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あおのむらさき (詩、朗読)

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過去と云ってしまうには、まだ真新しい言葉たち。 2014→
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2015年7月の記事一覧

揺れる

揺れる

風は、気孔を
空に向けるゆびさきを持つ
なめらかな所作で
ひかり、なのか、花、なのか
ひかりの花なのか
分からないことは
分からないままのほうが
うつくしい

見下ろすと木の
振り分けられたつむじが見えた
入り乱れた軌跡を細かく描写する
揺れが、わたしに風の道筋を示す

風のない地下へ
マントルまで届きそうな
エスカレーターで下っていく

風を感じて振り向くと
人間の作った空調で
窒息しないことを

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夜のからだ

夜のからだ

届いてしまった音に震えた耳と
笑った目の奥で蔑んだ黒目が
刻印されて剥がせない

割れた唇、ひびの入った踵
あらゆる部位を熱すぎる湯に浮かべ
ふやかして風呂に浮かんだ全き穢れを
瞬く間に排水口が飲み込むと
一枚剥けた色の薄いわたしに戻る

(いつか消えてしまう

      しまい忘れたように)

やっと夜を始められる
ばっさりと黒い夜着に着替えて
この瞬間のためだけに生きている
と呟いてみた

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