【ボーイ戦術書】No.30 「ボーイ的確定申告マニュアル Vol.3 経費の話-前編-」

「自営業ってなんでも経費で落ちるんだろ?」
……それは大きな勘違い。

 確定申告マニュアルVol.3は経費の話。会社勤めの人間が言う「経費で落ちる」とは会社が全額負担してくれる事を指すが、自営業における「経費で落ちる」は「経費にできる」程度のもので負担するのは自分だ。

 経費が増えた分所得が少ない扱いになるので、節税にはなるもののせいぜい数割。全額戻ってくるような美味しい話ではない。自営業の人に冒頭のような言葉を投げかけるのは本気でやめようね!

 ……個人的な愚痴はさておき、今回は何が経費に計上できる(できそう)か、どう入力するのかなどを解説。ここが一番の腕の見せ所であり、ここを楽しめるようになると確定申告が大好きになるはず。

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 やよいの青色申告の場合、「支出」タブから入力できる。

基本ルール

 発生主義による記帳が原則。そして支払い方法(取引手段)は適切なものを選択しなければならない。

 現金の場合は2種類。

現金:事業用のお金
現金(個人用):プライベートのお金

 財布を物理的に分けなくても良いが、事業用とプライベート資金の区別はつくようにしておかないと後々ズレた時に困る。現金(個人用)は正式には別の名称だが、やよい青色申告では分かりやすくそう表記してくれている。保存義務のある帳簿上ではちゃんとそちらで出力されるのでご心配なく。


 クレジットカード払いの場合は判別が少し面倒。事業用として会計ソフトに登録している口座から引き落とされるかどうかで扱いが変わる。

引き落とされる場合
買った日に
取引手段:クレジットカード
で入力後、引き落とし日に回収取引入力

引き落とされない場合
取引手段:クレジットカード(個人用)か事業主借
で入力して終了

 クレジットカード(個人用)は現金(個人用)と同様、事業主借で自動処理される。事業用として登録した口座から引き落とされるようであれば2回の入力が必要になるので面倒ではあるが、クレジットカードがそういう仕組みなのだから仕方ない。


 Suica等のプリペイドカードを使用している場合、管理が可能なら現金(事業用)にまとめるか、Suica内は現金(個人用)として扱うと楽ではある。やよい青色申告はプリペイドカード項目を自分で作成することができるため、事業用資金にまとめたり、Suica払いで事業用の買い物を頻繁に行うならやっておいた方がいい。

 「設定メニュー」→「口座・カードの設定」→「電子マネー・現金」から追加できる。


 ただしSuica項目を活用する場合はチャージの度に振替入力が必要になるので注意。正直面倒くさい。

振替入力で
現金(事業/個人)→Suicaの場合
振替元:現金(事業/個人)
振替先:Suica

※オートチャージの場合口座直接引き落とし、クレジットなどで変わってくるため割愛

 ちゃんと管理できる人なら問題ないが、無理なら事業用の口座(開業届を出しておけば作れる)や事業用のクレジットカードや電子マネーを用意しておいたほうが色々と楽。

 支払い方法別の記帳方法さえ理解しておけば、何が経費に出来るか楽しく考えられる段階に入れる。ここは頑張って理解しよう。

 

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 ここからは何が経費になるかの話。ボーイ業において問題なく計上できそうなもののみ扱う。

交通費

 正式名称は「旅客交通費」である。ボーイ業の場合、自宅や職場から店への移動費、出張指名時の交通費など事業に関わる交通費を経費として計上できる。実際の入力はこちら。

科目:旅客交通費
取引手段:自分が使ったものに合わせて
摘要・取引先:必要があれば記入

 摘要は店への通勤で乗車しないエリアに行くときだけ……出張指名時の移動経路を書いておくと後でチェックしやすいのでオススメ。

 店への通勤に定期を使っている場合は基本的に購入したタイミングで全額入力。当たり前だが昼に勤めている会社の定期圏内の場合は計上できないので注意。事業用と言い張るのはかなり難しいし、何より昼職の会社が費用を負担しているからだ。突っ込まれた時に上手く返せる自信があるならやってみては。


消耗品費

 文字通り、事業で使う消耗品の費用を計上できる。ボーイ業ならコンドームやローション、リステリン、勃起薬、マッサージオイル、タイマー、指名記録用のノートや筆記用具などが間違いなく該当する。当たり前だが自腹で用意した場合のみ経費計上可能。

 微妙なラインなのは化粧品類。ルックスで勝負する商売なので問題ないとは思うのだが……。自分で経費項目「ルックス関連費」でも作ってまとめたほうが良いかもしれない。こちらについては後編で。

 消耗品費に10万円までのカメラやパソコン代を計上する事もできるのだが、ボーイ業ではかなり難しい。全額計上は写真屋やパソコン仕事でもない限り難しく、後述する「按分」が必要。それでも1~2割くらいでは?常にデジカメで写真を撮っては投稿するインフルエンサー業なら8割くらいは行けるかもしれないが……。

 入力は以下の通り。

科目:消耗品費
取引手段:自分が使ったものに合わせて
摘要:何を買ったか書いておくと良い
取引先:必要があれば

Tips:按分とは

 按分とは、プライベートと事業で兼用しているもの・事に使った経費を、事業で使った分だけ計上すること。やり方はやよいのヘルプからどうぞ

 按分の割合についてはこちらを参照。あくまで合理的な割合しか計上できないので要注意。先程のデジカメの例だとよほど使っていないと厳しい。

 通信費などは上記のように割合を一括で設定すれば良いと思うが、消耗品などモノによって使用割合が変わるものは最初から按分した額を入力した方が良いと思われる。

例:30000円の経費で事業割合1割
科目:○○費
取引手段:自分が使った方法
摘要:何に使ったか、元値と按分割合を記載するとよい
金額:3000円



接待交際費

 正式には交際費(国税庁公式より)。ゴチャゴチャと書いてあるが、ボーイ業で計上できるのはお客さんへのプレゼントくらいだろう。

入力例
常連さんからの誕生日プレゼントのお返し
科目:接待交際費
取引手段:自分が使ったものに合わせて
摘要:得意先への贈答品
取引先:必要があれば、買った店を入力

 ボーイ側がお金を出して接待するという事がまずないため、他の用途で接待交際費を計上するのは難しい。ボーイが立場上個人事業主であるため、店のオーナーと飲み会で割り勘、お客さんの店に自腹で飲みに行く、などであれば出来ない事はないかもしれない。もし飲食で接待交際費を計上する際はレシートor領収書の他に「誰と」をなのかを摘要にしっかり記載するように。それなりに事業と関わりのある人物との接待であることがポイント。


通信費

 月々の携帯料金、インターネット料金などが該当。「携帯代行けるの!?最高じゃん!」と思うかもしれないが当然全額計上はほぼ不可能。ボーイの仕事用でしか使っていない携帯があるなら全額計上可能だが、基本的には先程述べた「按分」が必須。

 「いつでも予約や出張に対応できるようにしているので全額です!」は無理。スマホはどう考えてもプライベート使用の割合が相当高い。

 通信費で言われる通信らしい通信をしているのは指名の連絡を受ける時と、出張指名の時くらいだろう。正直なところ毎日12時間出ていても2割出せるかどうかではないかと思う。


個人事業税の支払い

 経費計上できる税金とできない税金があるのだが、ボーイ業で経費計上できるのは「個人事業税」くらい。詳細は下記リンクを参照。

 前年の事業「所得(収入から経費を引いた額)」が290万円以上の場合、オーバー部分に対して発生する税。これが発生するくらいになると一人前のボーイと言えるかもしれない。ボーイ業は基本的に大して経費がないので収入300万くらいから個人事業税発生ラインに乗ってくる。ただしちゃんと経費テクニックを身につけていれば発生ラインを引き上げることが可能。

 業種によって税率は異なり、法定業種以外では非課税との事だが、ボーイ業が何に相当すると判定されているのかは不明(法定されていたらそれはそれで驚くが)。対象外業種なのかもしれない。ほとんどの業種が5%のため、5%で見積もっておけば万が一のときも安心。

 肝心の税額も、ラインを超えたらいきなり何十万円徴税というものではないのでそんなに身構える必要は無い。

例:事業所得300万円で5%業種の場合
(300万円-控除額290万円)×0.05=5000円

 290万円をオーバーした部分にだけ課税なので、ボーダー調整に躍起になるほどのものではない。また、残念ながら個人事業税に対しては青色申告特別控除が効かないため、ボーイ業の場合は事業収入350万円くらいで限界だろう。後編で述べるルックス関連の経費が多い人は400万円くらいまで行けるかもしれないが、使っていないのなら

 

 発生した場合は自治体から通知が送られてくる。記載金額を納付したら上記サイトの通り「租税公課」という科目で入力。

入力例
科目:租税公課
取引手段:自分が使ったものに合わせて
摘要:個人事業税

 その他、ボーイ業で経費にしたいような税金等は経費計上不可。事業用資金で払ったなら記帳は必要だが、経費にはできない。健康保険料や年金等は確定申告の方で控除対象なので我慢しよう。詳細は下記リンク参照。

 租税公課にできない諸々を払った場合の入力は、個人事業税の例の勘定科目を「事業主貸」に変え、摘要も○○税、保険料などにするだけだ。

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 長くなるため、経費編前編はここまで。後編はルックス商売らしい経費計上が登場。ぜひお楽しみに。


市場調査とかやってみたいですね。