上げ直し、2回目のアンコールは"Medication"と"Born to Lose"。"Born to Lose"は"Medication"の盛り上がりを引き継ぎながら、締まっていたライブの印象をさらにタイトなものにすることに成功っしていました。

ライブ前の不安なんか彼らの音の洪水の前に木っ端微塵で、どこを探してもカケラさえ見つかりませんでした。相変わらず驚かされるのは持ち駒の多さで、身体を突き刺すようなリズムとギターがあるかと思えばホンキートンクピアノが絡むロックンロールがあり、どんな曲を演奏してもPrimal Screamの名の下に成立するエレクトロニック・ガレージ・バンド・フューチャー・ロックンロール。自分達のやりたいこととオーディエンスが期待していることがシンクロした最高で最良の地平で演奏した充実したバンドの姿がありました。アルバムには少々戸惑いましたが、この年最初に見たSpiritualizedと並んでベストアクトに指名できる内容でした。

おわりに

今回は2002年に行ったライブの内、後半に見に行った単独ライブについて書きました。The Flaming Lipsはライブとは何たるかを見せてもらって気がしましたし、お馴染みのOasisUnderworldPrimal Screamなどは過去最高レベルのパフォーマンスを見せてもらえました。

この年は例年に比べると本数は少なめでしたが、個々のクオリティは非常に高く、充実したライブライフ(?)だったと思います。

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