2023/06/20(火)のゾンビ論文 ゾンビ新聞とゴースト新聞

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」(メイン)

  2. 「zombie」(取りこぼしがないか確認する目的)

メインの検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグことキシラジンに関する論文を排除する

  • 「-viability」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。

それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」ゼロ件

  2. 「zombie」十件(差分十件)



検索キーワード「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」

こちらの検索条件に引っかかった論文はゼロ件だった。設定したキーワードがねらい通りに作用して、特定の論文が排除されたのかを次の節で確認する。



検索キーワード「zombie」

このキーワードでは「zombie」ゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。

ゾンビ新聞の台頭: ドイツの地方および地域の公共メディア エコシステムへの感染

原題:Rise of the Zombie Papers: Infecting Germany's Local and Regional Public Media Ecosystem
掲載:Media and Communication
著者:Karin Assmann
ジャンル:政治経済学

ゾンビ新聞と幽霊新聞が議論されている。

ゾンビ新聞の説明は以下の通り。

This day also marked the 10th anniversary of Germany’s first so‐called zombie paper, a paper stripped of journalists and resources but that continues to publish as if it were still alive and well.
(この日は、ドイツ初のいわゆるゾンビ新聞の創刊10周年でもありました。ゾンビ新聞とはジャーナリストも資源も剥ぎ取られたにもかかわらず、あたかもまだ生きているかのように発行を続けるものことです。

Rise of the Zombie Papers: Infecting Germany's Local and Regional Public Media Ecosystem
本文より

また、幽霊新聞は以下の通り。

A useful discursive device that was recently added to the concept of news deserts is the term “ghost papers,” defined by Abernathy (2018) as newspapers that have become “shells of their former selves” (p. 24).
(ニュース砂漠の概念に最近追加された便利な言説は、「ゴースト新聞」という用語です。アバナシー (2018) は、「以前の姿の抜け殻」になった新聞として定義しています (p. 24)。)

Rise of the Zombie Papers: Infecting Germany's Local and Regional Public Media Ecosystem
本文より

ゾンビ新聞はおおむねゾンビ企業と同じようなものと考えてよさそうだ。ゾンビ企業は経済活動が破綻しているにも関わらず公的資金で延命する会社のこと、一方でゾンビ新聞はジャーナリズムとして死んでいるのに刊行を続けている新聞のこと。

加えて、ゴースト新聞という用語まである。ドイツのメディアはずいぶん嫌われているようだ。しかもアブストラクトには次のようにある。

Germany’s public broadcasters, along with local newspapers, have consistently ranked among the top three most trusted news sources in Germany. Yet growing criticism of mandatory fees and recent revelations about public broadcasters’ misuse of funds have put into question the health of Germany’s news and information infrastructure.
(ドイツの公共放送は、地元の新聞とともに、ドイツで最も信頼できるニュースソースのトップ 3 に常にランクされています。しかし、義務的な料金に対する批判の高まりや公共放送局の資金の不正使用に関する最近の暴露により、ドイツのニュースと情報インフラの健全性が疑問視されている。)

Rise of the Zombie Papers: Infecting Germany's Local and Regional Public Media Ecosystem
アブストラクトより

国名さえ隠せばNHKに対する不満とも読める。どこの国でもそういうものがあるのだ。少々面白そうだ。

"Media firm"という文字列があったために排除された。ねらい通りの排除ではないし、ちょっと興味をひかれるが、ねらいの論文ではない。


ウォーキング・デッドの台頭: 世界中のゾンビ企業

原題:Rise of the Zombie Papers: Infecting Germany's Local and Regional Public Media Ecosystem
掲載:IMF Working Papers
著者:Bruno AlbuquerqueとRoshan Iyer
ジャンル:経済学

タイトルの通り、ゾンビ企業の論文。


モーダル不活性と事前のゾンビ論

原題:Rise of the Zombie Papers: Infecting Germany's Local and Regional Public Media Ecosystem
掲載:Res Philosophica
著者:Tristan Grøtvedt Haze
ジャンル:哲学

哲学的ゾンビについての論文。モーダル不活性とはいったい?


新型コロナウイルスの複雑な時代

原題:The Entangled Times of COVID
掲載:Temporalities in/of Crises in Anglophone Literaturesの第四章
著者:Rick Crownshaw
ジャンル:文学?

コロナウイルスと文学とを結びつけるためにゾンビ映画を持ち出したようだ。おそらく、「-philosophical」に引っ掛かったものと思われる。


質問する権利についての質問としてのエルフリーデ・イェリネクの「病棟」

原題:«Die Schutzbefohlenen» von Elfriede Jelinek als Frage nach dem Recht auf Fragen
掲載:Studia austriaca
著者:Martin A. Hainz
ジャンル:?

ドイツ語の論文だ。ドイツ語でもzombieはzombieらしい。ヒットしたため載せておくが、解説も何もできない。


タグ、コロナウイルスに感染したよ!」コロナフレームにおける追いかけっこゲーム

原題:'Tag, You've Got Coronavirus!' Chase Games in a Covid Frame
掲載:Play in a Covid Frame: Everyday Pandemic Creativity in a Time of Isolationの第一章
著者:Julia Bishop
ジャンル:社会学

コロナのロックダウン中に編み出された遊びを紹介する本らしい。本の紹介文を引用すると、多様な分野にまたがった調査内容であることがわかるため、ジャンルは社会学とした。

This singular chronicle of coronavirus play will be of interest to researchers and students of developmental psychology, childhood studies, education, playwork, sociology, anthropology and folklore, as well as to toy, museum, and landscape designers.
(発達心理学、児童学、教育学、プレイワーク、社会学、人類学、民俗学の研究者や学生、さらには玩具、博物館、景観デザイナーにとっても、この特異なコロナウイルス遊びの年代記は興味深いものとなるだろう。)

紹介文より

「追いかけっこゲーム」だからゾンビと逃げ惑う人間という形の鬼ごっこが紹介されているのだろうか。排除キーワードは消去法で「-gender」だろうか。


SARS-CoV-2感染に対する胎児の脳の脆弱性

原題:Fetal brain vulnerability to SARS-CoV-2 infection
掲載:Brain, Behavior, and Immunity
著者:Courtney L. McMahonを筆頭著者として七名
ジャンル:医学

ゾンビ試薬である"Zombie aqua"の文字列が見られる。しかし"viability"はない。キーワード設定を間違えているにもかかわらず排除はきちんとされている。なぜだ。


オートファジーは、マクロファージの病原体負荷に影響を与えることなく、結核菌感染時の初期の炎症誘発反応と好中球の動員を防止します

原題:Autophagy prevents early proinflammatory responses and neutrophil recruitment during Mycobacterium tuberculosis infection without affecting pathogen burden in macrophages
掲載:PLOS BIOLOGY
著者:Rachel L. Kinsellaを筆頭著者として八名
ジャンル:医学

こちらは"Zombie-violet"に"Zombie-NIR"。"… is viable (Zombie-)"という表現が見られるため、「-viability」の線はそれほど間違っていないと思う。しかし、ゾンビ試薬を作っている会社の"Biolegend"をキーワードにしてもよいかもしれない。


自己のない現象的意識: 自我の溶解とその哲学的方向性

原題:Phenomenal consciousness without a self: Ego dissolution and its philosophical bearings
掲載:UMEÅ UNIVERSITETに提出された修士論文
著者:Fabiana Caserta
ジャンル:哲学

"philosophical zombie"の文字列が見られる。哲学的ゾンビの論文。スウェーデン語で書かれている。ヨーロッパで哲学科の合同報告会でもあったのだろうか。


アニメ映画で口頭で表現されたユーモア要素の翻訳

原題:Translation of verbally expressed humour elements in animated films
掲載:Kaunas University of Technologyに提出された修士論文
著者:Birutė Beresnevičiūtė
ジャンル:英文学

どうやらタイトルそのままの内容らしい。要するに、「日本アニメが海外に輸出されるときにダジャレはどう翻訳されるの?」という問いへの回答らしい。本論文は英語→リトアニア語だが。

zombieの単語は2016年公開の『カンフーパンダ3』で出てくるジョークを紹介する際に使われている。


まとめ

「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」の条件にヒットした論文はなかった。

だがゾンビ新聞とアニメのジョーク翻訳には興味がある。

新聞に不満を抱く風潮はどこの国にでもあるのだとちょっと安心した。実際に不満が真実であるかは知らないが、たとえば日本だと右も左もNHKが誰々に乗っ取られていると文句を言っているイメージがある。つまり、本人たちにとっては真実なのではないかな?

ジョーク翻訳は論文P.81以降のAppendixにリストがある。興味がある方は読んでみるといいだろう。

今日はねらいのゾンビ論文なし。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?