苗字に必ず入っているモノ
何回か続くグループ研修の最初は、だいたい講師の先生を交えた自己紹介でスタートする。
私が入社当時に顧問だった統計学者の後藤秀夫先生が開催していた、統計ゼミのような研修での「自己紹介」は、20年ほど経った今でも記憶に残るほど印象的だった。
研修にはいろいろな人が集まるので、当然、自己紹介では様々な苗字が飛び交う。
参考として、日本人に多い苗字ベスト10はこんな感じになっている。
当然これら以外の苗字も出てくるが、いろいろな苗字の自己紹介がひと通り終わると、後藤先生はおもむろに話しはじめる。
「今回もみなさんの苗字には、自然や風景が入っていますね」
苗字に自然や風景が入っているとはどういうこと?、と私は思った。
そのまま後藤先生は続け、
<佐藤>さんには、「藤」が入っていますね。
<鈴木>さんには、「木」が入っています。
<高橋>さんには「橋」があり、<田中>さんには「田」があります。
と話しながら、ホワイトボードに花や木、田畑や橋を書き始める。
そして、ひと通り絵を書くと、
「わたしは、こうやってみなさんの名前にある自然や風景を思い浮かべながら名前を覚えていくんです。」
と締めくくる。
こんなに蘊蓄の効いた自己紹介タイムは、今までに経験したことはない。統計学者って面白いなぁと思ったし、後藤先生のファンになった。
ちなみに、ベスト10の中で「渡辺」には自然や風景が入っているのかという疑問が出てくるだろう。
これについて、後藤先生本人に聞いたわけではないが、「渡」の語源を調べると「水をわたす」という意味があり、苗字のルーツをたどると、水辺で船渡しをしていた人が名乗っていた苗字だそうだ。渡辺にも自然や風景が入っている。
きっと、後藤先生のことだとそのくらいは調べていたに違いないが。
私も研修の中で、苗字は「井出」ですと自己紹介した。
井出の中に自然?風景?と思ったが、後藤先生からは「君は井戸から出てきたということだね」と、すらすらとホワイトボードに井戸から出てくる奇妙な人間を書かれた。
名前の由来には、自然や風景が隠れているんだって。
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