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先生ありがとう

苦しんでいる彼女。真っ当に、向き合う先生。
先生は、彼女の3年間の深い支えだった。
……。


数年前……彼女は息が出来ない程、全てが苦しくて、彼女の心安らぐ場所なんて無かった。

彼女は自分が存在する価値も意味も分からなくて、何も楽しくなくて、心にぽっかり穴が空いてるみたいで、よく泣いていた。

死んでも忘れられないほど辛い事を2つも同時に体験したみたい。大切なものを失ったんだってさ。

明日には、彼女は世界から消えてしまうかもしれない。

広い世界から彼女1人が消えて、一体何人が心配するんだ。

きっと数人。


いや、彼女の喪失を嘆く人はいないかもしれない。




学校へ向かう彼女の足はいつも重かった。



「頭が痛い」「お腹が痛い」
…どうやら休むことを試みたらしい。

家を無理やり追い出された時は、街にひっそり隠れていたみたい。


大人は口だけ。「大変だね」「協力する」「困っていることはありますか」

困ってることなんて聞いてどうするんだろうね。
大人は、どうせ子ども同士の関係や、誰かの家族関係に干渉できない。

寄り添うなんて、所詮、綺麗事。

辛いことに共感される事なんて誰も求めてないから。
そんなのさ、何の助けにもなってないから。

貴方らが解決出来る問題じゃないよ。偽善者め。

だったら、彼女を本当に想うなら、心配するなら…
彼女を邪魔するものを、この世から消してあげて。

もう放っておいて。。。



ダメもとで彼女は先生に話した。

彼女を突き刺すものたち。彼女を苦しめる人。

先生はただ、ただ話を聞いた。悩みを抱える生徒ではなく、誰よりも彼女に向き合った。

どうしたら彼女が前向きになれるか。
彼女を苦しめるもの、そして彼女をみた。
誰よりもまっすぐ、誠実に彼女と向き合った。


先生は彼女が世界から消えることを止めて、

世界が彼女を抹消する事を止めた。

今を教えてくれた。未来を教えてくれた。


でもね、、……

彼女は気づけば、笑えなくなっていた。

彼女は心を殺して、笑うことを辞めていた。

彼女は、目に映る世の中の全てを疑うようになっていた。


先生は3年間ずっとずーっと、毎日まいにち、彼女が楽になる方法を考え続けてくれた。

彼女は3年間もお世話になった先生の元を離れて、高校へと進学した。


彼女は高校を楽しんだ。
環境の変化と先生が教えてくれた今が、彼女を変えたみたい。

彼女は生きる事を楽しんだ。
隠していた感情も、表に出せるようになった。


そして、よく笑うようになった。
今まで話せなかった事が伝えられるようになって、伝えられる人ができて、ここにいたいと思える場所が出来たみたい。

だから、時々、誰かの顔を見てるだけで感動しちゃうみたい。「こんな素敵な性格の人と、話せてるなんて…生きてて良かった」「こんなに素敵な人、もっと早く会いたかったな」って


彼女は、先生にもう一度会いたいと思った。でもね、迷惑ばかり掛けたことを後悔してて、罪悪感を感じて、先生には会いに行けなかった。

何度も挑戦したけど、先生への話しかけ方さえもわからなくなってきていた。

先生を見かけても、目を逸らしてしまった。

ごめんなさい。1年過ぎた。

彼女はもう1人の恩師に助けを求めた。
先生は迷惑だったなんて思ってないよって言って欲しかったんだと思う。


それから、1週間もう一度考え直して、彼女は先生に会いに行った。


勇気を出して先生の元に向かった彼女は、先生が生徒達に真っ直ぐな目で、笑っている姿を目にする。

紛れもなく、あの時と同じ瞳。先生だ。

先生がこちらを振り返る。

「先生…お久しぶりです。」

「元気だった??  newsみたよ!!頑張ってるね!」

涙がこぼれそうになった、でも心の奥でストップを掛けた。あの時、先生と笑いあった記憶なんて無くて、ずっと世界を睨みながら泣いていたから、今度は、先生と笑顔で話したい。

高校でした新しい挑戦について、本当は先生に会いに行くのが怖かったこと、たくさんたくさん話した。

時間はあっという間にすぎていった。でも、先生と初めて笑顔で喋れた気がして、凄く楽しかった。


最後に先生が一言。

「何百人見てきた中で、

1番応援してる研究だから。

ずっと応援しているから!」




すごく、すごく、嬉しかった。

先生に色んな面白い報告が

出来るように頑張ります。

私は、もう世界や運命に負けたりしません。

と、彼女は思ったみたい。

ただ、いまの彼女の心の中は、
"ありがとう"の気持ちでいっぱいなんだ



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