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ヨルシカ 前世レポ

いつからだろうか。

もしかしてと思っていた。あの2人がまた。その思いはいつからか、ゆるやかに、そうなんじゃないかという期待へと変わっていった。そしてこの期待は、この日、確信へと変わった。

やはりそうだったんだ。



2023.02.08
ヨルシカ ライブツアー2023 前世
in 日本武道館  ライブレポート
(行った方なら分かるかも。そんな自己満レポです。悪しからず。)

──前世──


深い暗い海の水底から揺れる月光。
「僕は君に会いに行かなくちゃいけない。生まれ変わってでも、生まれ変わってでも!」

そう叫ぶ彼の声が鮮明に思い出された。もう4年も前のことらしい。

それから2年後だったか。水底に沈んで行った彼は、音楽を盗む別の男に生まれ変わっていたようだ。

我々が知るのは、これだけだった。いや、もっと前のあの透明人間はこれに該当するのだろうか。

彼は、鳥になり、虫になり、魚になり、木になり、花になり…何度もこの世に生を受けては、その姿を変えてきていた。

私は、すっかり彼を見る彼女の視点に立ち、彼女の思う気持ちを同じように私の中で思っていた。

そして、気が付かなかった。
当初、確信していたあの思いは、半分期待通りになりつつも、半分は大きく裏切られたのだ。

ぼんやりと、彼の声が頭の中で鳴るだけでいる。しかし、同時に心地が良く、安心もしていた。

あの犬は、彼女だった──

私は大きな勘違いをしていた。これもあの、春だと勘違いして狂い咲いた桜のようなものか。
生まれ変わるのは彼だけだと何故か思い込んでいた。

生まれ変わってでも、そう思っていたのはきっと彼だけではなかったんだろう。

春仕舞い。
終演後、何故か示し合わせたかのように毎回空には満月が浮かぶ。どれだけ昼間に天気が悪くとも、夜は必ず雲が開ける。
しかし、今日は満月ではないようだった。
スクリーンで見たのと同じ、少し左上が欠けた月が木々の隙間に見えた。

彼らにしては珍しくハッピーエンド的な終わり方をした。しかし、見方を変えれば、この物語は終わってしまったとも言える。

犬になり、ようやく彼の傍にいられる彼女は、もう、生まれ変わることなく、その魂を終えるのである。

負け犬にアンコールはいらない

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