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あおのむらさき (詩、朗読)

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過去と云ってしまうには、まだ真新しい言葉たち。 2014→
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2016年6月の記事一覧

十(とう)

十(とう)

鬼の足跡を数えながら
立ち入り禁止の森に入る

盆踊りの内側で
帯が解けて困り果てていためのこを
櫓(やぐら)の片隅に手招いて
蝶々結びをしてあげた
はらりと襦袢がねじれ
解けたお団子髪の奥から
白く光る角が見えていた
裾を整えると風がやんだ

村のもんでねえ
めんこい子やのう、と婆さまが言った
何を言っとる、誰もおらんがな、と
母さんは言った

わたしと婆さまは
角を髪で器用に巻いた

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十(とう)

梁川梨里(やながわ りり)

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現代詩手帖2016.3月号 佳作
前橋ポエトリーフェスティバル.ポエトリー・リーディング(前橋文学館)2016.5.24