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黒い雨訴訟の演劇『Pica』が6月に上演されます―東京

広島への原爆投下後に降った「黒い雨」。
これを浴びた人々の戦後の歩みと、彼らが訴えた「黒い雨訴訟」をテーマにした演劇『Pica』が2024年6月13~16日、東京の現代座会館で上演されることになりました。

私は、2022年に著したノンフィクション『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)の著者として、主に事実関係の助言などで関わらせていただいております。

今日、はじめてお稽古にお邪魔してきました。

脚本は何度も読んでいて当然ストーリーは把握しているのですが……
演者さんが声に出し、動き、目の前で「演劇」という形で改めて見ると、本当に感動して涙をこらえることができませんでした。

内容としては、ただ事実をなぞらえるだけでなく、それをもとにしながら人の心を揺さぶる物語性が加えられています。

拙著で紹介した経緯や私が実際に取材した方々のことば、それに加えて私をモデルとした「記者」も登場します。大切にしてきたことばを多数使ってくださっていて、「ああ、そういう風に黒い雨を捉えてくださったんだなあ」と発見がありましたし、黒い雨を巡る79年の歩みを受け取って下さったことがまず嬉しかったです。

そして、私が聞き取ってきたことばの数々を、生きたことばとして演者さんが心を乗せてくださること。

稽古の様子を見ながら、お世話になった黒い雨被爆者のみなさんのことを思い出し、「みなさんの思い、こんな風に届きましたよ。ちゃんと次の世代が受け取ってくれましたよ」って、お伝えしたくなりました。

被爆者援護のこともしっかり捉えています。原爆手帳について担当者が説明するシーン

もう一つは、私が生まれる前のできごとを、色鮮やかに描き、演じて下さっていること。

私の本では1945年8月6日から「黒い雨訴訟」が2021年7月に勝訴するまでを記しました。そこには当然、私が実際に目にしていなくて関係者からの聞き取りによって記述したお話が多数あります。

実際に演じて下さることでまるでタイムスリップしたみたいに、そのシーンを目の前に見ているかのように思えて……

あんまり書くとネタバレになるので控えますが、例えば従来の降雨域よりも広い範囲に雨が降ったことを「増田雨域」として1989年に示した気象学者の増田善信先生が調査を決意するシーン。とても感動的で、黒い雨被爆者の運命をかえたともいえる大切な場面なのですが、1985年のことなので私はその瞬間に立ち会っていません。

私ひとりが取材して頭の中に描いていたものが今回の演劇でかたちになったことに、本当に本当に感動しました。ただ書籍として事実を残せただけじゃなく、それが人に届いて、心をふるわせて、演劇という形でも広めて下さることが本当にありがたいと思ったんです。

事実ってこうやって残っていくんだなあ、広がっていくんだなあ、とも感じました。

今日のお稽古は、台詞の読み合わせをしながら立ち位置や動き方を確認し、これから具体的につくりあげていく段階だったのかなと思いました。その様子も見させていただき勉強になりました。

途中、演者の方々から質問を受ける時間があって、黒い雨訴訟の経緯や時々の雰囲気、登場人物のお人柄などについてお話しさせてもらいました。

ちゃんと事実を知って、その上で演じるんだという……そのプロ意識にも脱帽しましたし、誠実に向き合ってくださっていると感じます。

そしてタイトルの『Pica』にも深い、大切な意味が込められています。ただ、「ピカドン」の「ピカ」をローマ字表記にしたわけではないのです。
この答えは、ぜひ劇場でお確かめくださいね。

ということで関東圏のみなさん、ぜひ6月13~16日、複数講演ありますのでご都合着く時にぜひいらしてください。

以下の日程ではアフタートークショーも企画中です。
脚本演出の青木文太朗さんと演者さん、そして私で今回の物語についてお話しする予定です。こちらもぜひ。

15日(土)18時~
16日(日)12時~/17時~

予約と詳細はこちらから。

ところで、久しぶりに「増田雨域」の増田先生ともお会いしてきました。実際にお目にかかるのは2、3年ぶり?

昨年100歳になられましたが、お元気でした。人生の足取りを聞き取らせていただいているのですが、記憶は鮮明だし、喋る、喋る(笑)。
こちらの内容もまたみなさんにシェアできるよう準備中ですので、お楽しみに。

明日は長崎市立図書館で「長崎・広島リレーシンポジウム」です。会場でお目にかかりましょう。増田先生もリモートで発言されますよ。
26日の広島はオンライン配信しますので、こちらからお申し込みを

(おわり)

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