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これまでのUber、これからのUber(Uber rebrand 2018)

こんにちは、のっちです。

先日、Uberがリブランディングを行い、新しいロゴやタイポグラフィ、カラースキームなどがサイトにて披露されました。


「かっこいい!!」その一言で済ませても良かったのですが、Uberのようなユニコーン企業がリブランディングするということは、それなりの背景があり、それを体現したものとなっているはず。
今回は、近年のUberの動向やデザインの思想から、今回のリブランディングに至ったであろう経緯を含め、新しくなったUberを見ていきたいと思います。

野心的なリブランディングを実施した2016年

まず、これまでのUberを見ていきたいと思います。
Uberは2009年にその原型が生まれ、2010年代前半に一気に勢力を伸ばしました。
それを受け、「配車アプリから次のステージへ進む」ために、2016年、大きなリブランディングを行います。

(上が乗車ユーザー用、下が運転手用アプリです)
かつての大きな「U」の字が消え、「C」を反転させたような形状。背景には「バスルームのタイルから着想を得た」と言われているようにタイル状の曲線が敷き詰められています。

このリブランディングには大きな意味が込められていて、詳しくはこちらを見てもらえば理解できます。

UberCEOのカラニックは「ビットと原子」という言葉を中心にリブランディングを行いました。

ビットはコンピューターにとっての基であり、世界中の多くの産業を変えた。原子は全てのものを構成している。そしてUberはビット(テクノロジー)で交通手段を変えることで、原子としての人と人との繋がりを変えた。これまでビットと原子は別の世界に存在していたが、Uberはビットと原子の両方を使って、人々に喜ばれる産業を開発していく。

以上が概略のような形になるでしょうか(先ほどのロゴの中央の正方形は原子を意味しています)。

しかしこのリブランディングは結果としてあまり成功したとは言えませんでした。
原因は、あまりに先を見すぎたリブランディングとなり、多くの人が理解できなかったこと。
「アプリからUが消えちゃったんだけど、Uber消しちゃったんだっけ?」と戸惑う人が続出し、多くのメディアから叩かれることとなりました。

Uberへの信頼が失墜した2017年

2017年はUberにとって試練の年となります。CEOカラニックを中心とした問題が続出し、Uberの社会的イメージが大きくダウンしました。

女性差別・セクハラ問題
ウェイモ(Googleの自動運転部門)からの技術盗用
顧客データ漏洩(しかも公表せず)
CEOカラニックが自社のドライバーと料金トラブルで口論に
など...

もちろん社内も混乱し、優秀な人材が相次いで退職。信頼も人材も失ったUberはまさにボロボロの状態となり、カラニックはCEOを辞任します。

ブランドに必要なのは「コミュニケーション」「信頼」

新しくCEOとなったコスロシャヒは、信頼の回復に全力を注ぎます。社内からのヒアリングを元に2017年冬に文化規範を発表。そしてそこから9ヶ月をかけて今回のリブランディングにたどり着きます。

これまでのUberブランドには、前CEOカラニックの壮大なビジョンが詰まっていました。しかし同時に顧客とのコミュニケーションが取りづらいという問題を抱えており、2017年に失った信頼によって、より顧客と繋がれない状況ができてしまいました。

今回のリブランディングには、より信頼度を高め、顧客とのコミュニケーションをより綿密に取りたい、そんな想いが入っています。

ここから今回のリブランディングの紹介です。
以下の9セクションから構成されています。

1. Logo
2. Composition
3. Typography
4. Iconography
5. Color
6. Motion
7. Photography
8. Illustration
9. Tone of voice

1. Logo - どんな状況でも変わらず読みやすいロゴ

まずは新しくなったロゴについて。
先ほど紹介したアイコニックなロゴではなく、シンプルな「Uber」の文字を使ったロゴとなりました。

これまでの「Uの字はどこに行ったんだ問題」を解決し、アプリアイコンからアプリを探す場合も簡単に見つけられるようになりました。

また、海外のUberは特にですが、Uberのドライバーをしている車にはUberを使っていることを証明するためにステッカーなどを貼っておく必要があります。
これまでのロゴでは視認性が低い上に、よほどUberを使っている人でないとUberの車だ!と判別できない問題を抱えていました。これってロゴ知らないとわからないですよね。

今回はその問題を解決すべく、どんな状況でも、その車をUberだと認識できる明確さを持たせ、アプリのロゴも同じ形にすることで、よりブランドの統一感を高めることを目指しています。

2. Composition - Uの字を使った特徴的な配置

今回のリブランディングでのテーマのひとつは「Bring back the U(Uを取り戻す)」。前回のブランドで失われたUの印象を取り戻すため、クリエイティブの様々な配置にUの形状が使われています。

これにより、明快かつ単純に、でも印象的にUberのアイデンティティを伝えることを目標としています。

3. Typography - 身近になって読みやすい Uber Move

続いてはタイポグラフィ。これまでUberは、FF Clanを使用していました。
今回は、よりブランドを浸透させるために独自でタイポグラフィを開発。
ニューヨークやロンドンの地下鉄で使用されているフォントから着想を得ているとのこと。ブランドの目指す方向として、ユーザーにより身近に感じて欲しいというUberの意図が見て取れます。

そこから生まれたのが今回のタイポグラフィ、Uber Move

視認性がとても高い公共交通のタイポグラフィを参考にしつつ、車が走る道路を想起させるように、丸は楕円でなく真円に近く、直線は余分なものをつけない形状に仕上がっています。

よく見ると大文字のUだけ、小文字と同じように縦の直線が入っていますが、これも道路を彷彿とさせる一つの工夫なのでしょう。
見てるとだんだんハイウェイやジャンクションに見えてきませんか?(特にUとbの間に気を配ったそうです)

4. Iconography - テキストと垣根を持たないアイコン

続いてアイコンについて。
アイコンについても公共交通機関を参考にしています。世界中で使用されているサービスですから、アイコンも現地の移動で使われているものに順応させるのが良い方法といえるでしょう。

Uberのアプリにおいて、アイコンはテキストと同等の情報量を持っています。そのため、アイコンもタイポグラフィと同じように、視認性が高く、直線的な形状に仕上がっています。

これにより、テキストと並べても違和感なく、それでいて印象深いアイコンとなっています。

5. Color - 視認性と安全性を高めた色

先ほどのロゴの部分でも出てきましたが、Uberが高めているのは視認性。サービスのほとんどは黒背景に白文字という、もっとも認識しやすい色構成で作られています。

また、これまでも使用していたブルーについて。変わる前のUberのトップはこんな感じで、あれ、Uberってブルーっていうイメージじゃないけどキーカラーってブルーだっけ、、、みたいな印象を受けていました。

リブランディング後は「安全」を伝えたい部分に限定的に使用されるとのこと。ちなみに今日Uber使ったのですが、まだ日本版についてはそこまで大きく変更されておらず、これから変更されていくようです。

6. Motion - 移動の手軽さを印象付けるオリジナルなモーションシステムを構築 

モーションは、Uberにとって大きな意味を持ちます。アプリ内の動きが、そのままUberが作る移動手段を直接連想させるからです。
Uberはシンプルで、手軽に操作できるモーションを作り上げることによって、自社のサービスも簡単に使え、スムーズに移動することができることを印象付けることを目標としています。

今回、Uberはベースとなるモーションを作成し、それを元にモーションの法則を決め、システムを構築しています。
ベースとなる法則は4つの要素から成り、それを実際に生かしたモーションが公開されています。
この辺りはトレースしてマテリアルモーションと比べてみたいところです。

最後のモーションはユーザーのアクションによって変化するモーションなので、どのように使われるのかとても気になります。
(Uberはライドシェアに大きく乗り出していくと宣言しているので、自転車なのでしょうか)

これにより、Uberのアプリはよりオリジナリティの高いものとなり、移動の手軽さ、スムーズさを感じさせるものとなるでしょう。

7. Photography - 移動における感情の起伏を感じられる写真

Uberは写真の使い方もガイドラインの中に入れています。

ガイドラインの1文目に

Our photography inspires our audience of young and old, partners and customers, local and global.
我々の写真は、老若男女、パートナーや顧客、地域社会からグローバルまで全てのものに想像力を吹き込む。

と書いており、これまで差別的に扱ってきたものへの配慮が感じられます。

また、写真の種類に関しては

It builds on how it feels to move from motivation at point A to the emotional payoff of arriving at point B.
A地点での移動のきっかけからB地点のエモーショナルな支払いまでどのように感じるかを元に作成されている

と書いており、移動の中で生まれる「楽しさ」「手軽さ」などの感情の起伏を表現するような写真をベースに構成しています。

8. Illustration - タイポグラフィと親和性のあるシンプルな幾何学的イラスト

続いてイラストです。
イラストはUberのロゴやタイポグラフィから連想されて生まれており、シンプルな形、線、色から生まれた幾何学的なイラストとなっています。これにより、少ない色でも効率的で、理解しやすく想像を掻き立てるような効果を産むことを目的としています。

イラストは直線と円のような幾何学的な形をベースとして構成されており、白を基本的な背景とすることでより強調されたイラストを生み出そうとしています。

9. Tone of voice - ユーザーに寄り添った雰囲気をつくる

最後にトンマナ、語り口調についてです。
Uberは自らのマインドセットを「世界のあるべき姿を見てそれを実現するために働く」とし、それをユーザーと共有することに焦点を当てています。

そのために「ユーザー優先のコミュニケーション」「まっすぐでわかりやすく」「一貫性を持って理解しやすく」を掲げ、これまで十分に取れていなかったユーザーとのコミュニケーションを活性化し、互いをより理解し合う関係となることを目指しています。

信頼を取り戻し、あるべき未来を一緒に目指すためのリブランディング

以上が、今回のUberのリブランディングの全体でした。

Uberがこれまでもこれからもイノベーターであることは間違いなく、先日も空飛ぶタクシー「Uber Air」の発表をしています。

しかしこれまではビジョンが大きく先行し、そこにユーザーがついていけず、「誰のためのUber?」のような状態となっていました。

CEOが交代し、社内が一新され、これからは、ユーザーとしっかりと対話して現実を直視し、信頼を取り戻し、あるべき未来を目指して一緒に進んでいこうとするUberの姿が感じられます。今回のリブランディングは、その決意の表れだったのかと思います。

これから半年程度をかけて、アプリを含めた様々なアップデートが控えているUber。これからの活躍が楽しみです。

それでは、またよろしくお願いします。

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