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京田陽太と源田壮亮の「ショート守備における違い」について考える

皆さん、こんにちは。今日は京田陽太と源田壮亮の「ショート守備における違い」についてnoteしたいと思います。

考えるきっかけになったのは、ヘッダーに貼っている質問が私の質問箱に届いたからです。ただ正直学生時代はほぼ外野専門だった私からすると、かなり難しい質問。しかも京田の守備についてはなんとなく話せても、源田との技術的な違いについて語るとか無理・・。

そんな時にふとTwitterでフォローさせて頂いている方で、いつも内野守備について熱量高く語る、とても詳しい方がいたのを思い出しました。

内野守備に詳しいその方とは、ロッテファンのワンドリさん(@hanachanlovebot)その方です。そこでこの件についてコンタクトしてみると、想像以上にたくさんのご意見を頂けたため、今回その内容をまとめてnoteすることにしました。

現時点におけるデータ上の違いを改めて確認した上で、以下4点について具体的な両者の違いについて見ていきたいと思います。

①ステップワーク
②グラブ捌き
③スローイング
④グローブのポケットの作り方

1. UZRで見る両者の違い: 遂に京田が源田を上回る

まずは両者の違いを、守備貢献を表す指標「UZR」で比較してみたいと思います。2017年の入団以降ずっと規定打席に到達し続ける二人ですが、UZR上ではルーキーイヤーから12球団トップの貢献を見せている源田が昨季までは大差をつけていました。特に守備範囲を表す指標では圧倒的な数値を示しており、それが球界トップレベルのショート守備の源泉となっていたと言っても過言ではありません。一方で京田も毎年のようにプラス数値を叩き出しており、源田と比較するとどうしても見劣りしてしまうものの、リーグでも上位クラスの守備力を備えていたと言えます。

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*データ参考: 1.02 Essence of Baseball

ただ今季の守備指標について見ていくと、京田がDPR、RngRで数値を大きく改善させた結果、9/3時点で源田を上回り12球団トップの座に躍り出ました。大差を付けられていたRngRでは逆転こそならなかったものの、源田に肉薄する数値をマークしており、今季の大幅な守備力向上が窺えます。

UZR上は拮抗する京田と源田ですが、それでは両者の守備面における違いとは一体何なのでしょうか?ここからは、先ほど挙げた4つのポイントについて、ワンドリさんの考察をご紹介していきたいと思います。

2. ステップワークにおける違い: 動きを止めて構える京田と、スプリットステップの源田

まず始めにステップワークについて見ていきます。京田の特徴としては以下3つが挙げられます:

・構える瞬間に腰をロックして、動きを止めた状態で打球を待つ
・今季は昨年よりも体幹トレーニングに特化し、右足前捕球を取り入れた事で左足を踏み出した一歩のステップで送球できるような体使いができるようになった
・上記により捕球体勢が崩れても安定した送球が可能になり、結果としてより強肩を生かせる深い守備位置を取ることができるようになった

今までの京田はステップワークが一定でなく一歩一歩のステップ幅が大きかったため、特に土のグラウンドではイレギュラーなどに対応する事ができず、捕球体勢を崩しての送球ミスが多かったと思います。

それが体幹を強化しステップワークも合わせて改善することで、より広範囲に打球を処理できるようになりました。その証拠が8月30日のヤクルト戦、打者村上の逆シングルの当たりを難なくアウトにした場面に表れています。これは肩が強くなったのではなく、上記で述べたような体幹強化とステップワーク改善の賜物だと言えます。

対する源田ですが、構えた後に一度ジャンプをし、状態を低くする事でサイドの動きを良くするための「スプリットステップ」を取り入れています。構える瞬間腰を止めてロックしている京田に対して、源田は常に動きながら低い姿勢を保とうする事で無駄な動作を省いています。

毎年のようにRngRの指標でリーグトップレベルの数値を叩き出す理由は、彼の生まれ持ったアジリティ(=敏捷性)の高さのみならず、このスプリットステップを活用することで打球に対し最速で到達できる点にあると言えます。


3. グラブ捌きにおける違い: 安定したグラブの出し方をする京田と、グラブの出し方にも引き出しの多い源田

次にグラブ捌きについて、京田の特徴は常にどの打球に対してもグラブの出し方が一定で安定している点が挙げられます。優先順位は、まず捕球すること!なので、最速で打球に追いつく事を心がけている様に思えます。

それに対し、源田は打球の回転によってグラブを縦で入れたり、敢えて寝かして打球を跳ねるのを待ったりする事で、自分が投げやすいリズムに打球を導く事が出来ています。

こちらはどちらも素晴らしく甲乙つけがたいですが、打球に対しての応用が効く源田は捕球する前に必ず自分が送球動作に入りやすい姿勢を保って打球に入るため、送球の質がかなり安定しています。


4. スローイングにおける違い: 安定したリリースポイントの京田と、打球に応じて使い分ける源田

次にスローイングにおいては、京田は常にボールに対して3本の指(人差し指、中指、親指)で支えて一定のリリースポイントで送球する事で、一塁手が捕球しやすい球を投げてよう心掛けているように思います。

対する源田はリリースポイントはバラバラで、打球に応じてスナップスロー、クイックスローをうまく応用しています。ただスナップスローをする際はシュート回転しやすいので、3本指ではなく4本指 (人差し指、中指、薬指、親指)でボールとボールとの感覚を狭くすることで、力の伝わりを均等化することでシュート回転を防いでいます。

*上記動画でもかなり分かりにくいので、普段からテレビ中継のスロー映像などに注目して頂けると良いかもしれません。また京田も最近では4本指スローを取り入れているかも・・

5. グローブのポケットの作り方における違い: ポケットが1ヶ所の京田と、敢えて作らない源田

最後に決定的な違いと言えるのが、グローブのポケットの作り方における違い。京田はポケットを深いところで1ヶ所で作っています。それにより同じ位置で捕球する事でリズムを生み、常に一定のリズム、タイミングで送球するようにしているかと思います。

*京田のポケットの作り方について、彼の捕球パターンと球出しを観察するにポケットを深いところで1ヶ所作っているはずだと考察しました。ただTwitterで身内に京田のグローブの型付けを行なっている方から、型を作る時点ではグローブの全体どこでも捕球できるよう深いところで1ヶ所作ることはしていないとコメントがありましたので、追記しておきます。

一方で源田は、一つのポケットを敢えて作らずグローブのどの位置でも捕球できるようにしています。
例えば強く速い打球を殺すための深い所で捕球したり、または薬指と親指が閉じた際に重なる所で捕球したり。

これは弱い打球だと握り替えを素早く行うために、浅い所で捕球した後に球出しを素早く行うためだと思われます。この辺りにも源田のショートとしての引き出しの多さが窺えます。

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>この源田選手のモデルを実際に作製・型付けまで行っているゼットの職人さんに直接話をお伺いしたのですが、「ポケットは作らないようにしている」という驚きの発言が出てきました(; ・`д・´)
ポケット作らないというのはどういう事!?
職人曰く、「ボールが受球面に当たったところの、どの位置でもそこでビシッとボールが止まるように出来ているんです。土手でも、手のひら中央でも、薬指の下でも。だから、逆に一点にポケットが出来ていたらそこにボールが転がってしまう。そうすると握り替えをするのに手間取る。」ということらしいのです(*_*;

-超野球専門店CVスタッフブログ 「守備の名手が使うグラブ」回より上記写真、文章引用

6. 京田陽太の守備がさらに進化するには

以上、両者の違いについて見てきました。総括するとイメージとしては京田「基本的な動作を追求して積み重ねてきた上手さ」源田「あらゆるボール・姿勢でも対応できる応用力の高い上手さ」、という違いだと言えるでしょうか。

動画など情報量の多さからどちらかと言うと源田の守備にフォーカスが当たってしまった感はありますが、現時点では双方とも甲乙つけがたい、優秀なショートストップであると言って良いのではないでしょうか。京田が今年ゴールドグラブ賞を獲得できるかどうかは記者投票のためまだなんとも言えないですが、筆頭候補である巨人坂本と比較し議論されるレベルには少なくとも到達したのでは?と思っています。

一方で、京田の守備も現時点で完成されている訳ではなく、応用力の高い源田の守備力と比較してまだまだ伸び代があると言えます。

例えば源田が取り入れている、「スプリットステップ」の採用。スプリットステップを取り入れることでサイドワークの強化に繋がり、より広範囲のボールに追いつける守備範囲の拡大とあらゆる打球に対応できる柔軟性の向上が期待できます。そのスプリットステップの採用に不可欠と言えるのが、股関節の柔らかさです。

スプリットステップは小さく飛んで両足に地面をつけるだけと思っている方が多くいます。もちろん間違いでは無いのですが、ドンと両足が地面に着いた状態のものを筋力だけで蹴ろうとすると、疲労感が増すだけで寧ろ悪影響です。

ここが先ほど言った京田に股関節の柔らかさがほしい!と言った点に繋がります。両足でドンと全部着地するのではなく、つま先で立ち、そこから次の動作に入りやすくするためのスプリットステップを採用するに当たって、股関節の柔軟性向上は必須課題です。

京田がスプリットステップを取り入れていないのは、まだその辺りの必要性の理解と下半身の柔軟性が足りないからなのでは、と考えています。スプリットステップを会得してサイドワークが強化されたとき、元々の身体能力が高い京田なら源田すら超えるショートストップに「進化」する可能性すらあるのではないでしょうか。毎年自分の弱点を的確に捉えてオフに取り組む頭の良さ、執念が窺える京田であれば、それほど遠くない未来かもしれません。


以上、京田と源田の守備における違いをワンドリさんに考察してもらいました。ロッテファンにも関わらず他球団の選手の守備まで普段からここまで細かく観察されているのか!とかなり驚きでしたが、とても分かりやすく私自身とても勉強になりました。今後はテレビや球場で観戦するときに、内野手の一挙手一投足にこれまで以上に注目したいと思います。

以上、ロバートさん feat.ワンドリさんでした。
ありがとうございました!

●後編記事は↓↓↓


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